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魔力なし公爵様に嫁いだら  作者: はぐれうさぎ


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第16話 ポーション作り(3)

「はぁ。

 いや、色々と疑って悪かったよ。

 昔は魔力のことで色々と言われることが多かったから、そのときのことを思い出してしまってね」


「あ、いえ、それは構わないのですが。

 それで、この後はどうしますか?

 もしかしたら、レオン様の魔力を塞ぐ塊にも干渉できるかもしれませんが」


「……は?」


 珍しく、レオン様がとても間の抜けた顔で聞き返してくる。

 間の抜けた顔でも、様になっているのが何とも羨ましい限りだけど。


「僕の魔力を塞ぐ塊……?」


 あっ、そこからなんだ。

 というか、周囲から魔力を集めていると伝えただけで、魔力の源を塞いでいる塊のことを言っていなかったのだから当然か。


「えーっと、おそらくレオン様はちゃんと魔力をお持ちですよ?

 凝り固まった魔力の塊が、レオン様の魔力の源を塞ぐ形になっているせいで扱える魔力が極端に少なくなっているだけで」


「……本気で言っているのかい?

 自分で言うのもなんだけれど、僕にとっては、かなりデリケートな問題だよ?」


「本当です。

 今も実際にレオン様の魔力がうっすらと漏れ出ていますし。

 ……というか、今更ですが、いわゆる“魔力なし”というのは具体的にどういう人を指すのでしょう?

 何となく、文字通りに魔力がない人のことを指すのかと思っていましたが、今のレオン様のようにごくわずかな魔力しか漏れ出ていないような場合も“魔力なし”とされるのですか?」


 てっきり“魔力なし”=“魔力が一切ない”と思っていたけど、もしかして今のレオン様のような状態でも“魔力なし”判定になるのだろうか?

 だったら、かなり余計なことを言ってしまった?

 魔力が漏れ出ているレオン様の状態から、“魔力なし”判定は誤りだったのではないかと思ったのだけど。


「“魔力なし”というのは、一定以下の魔力量しかない人間のことを言うんだよ。

 もちろん、魔力が一切ないというケースもあるけれど、僕の場合は極端に魔力量が少ないということが理由になる。

 僕も幼い頃には相応に魔力があったらしいけれど、それが成長するにしたがって少なくなっていったらしくてね。

 一応、当時は僕も公爵家の跡取りとして考えられていたから、その原因の究明や治療を幾度となく試すことになったんだよ?

 けれど、そのことごとくが効果なく終わり、結局は“魔力なし”として扱われることになったんだ。

 なのに、僕には魔力がある?

 君は本当に僕をバカにしているわけではないのかい?」


「いやいやいや、本当にバカにするような意図は一切ないですよ。

 というか、本当に公爵家で行われた治療で効果がなかったのですか?

 それこそポーションとかでも何かしらの効果がありそうなものが存在しそうですが」


「君の言葉を信じるなら、体内の魔力の淀みを解消するポーションで治療できそうではあるね。

 ただ、当然これまでの治療でそういったものも試してきているはずだ」


 私の疑問に対してそう答え、レオン様の目つきが険しくなる。

 ……もしかしてかなりマズい?

 さっきレオン様が自身でおっしゃったように、かなりデリケートな問題だろうから、少し踏み込み過ぎたのかもしれない。

 とはいえ、今さらここまでのやり取りをなかったことにもできないし……。


「申し訳ありません、言葉で説明できる気がしないので、試させていただけませんか?

 さっきも言いましたが、もしかしたらレオン様の魔力を塞ぐ塊にも干渉できるかもしれませんので」


 正直、これが失敗すると今後のレオン様との関係は致命的だと思う。

 でも、だからといって他にいい方法も思いつかないし、これでどうにかするしかない。


「……どう思う?」


「これまでプリムラ様にお仕えしてきましたが、特にそういった悪意のある謀をされるとは思えません。

 ですので、はっきりさせるためにも一度お試しになってもいいのではないでしょうか?

 もちろん、プリムラ様が得体の知れないものが見える残念な方という可能性もありますが」


 ……いや、残念な人って。

 場の空気を和ませるための冗談だとは思うけど、もう少し言い方があったのでは?

 とはいえ、アリアの言葉のおかげでレオン様も決断したみたいだし、あまり文句も言えないけど。


「……では、試してくれるかな?

 僕としても、この件については、はっきりとさせておきたいからね」


「わかりました。

 では、手を握らせていただいても構いませんか?」


「これでいいかい?」


 そう言ってレオン様が差し出してくれた右手を手に取り、両手で包み込むようにして胸元へと引き寄せる。

 そうして、レオン様の胸元にある魔力の源を塞ぐ塊へと目を向け、ゆっくりとレオン様へと魔力を流し始めた。


「っ」


「申し訳ありません。

 少し我慢してください」


 流し始めた魔力に反応したレオン様にそう告げ、視線を動かすことなく作業を続ける。

 ゆっくりと、右手から右腕、そこから胸元へと魔力を流していき、魔力の源を塞いでいる凝り固まった塊へと魔力を届かせていく。

 そうして、まずは塊を包み込むように魔力を動かすと、どうやら凝り固まった塊が球体状になっていることがわかった。

 正直、魔力や魔力の源に実体があるとも思えないので、私が魔力を可視化したイメージでしかないかもしれない。

 とはいえ、感覚的には魔力の源を包み込むように凝り固まった塊が何重にも覆いかぶさっている形なので、ひとまずはそれをはがすことができないかと試してみる。


「くっ」


「あっ、もしかして、痛みがあったりしますか?」


 再び反応したレオン様の様子に、魔力の操作を止めてから確認する。

 そういえば、魔力の源やそれを塞ぐ塊に干渉したときの影響を考えていなかった。

 もし、痛みがあったり、身体に害があるのであれば、これ以上試すのは危険かもしれない。


「いや、すまない。

 少し不思議な感覚だったから、つい声を出してしまっただけだ。

 痛みはないから続けてくれ」


「わかりました」


 そう答えた後、再び凝り固まった塊へと意識を向ける。

 とはいえ、さっきまで考えていた一気に凝り固まった塊を剥がすというのはマズいかもしれない。

 なので、少しずつ魔力の源を塞ぐ塊へと干渉していく形に方針に変更して作業を続けていく。


 塊を揺らしてみたり、包み込んだ魔力で溶かそうとしてみたり。

 そんな風にいくつかの方法を試した後、漏れ出ているレオン様の魔力に注目し、その漏れ出ている隙間を広げるように干渉すると反応があった。


「なっ」


 一瞬だけとはいえ、漏れ出る魔力が一気に増えたことにレオン様も気づいたらしい。

 なので、レオン様に眠る魔力の証明はできたと考え、魔力での干渉を止めて握っていた手を放す。


「えーっと、どうでしょう?

 一瞬だけとはいえ、レオン様の魔力が増えたので私が言っていたことの証明はできたと思うのですが」


「……」


 そう伝えてみたものの、レオン様は自身の魔力が増えたことによる衝撃が大きかったのか、解放した右手を見つめたまま呆けている。

 一瞬さらに声をかけようかと考えたものの、アリアと視線を交わし、しばらくそのままにしておくことにした。


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