第5話 相談
向かえた面会の日、レオン様に会うために母屋へと移動する。
正直、結婚した相手に対して面会を求めるというのも不思議な話だけどね。
「やあ、待たせてしまったようで申し訳ないね」
昼食の席に先について待っていると、遅れてやってきたレオン様からそんな風に声を掛けられる。
何日か会っていなかったけど、見た目としては特に変わりがないようだ。
忙しいとはいえ、さすがに外見に疲労感がにじみ出るようなバカげた忙しさではないらしい。
「いえ、こちらこそお忙しい中、お時間を取ってもらってありがとうございます」
「ハハハ、もう夫婦になったのだから、そのような遠慮はいらないよ。
まあ、家の人間の管理もできずに離れに隔離されてしまっている以上、何を言っても説得力がないかもしれないけれどね」
うーん、反応に困る言葉だなぁ。
一応、レオン様は公爵家の当主の座に固執する気はなさそうではあるけど。
まあ、無難に流しておくか。
「……それで、実はレオン様に相談したいことがありまして。
今日は、その相談に乗ってもらえないかと思っているのです」
「うん、その話はちゃんと聞いているよ。
とりあえず、料理も来たみたいだし、食べながら話そうか」
「――趣味を見つけたい、か。
僕も男だから、あまり女性の趣味に関しては詳しくないけれど、一般的に知られている、刺繍だったりガーデニングだったりというのはどうかな?
これなら、あの離れでも問題なくできると思うけれど」
「そうですね、正直、刺繍に関しては実家にいたころの針仕事を思い出しますし、ガーデニングについても畑仕事を思い出しそうで……。
他に何かありませんか?
お飾りの公爵夫人としても体裁が良く、かつ離縁後にも生かせそうなものだとより良いのですが」
「……」
うーん、レオン様が黙り込んでしまった。
そんな都合の良い趣味はないのかな?
「プリムラ様、さすがに面と向かって離縁後の話をするのはどうかと思います」
「えっ!?
でも、そういう話だったんじゃないの?
だったら、手に職をつけるような趣味を見つけて、実家に戻ってからも役立てられるようなものが良かったんだけど」
アリアのツッコミに対し、そんな風に返すとレオン様が苦笑を返してくる。
「いやまあ、君が離縁を望むのであれば、僕としては無理に引き留めるつもりはないよ。
ただ、確かに今回の結婚は政略結婚という形だったとはいえ、結婚した以上は夫婦としていい関係を築ければと考えていたからね。
まあ、そうやっていい関係を築けたとしても、僕が子爵家として別の家を建てた後でなければ子供を作ったりということはできないだろうから、やはり君としては気が進まないかもしれないけれど」
「ふぇっ」
困ったような顔で子供を作るだなどと言われてしまい、つい変な声を出してしまう。
いや、夫婦としていい関係を築いていくのであれば、当然そういうことにもなるとは思うけど、不意打ちのような形だったので変に意識してしまった。
何というか、この旦那様は、もう少し自分の容姿が相手に与える影響というものを考えるべきではないだろうか。
「んんっ、すみません。
というか、色々なことが片付いたら、お役御免ということで実家の男爵家に返品されるのではなかったのですか?」
「いやいやいや、そんな返品だなんて、人を物のように扱うような真似はしないよ。
それに、仮にも年頃のお嬢様をめとることになる以上、最低限、寄り添う努力をして最後まで添い遂げようとする覚悟は持っていたよ?」
「えぇ……」
あれー? 聞いていた話と違うんですけど……。
そう思って、後ろに控えるアリアに助けを求めるけど、しれっと目を閉じたまま無視されてしまう。
くっ、この状況を自力で乗り越えろというのかっ。
「一応、学園にいたときはそれなりに容姿をもてはやされたりしていたから、少しは自信があったのだけれどね。
どうやら、君のお眼鏡にはかなわなかったみたいだけれど」
そんなことを言って、旦那様が悲し気に目を伏せる。
いや、普通にお眼鏡にはかなっていますが。
というか、なぜか私がレオン様を捨てるみたいな話になっているけど、むしろ私が捨てられる側では?
「いえ、レオン様はとても素敵な方だと思いますよ。
ただ、ちょっと、事前に聞いていた話と違いすぎていたので混乱してしまいまして……」
「そうなのかい?
なら、良かったよ」
いや、だからその笑顔はやめてっ。
そんな顔を向けられると、変に意識してしまって私にダメージが入るからっ。
というより、さっきのセリフからして、絶対に自分の容姿のことを理解した上でわざとやっているよねっ!?




