第6話 デートの約束
「と、ところで、お仕事の方は大丈夫なのですか?
お時間を取っていただきましたが」
からかわれているような状況を脱するために話題を変えてみる。
趣味を見つけたいという相談への結論は出ていないけど、ひとまずは態勢を立て直すべきだ。
「うん?
ああ、そうだね。
とりあえず、公爵家を継ぐための書類関係は片付いたよ。
だから、これからは忙しさも落ち着くことになるだろうね。
公爵家のことは、叔父たちが適当に差配することになるだろうから」
「……」
いや、サラッと闇を出すのもやめてほしいのですが。
というか、公爵家を継いだのはレオン様なのに、家のことは他の人がやるのか……。
「えーっと、ではレオン様は明日からどうなさるのですか?」
「そうだね。
一応、僕のサインが必要な書類が完全になくなることはないから、少しは書類仕事をする必要があるかな。
ただ、それ以外の時間については自由になるだろうから、後はこれまで進めていた研究に戻ろうと考えているよ。
ああでも、君とデートに出かけるというのもいいかもしれないね。
さすがに王都から離れるというのは難しいけれど、逆に王都内であれば少しは案内することができると思うよ?」
「デ、デートですか?」
「そう。
君にはこれまで散々苦労をかけることになったからね。
ドレスでも宝石でも好きなものをプレゼントするよ。
お飾りの当主とはいえ、それくらいのことはできるから」
……デート=お買い物なのか。
いや、貴族のご令嬢だとそういうものなのかな?
ただ、レオン様がサラッと口にしたドレスや宝石というのは怖い。
どう考えても、私がこれまでに見てきたようなドレスや宝石ではなく、この前の結婚式で身に着けたようなレベルのものが出てきそうだし。
まあ、実際には結婚式のときよりもランクを落としたものになるとは思うけど、私の感覚からするとどちらも大差ないレベルだろうからね。
どちらにせよ、そんなものを贈られた日には私の心臓が持たない気がする。
とはいえ、王都の案内という部分には惹かれるものがなくはないけどね。
縁談が決まった直後から王都に滞在していたというのに、これまで王都の観光はおろか、簡単なお出かけすらできていないのだから。
「プレゼントはともかく、王都を案内していただくというのは少し興味がありますね。
思えば、縁談が決まった直後から王都にいたのに、ずっと屋敷内で過ごすことになっていましたから」
「うん、だからデートとして王都を色々と案内できたらと思ったんだよ。
ただ、僕としても女性を相手に案内できるほど王都に詳しくないからね。
いくつかのお店を回ってお買い物というくらいしか思いつかなかったんだよ。
でも、王都を見て回れていないのであれば、王城や聖堂の見学なども悪くないのかもしれないね」
王城はともかく、聖堂はちょっとね。
結婚式を挙げたのは一般に開放されている場所ではなかったみたいだけど、まだこのタイミングだと色々と余計なことを思い出してしまいそうだし。
そうなると純粋な気持ちで観光ができない気がするし、できればもう少し時間を置いてからにしたい。
「……聖堂はまだちょっと行きたくないですね。
とはいえ、王都の観光となると、やはりその二つが人気なのですか?」
「そうだね。
王城は外から眺めるくらいしかできないけれど、人気どころとしてはこの二つだと思うよ。
後は劇場や王家が解放している庭園などもあるけれど、こちらはどちらかというと王都に住む人たち向けという感じだね」
「劇場はハードルが高いですが、庭園は少し興味がありますね。
王家の庭園ともなると、何というか凄そうです」
「一応、この屋敷にも庭園はあるけれど、さすがに規模が違うからね。
興味があるなら、一度見に行ってみるだけの価値はあると思うよ」
レオン様がそう言うのであれば、本当に素晴らしい庭園なんだろうね。
というか、この屋敷に庭園があるということを知らなかったのだけど……。
いくら離れの屋敷に隔離されているとはいえ、さすがに周囲のことを知らなさすぎる気がする。
いやまあ、それだけ余裕がなかったのだとは思うけど。
「じゃあ、今度のデートは庭園に出かけることにしようか。
お買い物や劇場に行くのはその次の機会ということにして。
ああ、劇場については、気軽にみられるような演目を探しておくからね」
「えっ」
「僕も庭園に出かけるのは久しぶりだし、きちんと案内できるように調べておくよ」
「ええっ」
そんな風に、気づけばレオン様とのデートが決まっていた。
一瞬、断ろうかという考えも浮かんだけど、さすがに失礼過ぎるので思いとどまった。
それに、デートとして一緒に行動することになれば、レオン様が私との関係をどうしたいのかという本当の気持ちもわかるかもしれないしね。




