第12話 妨害
レオン様との庭園デートから一月ほど経った。
あれ以来、昼食や夕食を共にする機会も増えて毎日のように顔を合わせるようになったし、暮らしている場所は違うものの、なんだかんだでレオン様とは上手くやれているのではないだろうか。
都合がつかないのか、ポーション作りを一緒にするという約束は実現していないけど、数日前には一緒に買い物に出かけたりもしたことだしね。
……まあ、何故かその直後から、レオン様と顔を合わせることができなくなってしまっているのだけど。
「レオン様はまた忙しくなったのかしら?」
自室のソファに座り、お茶の用意をしてくれているアリアのことをぼんやりと眺めながらつぶやく。
会えなくなって数日、というかまだ三日しか経っていないというのに、こうも気になってしまうなんて我ながら意外だ。
まあ、そう感じるくらいレオン様との食事が習慣化していたというのと、他に考えるようなことが少ないからということだとは思うけど。
「いえ、どうやらロドニー様の横やりが入っているようです」
「横やり?」
返事を期待した言葉ではなかったものの、アリアは私の疑問に対する回答を持っていたのか、お茶の用意をし終えた後に律儀に答えを返してくれた。
さらに、私の表情からロドニー様なる人物のことがわかっていないということも察してくれたのか、続けて説明をしてくれる。
「ロドニー様は旦那様の叔父にあたる方で、現在の公爵家を取り仕切っている方です。
そして、横やりについてですが、どうやら旦那様とプリムラ様が親密になることをよく思わなかったのか、お二人がお会いする機会を潰そうと動いているみたいです」
「親密? あの程度で?
いや、確かにレオン様との距離は近くなったとは思うけど、そんなに警戒するようなレベルだった?」
もしかして、一月程度で二回のデートというのが問題だった?
とはいえ、一応は新婚なのだし、周囲へのアピールとしてもそこまでおかしいものではないと思うけど。
というか、デートに関しては、むしろ対外的なアピールのために必要なことだと思っていたくらいなのに。
「お二人の親密さをどう思っているのかはわかりませんが、どうやら、旦那様がプリムラ様のことを思って当主の座に固執するのではないかと不安になったようですね。
これまであまり周囲との交流を持たなかった旦那様が、プリムラ様を相手に積極的な交流を持とうとしたことがかなり意外だったみたいです。
特に、先日のデートの際のプレゼントでかなり警戒されたようですね」
「あっ、警戒されるってことは、やっぱりあのプレゼントの量は多かったんだ」
数日前のデートでの様子を思い出して納得する。
なんだかんだで、ドレスやアクセサリーを大量に買ってもらうことになったからね。
私としては数点で十分だったのに、レオン様は次から次へとドレスやアクセサリーを試着させて、それをどんどんと買っていってしまうのだから。
「いえ、公爵家として考えるのであれば、あの程度は多いうちに入りません。
おそらく、これまでの旦那様からは考えられない行動を警戒したのでしょう」
……あの量は多いうちに入らないんだ。
というか、つまりはどういうこと?
「えっと、もしかしてだけど……。
まさか、レオン様が私に入れ込んでいるとでも思ったということ?」
「そのようです。
ですので、旦那様がプリムラ様とお会いするのを妨害するようになったみたいですね。
付け加えますと、以前お約束されたポーション作りが実現しないのもその一環だと思われます」
えぇ……、レオン様が私に入れ込むとかないでしょ。
前回のお買い物デートにしても、単に私をからかって楽しんでいただけだと思うし。
「というか、ポーション作りが妨害されていたなら、何故最近まで食事を一緒にとることができていたの?
なんというか、そちらも普通に妨害されそうな気がするのに。
それに、それならこの前のお買い物が妨害されなかったのが不思議なのだけど」
「お食事については、屋敷内ということでロドニー様の手の者の目がある状況だったからでしょうね。
ポーション作りに関しては、旦那様が管理する工房での作業になりますので。
それと、お二人のデートが邪魔されなかった理由は私もわかりません。
おそらく、これまでの旦那様の行動から予想できなかったからだとは思うのですが……」
それはつまり、レオン様が結婚相手のことを普通に放置する人間だと思われていたということ?
私からすると、人づきあいもそつなくこなすようなイメージなのに。
「まあ、いいわ。
つまり、今後はレオン様とお会いすることができなくなるということなの?」
「……さすがに一切お会いできないという状況にはならないはずです。
対外的なイメージの問題もありますし、おそらくは警告的な意味の一時的なものではないかと思います」
あー、結局は嫌がらせという感じなのかな?
まあ、あまりやり過ぎると藪蛇になる可能性だってあるだろうしね。
むかつくから、あいつには当主の座を渡さない的な感じで。
とはいえ、しばらくはレオン様と顔を合わせることのない日々が続くのか。
……何だろうね、結婚前に想像していた通りの生活のはずなのに、なんとなく寂しく思ってしまうのは。




