第14話 ポーション作り(1)
レオン様や王子様方がおっしゃっていた通り、無事にこれまで通りの日常が戻ってきた。
単にレオン様との食事が復活しただけだったりするけど、今後の関係をよくするためにも、そんな何気ない日々の交流を大切にしていきたい。
そんな風に改めてレオン様との関係を考えていたところに、約束していたポーション作りのお誘いがあった。
「それじゃあ、まずは実際にポーションを作っているところをみせるよ。
手もとが見えるように、もう少しそばに近づいてきてくれるかな?」
レオン様が研究に使用しているという工房へと案内され、作業場の簡単な説明の後にさっそくポーション作りを見せてもらうことになった。
なので、レオン様の言葉に従い、作業の邪魔にならない程度に距離をとりつつ隣へと移動する。
「最初は薬草の処理から――」
そんな風に説明してくれながら作業を進めるレオン様を傍らから静かに見守る。
普段の優しい笑みを浮かべた表情とは違い、ポーション作りを進めるレオン様の表情は真剣そのものだ。
なので、作業を行う手もとを確認しなければいけないと思いつつ、ついつい普段とは違うその表情に目が引き寄せられてしまう。
とはいえ、一応は私のために行ってくれているということもあり、すぐにそちらから視線を外して手もとの作業へと集中しようとする。
けれど、すぐにまたその真剣な表情へと引き寄せられそうになり――、ということを繰り返していると、レオン様の手によるポーション作りが終わっていた。
「どうだったかな?
今のが基本的な手順になるけれど」
「は、はい。
それはもうバッチリです」
ついボーっと眺めてしまっていたところに声をかけられ、慌てて返事をする。
とはいえ、バッチリかどうかはともかく、手順の確認自体はちゃんと行っていたのは本当だ。
その最中に何度か視線を奪われてしまったけど、たぶん問題ないはず。
そう自分に言い聞かせていると、後ろから何やら視線を感じ、そちらへと目を向ける。
すると、そこには疑わし気な目をしたアリアの姿があった。
「……」
無言で向けられる視線が痛い。
とはいえ、アリアから向けられた疑わし気な目は、どうにかレオン様に気づかれることなく乗り切ることができたようだった。
「じゃあ、せっかくだし、実際にやってみようか」
レオン様が作ったポーションの確認をさせてもらった後、自然な流れでそういうことになった。
まあ、もとよりそういう予定だったので問題はない。
なので、素直にその提案を受ける。
「では、せっかくですので試しに作らせていただきます」
そう言って、レオン様が見守る前でポーション作りを始めていく。
まずは薬草を刻むところから――。
そうして作業を進め、薬草を煮だしている鍋に魔力を込めたところで問題が起こった。
「……それは、どういうつもりかな?」
「えっ、何か間違っていましたか?」
突然、隣にいるレオン様から硬い声で問いかけられ、わけもわからずに聞き返してしまう。
とはいえ、レオン様の表情的に何かをやらかしてしまったのは間違いなさそうだ。
「その無理に抑えた魔力はどういうつもりかと聞いているんだよ」
「えーっと、一応、レオン様のやり方を真似たつもりだったのですが。
ただ、体内の魔力を使わずに周囲から魔力を集めるというやり方をしたことがなかったので、魔力をまともに扱うことができず……。
申し訳ありません」
「……そのやり方は、僕のことをバカにしているわけではないと?」
「そ、そんな、バカにするだなんて」
レオン様から告げられた予想外の言葉に慌てる。
いや、確かに魔力量が少ないということは知っているけど、それをバカにしようだなんて考えたこともないよ!?
「はぁ。
どうやら、本当にそういうつもりはなかったみたいだね。
悪かったよ、疑ってしまって」
「い、いえ」
ひとまず、私のあまりのうろたえぶりに不本意な疑いは解けたらしい。
とはいえ、何故そんな風に思われたのかがわからないのだけど。
「……もしかしてですが、ポーションを作るときに込める魔力は、無理に周囲から集めなくても大丈夫なのですか?」
「そうだね。
というか、僕も周囲から魔力を集めているつもりはなかったしね」
「えっ、そうだったのですか?」
何というか、かなりスムーズに魔力を集めていたから、そういうものだと思っていたのに。
まさか、それが無意識の行動だったなんて。
「……とりあえず、準備した薬草を処理してしまおうか」
ひとまず落ち着いたのか、いつもの穏やかな口調に戻ったレオン様からそう告げられる。
先ほどのことが少し気になるけど、確かに処理が途中になっている薬草をこのままにしておくわけにもいかない。
なので、とりあえずは目の前のポーション作りを終わらせることにした。




