第8話 デート(1)
デートの約束をしてから数日、ついにデートの日がやってきてしまった。
「これ、おかしくない?」
レオン様との約束の時間を前に、アリアが用意してくれた服に着替えてたずねる。
着る前に確認したときは素敵な服だと思ったはずなのに、いざ自分で着てみると似合っていないのではないかと不安になってしまう。
「よくお似合いですよ」
「本当に?」
「もちろんです。
旦那様と並べば、素敵なカップルだと視線を集めること間違いなしです」
……さすがにそれはほめ過ぎだと思うけど。
まあ、お世辞とはいえ、それくらいのことが言える程度には見られる格好になっているということかな?
であれば、アリアの見立てを信じて覚悟を決めよう。
そう思ったタイミングで、狙いすましたかのように屋敷の使用人がやってきた。
「旦那様がお迎えにこられました。
奥様もご準備をお願いいたします」
その言葉に従い、最後にもう一度だけ服装を確認してから玄関へと向かった。
「やあ、今日も変わらず素敵だね。
今日のデートが楽しみだよ」
そんな言葉とともに出迎えられ、レオン様から差し出された手を取って馬車までエスコートしてもらう。
レオン様のいつもよりもラフな服装やその距離の近さにドキドキしたりしつつ、馬車までの短い距離を歩いていく。
そうして馬車の中へと案内され、レオン様と向かい合わせに座る形で落ち着いたところで、馬車が出発した。
「そういえば、今日行くことになる庭園のことは聞いているのかな?」
馬車が出てからほどなく、何となく落ち着かない気持ちで視線を窓の外に向けていると、レオン様から声をかけられる。
「いえ、そういえば、詳しいことは聞いていませんね。
王家の庭園ということで、漠然と素晴らしいものや珍しいものがあるのだと思っていましたが」
「なるほど。
いや、事前に話を聞いていて、何か見たいものがあればそこを優先しようかと思っていたのだけれどね。
そういうことなら、今日のところはこちらで手配した案内に任せるということでいいかな?」
「それで構いません。
ちなみに、レオン様はあまりその庭園には行かれたことがないのですか?」
「いや、何度か行ったことはあるよ。
ただ、さすがに何度か行ったことがある程度だと案内まではできなくてね。
それに、季節によって色々と変わったりもするから、庭園をしっかりと楽しむのであれば案内する人間がいた方がいいんだよ」
あー、確かに庭園だと季節ごとに色々と変わったりしそうではあるね。
そうなると、庭園に詳しい人に案内を頼んだ方が色々と楽しめたりするのか。
「まあ、案内をつけるのは午前中だけで、午後からはのんびりと二人で散策できればと思っているけれどね。
一応、庭園内を解説付きで楽しみたいというのであれば、午後からも案内を頼むけれど、どうかな?」
「へっ?
あっ、いえ、それで構いません」
何となく、解説付きで案内してもらうならあまりデートっぽくなくて気楽にいけるかもと油断していたら、ちゃんとデートっぽいことも考えていたみたいだ。
油断していたせいで、つい変な反応を返してしまったよ。
とはいえ、二人といいつつ、侍女や護衛たちがついているから完全に二人きりというわけでもないのだけど。
というより、今ですら、私の隣にはアリアが控えているし。
まあ、レオン様みたいな生粋のお貴族様なら、侍女や護衛たちのことは完全に意識せずにいられるのだろうけどね。
「そう言ってもらえてよかったよ。
僕が気に入っている場所もあるから、午後にはそこも案内しようと思っていたからね」
「お気に入りの場所ですか?
レオン様のお気に入りというと、なんだかすごそうです」
「ハハハ、別にすごい何かがあるわけではないよ。
単に、初めて見たときに、その光景が当時の僕の心に刺さってお気に入りの場所になったというだけだから」
「……それだと、とても大切な場所なのではないですか?」
「あー、確かに当時は色々と悩んでいて、それを吹っ切るきっかけになった場所ではあるね。
とはいえ、今となってはただの思い出深い綺麗な光景が見れる場所というだけだから、気にしなくても大丈夫だよ」
「はぁ」
まあ、レオン様がそう言うのであれば、悩んでいたという色々は本当に過去のことになったということかな?
であれば、本当に私が気にするようなことではないのかもしれない。
「そんなことより、今日は君の手料理を食べられるということを聞いて楽しみにしていたんだよ」
「えっ!?」
「おや、アリアからそういう風に聞いていたのだけれど、違ったのかな?」
「い、いえ、違いません。
ただ、手料理というか、お菓子を作ってきただけですが」
いや、何故その話をレオン様が知っているのか。
そう思って、隣に座るアリアへと視線を向けるけど、何も知りませんという感じで目を閉じた状態でスルーされる。
そうして、期待なのか、からかいなのかわからない感じでレオン様と私の料理について話しながら残りの道中を過ごすことになった。




