第21話 魔道具作り(3)
「これで魔力隠蔽の魔道具を作るやり方は全て見せたけれど、どうだった?
少しは魔道具作りにも興味が出たかな?」
レオン様が作り終えた魔道具を作業台の上に戻し、こちらに感想を聞いてくる。
どうだった、か。
正直、レオン様の手際が良すぎて、魔道具作りというものをしっかりと理解できたとは思えない。
ただ作業を眺め、言われるままに効果の確認をしていたら魔道具が完成していたという感じだから。
とはいえ、小難しい意見を求められているわけではないだろうし、ここは素直な感想を伝えればいいのかな。
「ミスリルが自在に形を変えていくところや、魔石を溶かしたりというところが、見ていてとても興味深かったです。
ああいった作業は、錬金台を使うことで誰でもできるようになるのですか?」
「練習は必要になるけれど、ある程度の魔力操作ができる人なら誰でもできるようになるね。
そうだね、せっかくだから少し体験してみるといいよ」
「えっ?」
レオン様の言葉に、思わず間の抜けた声を出してしまう。
けれど、レオン様はこちらの様子を気にすることなく笑顔で私の手を引き、横にズレるような形で私を錬金台の前に立たせた。
「さっき使わなかったミスリルが少し残っているから、それで試してみるといいよ。
錬金台の右の側面にある魔石に触れて魔力を流すと、君の魔力で扱えるようになるから」
イマイチ反応しきれずにいると、今度はレオン様から端によけていたミスリルの塊を手渡される。
何というか、押しが強い。
もしかして、魔道具作りというか、錬金術を教えるということに目覚めたりしたんだろうか。
そんなことを思い、アリアに視線を向けるものの、諦めてくださいとでも言うように首を振られてしまう。
いやまあ、別にイヤというわけではないし、構わないのだけどね。
「えっと、これでいいですか」
「うん、それでいいよ。
後は、ミスリルに魔力を流しながら成形していけばいいから」
錬金台の魔石に魔力を流し、見学時と同じように表面の魔法陣が光ったのを見てレオン様に確認する。
とりあえず問題ないみたいだし、せっかくなのでさっそく試してみよう。
「あれ?」
と思ったものの、ミスリルに魔力を流しても上手く加工ができない。
全く加工できないわけではないけど、思い通りに形を整えることができていない。
「それだとミスリルに流している魔力が少ないね。
ミスリル全体に魔力を行き渡らせないと上手く加工はできないよ」
「……思ったよりも難しいですね」
アドバイス通り、ミスリル全体に魔力を行き渡らせようとするものの、魔力の流し方にムラがあるのか上手く全体に行き渡らない。
レオン様はそこまで多くの魔力を使っていたわけではなかったので、全体に薄く魔力を行き渡らせるだけでいいはずなのに。
そう思いつつ、徐々にミスリルに流す魔力を増やしながら、どうにかならないものかと試行錯誤を続けていく。
「……」
最終的に大量の魔力を流すことで無理やり加工した結果、レオン様が作った物とは比べ物にならないくらい不格好なミスリルのプレートが出来上がってしまった。
「いや、初めてにしては上出来だと思うよ?
素材に魔力を流すのはコツがあるから、そのコツをつかむまでは上手く加工できなくても仕方ないから。
むしろ、初めてでここまで形にできているのだから、これから練習していけばすぐに上手く加工できるようになるよ」
私が成形したプレートを手に、レオン様がそうやって励ましてくれる。
けれど、作業台の上に置かれたままになっているレオン様が作った魔道具と比べると、どうしても自分で作ったものの不格好さが目についてしまう。
いやまあ、レオン様が言うように初めてだから仕方ないというのはわかっているけどね。
ただ、最近はレオン様の魔力問題の治療が順調だったこともあって、それなりに魔力操作に自信を持ち始めていたから地味にショックが大きい。
「うーん、気になるならもう少し試してみるかい?
いつもより、少し遅くなってしまうかもしれないけれど、素材ならいくらでもあるから」
「あっ、いえ、大丈夫です。
思っていたよりも、そんなに魔力操作が上手くなかったんだなと勝手にへこんでいただけですので」
「さっきの加工に関してだと、魔力操作よりも慣れの方が大きいと思うからそこまで気にすることはないと思うけれどね。
まあ、興味を持ってくれたなら、これからゆっくりと慣れていけばいいと思うよ」
そんな言葉とともに手渡されたプレートを受け取る。
うん、改めてレオン様が作ったものと見比べてみても、加工の精度というか、仕上がりの差は歴然だね。
自分でやったからこそよくわかるけど、ここまできれいなプレート状に加工できるレオン様の技術はかなりのものな気がする。
「というか、思っていた以上にシンプルなデザインなんですね」
そういえば完成したものを見ていなかったなと思い、改めてじっくり確認してみたところでそんな感想が口をつく。
手許で確認してみると、思っていた以上に最後に刻んだ魔法陣が目立たない。
いくらミスリル製で高級感があるとはいえ、レオン様ならもっと飾り気のあるデザインの方が似合いそうなものなのに。
「あくまでも、普段使いを想定しているからね。
変に派手なデザインのものにするよりも、これくらいシンプルなものの方が使いやすいんだよ。
そもそも、外から見えないように身に着けることになると思うしね」
「あー、そう言われればそうですね。
つい、アクセサリーのイメージで考えていましたが」
なんとなく、自分がこれまでに身に着けさせられたようなネックレスのイメージで口にしたけど、確かに、この魔道具の用途だと特に見せる必要はなさそうだね。
そうやって納得していると、不意にアリアが口を挟んでくる。
「では、せっかくですので、お二人でご自身がデザインされたものをプレゼントし合うというのはいかがですか?」
いや、何がせっかくなのか。
そう思っていたのに、何故かその発言にレオン様が乗っかっていく。
「それはいいね。
どんな素敵なデザインのものをプレゼントしてくれるのか、楽しみだよ」
「えぇ……。
いや、さっきも見てもらった通り、まともに加工すらできないのですが」
「大丈夫、君なら練習すればすぐに上達するよ。
それに、こういうときは何か目標となるものがあった方がより上達しやすいからね」
「あー、まあ、そういうことでしたら」
「ふふ、僕も君に似合うようなものを頑張って用意するからね」
「えっ!?
いや、レオン様はそこまで頑張っていただかなくても……」
そうやって抗議しようとしたものの、レオン様は笑顔でこちらの言葉を聞き流すだけだった。
いや、これまでにプレゼントされたものを思うと、すごく怖いのですが。
そんな不安を抱きつつ、結局、お互いにプレゼントするものを作ることを目標にする形で話がまとまってしまった。




