第15話 ポーション作り(2)
「それで、改めて確認したいのだけれど、僕が周囲から魔力を集めていたというのはどうしてわかったのかな?
これまで、そんな指摘を受けたことはなかったのだけれど」
準備した薬草を微妙な出来のポーションに作り終えた後、さっそくレオン様から先ほど保留された魔力の話について切り出された。
たぶん、見逃してくれないだろうと思っていたけど、予想以上に真剣な雰囲気でテキトーな答えを許さないというような圧を感じる。
まあ、レオン様がこれまで“魔力なし”として苦労したであろうことを考えると仕方ないのかもしれないけど。
「えーっと、レオン様の魔力の気配を感じ取ったことでわかったのですが、本当にこれまで誰にも指摘されなかったのですか?」
「指摘されたことはないね。
公爵家、学園のどちらでも。
にもかかわらず、君は何でもないことのように指摘してきている。
もし、君が僕の魔力量の少なさをバカにするためにやったのでなければ、ぜひともその理由を聞かせてほしいね」
「……」
さて、どうしよう。
さっきは魔力の気配なんて言い方をしたけど、実際は魔力が見えているんだよね。
一応、魔力を見れるというのが珍しいことだというのは理解していたけど、まさか、公爵家や国が運営する学園でも見える人がいないとは。
いやまあ、もしかしたらレオン様が魔力を使うところを見られていないから、という可能性もあるけど、さすがにさっきのアレは見ればすぐにわかるくらいには珍しい動きだったと思うんだよね。
そう考えると、これまでもポーションは作っていたはずだし、気づかれていないのではなく、悪意をもって隠されているという可能性もあるのかもしれない。
「どうしたの?
もしかして、答えられないということは、やはり僕のことをバカにしていたのかな?」
どう伝えるべきかと悩んでいると、再びレオン様の硬い声が飛んできた。
さすがに、その誤解を放置しておくのはマズいので早く説明しないと。
とはいえ、お父様からはできる限り隠すようにと言われているんだよね。
そうすると、同席しているアリアのことはどうしよう?
「えーっと、もう一度言わせていただきますが、決してレオン様をバカにするような意図はありません。
少し説明が難しかったので、どうお伝えすべきかと悩んでいただけですので」
そう言って、一度アリアへと視線を向ける。
すると、レオン様はそれだけでこちらの意図を察してくれた。
「ああ、アリアのことを気にしていたのか。
彼女なら大丈夫だよ。
公爵家、というか僕の身内のようなものだから」
「身内ですか?
アリアは養子になった伯爵家でつけられた侍女だったと思うのですが」
「それは公爵家から派遣する形にしていたからだよ。
さすがに伯爵家の人間を引き抜くような真似はできないからね」
なるほど。
つまり、あの伯爵家は本当に私の身分的なものをクリアするためだけに協力しただけで、後は全て公爵家側で用意していたという形だったのか。
「わかりました。
では、アリアにも内密な話を聞かせても問題ないということですね」
「そうだね。
アリアから他に漏れるようなことはないから、どうしてもイヤということでなければ、このまま話してほしいね」
秘密である以上、聞かせる人間は少ない方がいいはずだけど、レオン様がここまで言うのであれば無理に隠す必要もないかな。
それに、今後もそばにいるのはアリアになるのだろうし、信用できるなら話しておいた方がいいのかもしれない。
そう考え、アリアも同席したまま、素直に秘密を話すことを決める。
「えーっと、かなり珍しいみたいなんですが、私は魔力を見ることができるのです。
なので、レオン様がご自身の魔力ではなく、周囲の魔力を集めて使用していたことにも気づけました」
「……魔力が見える。
それは本当かい?」
「はい。
レオン様もご存知かもしれませんが、私は子供の頃の事故によって魔力が急激に増えました。
実は、そのときの事故が原因で、魔力が見えるようにもなっていたんです」
あれは十年前だったかな?
領地にある森に遊びに行ったときに倒れて、魔力が急激に増加するということが起きたのは。
「それを知っているのは?」
「家族だけです。
教会も魔力が増えたことは知っていても、魔力が見えるようになったことまでは知らないはずです」
一応、私も十歳になったタイミングで魔力鑑定は受けている。
なので、計測した教会も私の魔力が男爵家の娘としては異常なくらい多いことは知っているはずだ。
というより、こうして公爵家に嫁ぐことになっているのだから、教会から私の魔力量の情報が漏れているのは確実だと思うけど。
お父様も口止めはしたと言っていたけど、さすがに公爵家相手だと分が悪かったんだろうね。
「なるほど。
にわかには信じがたい話ではあるけれど、君が過去の事故で急激に魔力量が増えたという話は聞いているからね。
であれば、そういったこともあるのかもしれないね」
どうにか信じてもらうことはできたのかな?
とはいえ、問題はそれを知ったうえでレオン様がどう判断するかだと思うけど。




