第17話 ポーション作り(4)
「あー、すまないね」
しばらく呆けていたレオン様が我に返り、気まずそうに口を開いた。
その珍しい様子に、アリアと二人して視線を交わし、微笑みを返しておく。
「それで、どうしましょうか?
ひとまず、レオン様の魔力の証明はできたと思いますが」
「そうだね。
まずは先ほどまでの態度を謝罪するよ。
つい、魔力のことになると神経質になってしまってね。
すまなかった」
「あっ、いえ、私の方こそ不用意に踏み込んでしまったみたいで」
「いや、君が謝る必要はないよ。
元はといえば、僕がきちんとそのあたりのことを話していなかったことが原因なのだから」
うーん、今回の件については、事前に話してどうこうというものでもないと思うけどね。
実際、私もレオン様が“魔力なし”として色々と苦労してきただろうことは知っていたわけだし。
とはいえ、これ以上言い合っても仕方ないと思うし、ここは話を元に戻しておこうかな。
「えーっと、それで結局どうしましょうか?」
「……虫がいい話ではあるけれど、よければ協力してくれないかな?
自分の魔力について、調べることができるのであれば調べておきたいんだ」
「それは構いませんが、レオン様を実験台のようにする形になってしまいますよ?
さっきも、魔力を塞ぐ塊に干渉したときの影響がわからず、どこまでやっていいのかわからなかったですし」
そう考えると、かなり無茶をしたような気がするね。
いやまあ、ちゃんと目で見て確認しながらやっていたし、ただ魔力に干渉するだけなら問題ないだろうと思ってはいたけど。
「そう言われると少し怖いけれど、問題ないよ。
さっきのも僕が無理に強要したようなものだしね。
それに、普通の魔力に干渉して問題なかったからこそ、僕にも試すことにしたんでしょ?」
「それは、そうですが……」
「なら、このまま協力してくれないかな?
いくらポーションの研究が少ない魔力でも可能とはいえ、魔力が多いに越したことはないからね。
ちなみに、さっきは一瞬だけ魔力が増えた形だったけれど、恒久的に対処できたりということは可能そうかい?」
「うーん、さっきの感覚だとすぐにどうこうというのは難しいと思います。
さっきも言いましたが、魔力を塞ぐ塊に干渉したときの影響がわからないので、どこまでやっていいのかがわからないですし。
それに、恒久的な対処となると、レオン様の魔力が凝り固まってしまう症状の治療法も見つける必要がありますから」
正直、凝り固まった魔力の塊を一気に吹き飛ばすくらいのことをしてもいいのであれば、すぐにでも解決できるかもしれない。
ただ、それをやったときのリスクがわからないし、仮に成功したとしても、再び魔力が凝り固まってしまうのでは恒久的な対処とはならないんだよね。
「干渉したときの影響に、魔力が凝り固まる症状の治療か。
確かに、そのあたりも確認は必要かもしれないね。
とはいえ、症状の治療か……」
「?
何かおかしかったですか?」
「いや、僕は君の話を聞いて毒や呪いを真っ先に疑ったからね。
ずいぶんと毒されているものだと思っただけだよ」
あー、公爵家ともなれば、そういう可能性の方が先に思い浮かぶのか。
私なんか、珍しい病気だなぁとしか思わなかったよ。
「ところで、先ほどから恒久的な対処の話をされていますが、それは問題ないのですか?
いえ、レオン様の魔力が元通りになることは良いことだと思うのですが、色々と状況が変わってしまうのではないかと思ってしまって」
「まあ、僕の魔力がいきなりまともになると面倒なことになるだろうね。
毒や呪いが原因だった場合は、それを画策していた相手から狙われるだろうし、ただの病気だった場合も、公爵家の実権を欲している叔父たちから狙われることになるだろうから。
そう考えると、試行錯誤しながら時間をかけて対処していくというのも、色々と対策を講じるために悪くないかもしれないね。
付き合ってもらうことになる君には申し訳ないけれど」
「それは構わないのですが、やはりレオン様の魔力が戻ると面倒なことになるのですね……」
「さすがに、今さら過ぎるだろうからね。
というわけで、面倒を避けるためにも、次からは魔力を隠蔽するような魔道具を用意することにするよ」
そう言うレオン様を見て、何となくモヤモヤしたものを感じる。
いやまあ、本人がそれでいいと言っているのだから、外野がとやかく言うものでもないとは思うけど。
そうして、レオン様の魔力問題への対処を約束するような形で、初めてのポーション作りを終えることになった。
正直、色々あり過ぎたせいで、本題であるポーション作りのことがあまり印象に残っていないけどね。




