第13話 来客
謎の妨害が発覚してから二日後、思っていたよりも早くレオン様と顔を合わせる機会がやってきた。
まあ、レオン様に来客があり、そこに呼ばれたというだけなんだけどね。
「お出迎えもできず、申し訳ありません」
レオン様が待つ応接室へと向かい、来客である男女へと声をかける。
正直、こういうときの対応については未だに自信がない。
結婚前の詰め込み教育で、そういったことも一通りは叩き込まれたはずなのに。
そんなことを考えつつ、促されてレオン様の隣の席へと腰を下ろす。
すると、すぐに向かいに座る男性から声がかかった。
「さて、こうしてちゃんと顔を合わせるのは初めてかな。
私はトリスタン、この国の第一王子をしている者だよ」
トリスタン殿下。
この国の第一王子で、確か既に王太子としての指名も受けていたはずだ。
「私もこうして顔を合わせるのは初めてね。
私はスカーレット。
同じく、この国の第一王女をやっているわ」
続いて、その隣に座る女性からも自己紹介を受ける。
こちらはスカーレット殿下で、確かレオン様と同じ年齢で、学園でも同じ学年だったと聞いた気がする。
「よろしくお願いいたします。
プリムラです」
こちらも改めて名乗り、頭を下げておく。
さて、呼ばれているということでやって来たはいいものの、何をすればいいんだろうか。
とりあえず、このままレオン様の隣に座っておけばいいのかな?
「それにしても、あのレオンがこうも変わるとはね」
「本当にね。
学園にいた頃のことを考えると信じられないわ」
どうやら、この会合というかお茶会はレオン様と王子様方の旧交を温める場のようだった。
聞いている限り、レオン様自身も結婚式以来まともに会う機会がなかったようで、この場で色々と結婚後のことを聞かれたりしている。
「二人ともひどい言いようだね。
僕とて、結婚したからにはしっかりと相手のことを考えるくらいのことはするさ」
「そう?
昔の貴方なら深入りすることなく、表面的な付き合いに終始していたと思うわよ?
それが、面倒な横やりが入ったから排除するのに手を貸してほしいだなんて、本当に変われば変わるものだわ」
「まったくだね。
結婚式のときは上手く取り繕っているだけだと思っていたのに、まさかその後もちゃんとしていたとは思わなかったよ。
あのレオンが女性をデートに誘うなんて、あの頃からは考えられなかったからね」
どうやら、お二人が知るレオン様というのは、かなり人づきあいを嫌う性格だったみたいだ。
そのあたりのことは、アリアの話などからも察していたけど、やはり私からすると意外な感じではある。
「まあ、レオンのことはいいわ。
それよりもプリムラさんのことよ。
どう? レオンはちゃんとやってくれている?」
「えっ!?
そ、そうですね、色々と良くしていただいています」
お茶を飲みながら油断していると、スカーレット様から話を振られてしまった。
どうやら、この場に呼ばれた以上は完全な傍観者でいることは難しいみたいだ。
「色々ねぇ。
具体的にはどういったところが良かったの?
正直、私からするとレオンのそういうところは想像がつかないのだけれど」
「えーっと、庭園に連れて行ってくださったり、色々とプレゼントをいただいたり、ですね。
最近は少しお会いできていませんでしたが、それまでは食事のときに色々とお話を聞いてくださったりして、気にかけていただいていましたし」
具体的に、と言われると少し困ってしまうね。
いや、別に良くしてもらっていないというわけではないけど、何というか他の人に説明しにくいというか。
私的には今の距離感でのんびりやっている感じが良かったりするけど、他の人からするとそれは微妙に感じるかもしれないし。
「あぁ、最近は会えてなかったというと、例の横やりが入っていたやつね。
それについては、私たちの方から釘を刺しておいたから今後はそういったことはなくなるはずよ」
「へっ?」
「本当に彼にも困ったものだよ。
レオンは公爵家の当主の座に固執してなどいないというのに、それを信じられずせこい真似をしているのだから」
「本当にね。
当主の座を狙うならそれ相応の行動を見せるべきなのに、それをせずに嫌がらせじみたことしかできないのだから、本当に小物よね。
いっそ、このまま貴方が当主の座に収まったままの方がいいのではないかしら」
「いやですよ、面倒くさい。
このまま僕が当主の座に残ったとしても、他家から色々と文句をつけられて足を引っ張られることが見えているんですから。
だったら、そういった面倒ごとは叔父にでも任せて、僕は好きに研究でもしている方がマシです」
「はぁ、そういったところは変わっていないのね。
プリムラさんのことでこちらに話を持ってくるくらいだから、少しは変わったのかと思っていたのに」
横やりがなくなるという話に驚いていると、目の前で何やらレオン様の叔父という人の批難が始まってしまった。
いやまあ、その人の評価についてはよくわからないけど、とりあえず、お二人のおかげで謎の妨害はどうにかなったということなのかな?
「ああ、説明していなかったね。
叔父からの嫌がらせじみた妨害については、彼らにお願いして対処してもらうことにしたんだよ。
で、今日のコレはその対処が上手くいったということを知らせてもらった形かな。
まあ、とにかく妨害はなくなったから、今日からはこれまで通りの生活に戻るはずだね。
それに、以前約束したポーション作りについても近いうちに招待できると思うよ」
「あっ、そうなのですね」
「……貴方、プリムラさんを自分の趣味であるポーション作りに誘ったの?」
「いや、以前僕の研究のことを話したら、興味を持ってくれたんだよ。
だから、決して無理強いしたとかではないよ」
「本当に?
プリムラさんも無理に付き合う必要はないのよ?」
「いえ、本当に興味がありましたので。
それに、ポーションが作れるようになると色々と便利そうじゃないですか」
疑わし気な様子のスカーレット殿下にそう訴えたものの、何故か呆れたような顔をされてしまった。
やっぱり、王女様ともなると、ポーションは自分で作るようなものではなく誰かに用意してもらうものなのかな?
まあ、今の私も公爵夫人なわけだし、そう考えると呆れたような顔をされても仕方ないのかもしれないけど。
そんなことを考えつつ、再びレオン様の話に戻った会話をのんびりと眺める。
何にせよ、謎の妨害はなくなったみたいだし、これでまた平穏な日常が戻ってくるのかな?




