第11話 デート(4)
「――っと、少し話し過ぎてしまったね」
しばらく歩きながらポーションに関する話を聞いていたものの、一方的に話すことになっていることに気づいたレオン様が恥ずかしそうにそう口にする。
「いえ、レオン様がポーションの研究にとても熱心なことがよくわかりましたので」
これについては、割と本心からの言葉だ。
ポーションについて語るレオン様の様子から、本当にポーションの研究に真剣だということが伝わってきたし、だからこそ、公爵家の当主の座にも本当に固執していないのだろうなということも察することができたから。
「ま、まあ、僕の研究についてはこんなところかな。
そういえば、やりたいこととしては料理が見つかったみたいだけれど、もしよければポーション作りについても試してみるかい?
以前言っていた、将来の役に立つという技術ではあると思うけれど」
「ポーション作り、ですか?
私でもできるようになるものなのでしょうか?」
「うん、簡単な魔力操作ができれば作ることは難しくないよ。
特に、一般にポーションと呼ばれている下級ポーションについては、作るための手順も簡単だからね」
へー、ポーションって簡単に作れるものなんだ。
……いや、あくまでもレオン様にとっての簡単だから、私にとっても同じように簡単かどうかはわからないのか。
とはいえ、ポーションを作れるようになるというのは魅力的だし、一度試させてもらうのも悪くないかもしれない。
「そういうことでしたら、一度試させていただきたいですね」
「それじゃあ、また機会を見てポーション作りに招待するよ」
最後にそんな約束をして、ポーションについての話題を終える。
そうして、またのんびりと周囲の景色について眺めたり、話したりしながらの散策へと戻っていった。
「もうすぐ着くよ」
レオン様の言葉を聞き、一瞬どこに? と思ったものの、すぐに目的のお気に入りの場所のことだと思い当たる。
「レオン様のお気に入りの場所ですか。
楽しみですね」
「ふふ、君にも気に入ってもらえるといいのだけれどね。
この道の先まで行くと見えるようになるよ」
その言葉に、緩やかな上りになっている道を進む足が気持ち早くなる。
そうして足早に道の先まで進むと、右手にあった木々が途切れ、その先の景色が一気に視界に飛び込んできた。
「うわぁ……」
目の前の光景に、思わず声がもれる。
小高い丘のようになっているこの場所は、眼下に広がる、色とりどりの花々が咲き誇る一面の花畑を見下ろすことができる場所だったみたいだ。
「気に入ってもらえたようで良かったよ。
少し庭園のイメージとは違うかもしれないけれど、僕はここから見える景色が気に入っていてね」
しばらく目の前の景色に見惚れていると、後ろで見守っていてくれたらしいレオン様から声をかけられる。
「すごくきれいな景色ですね。
庭園の中にこういった場所があるとは思っていませんでした。
レオン様は、この景色に感動されたのですね」
「うーん、感動というよりは、衝撃を受けたという感じかな。
ここから見える景色は、ここまで見てきた管理された庭園というイメージからは違った気がしたからね。
だから、当時の境遇と相まって、色々と思うところがあった感じなんだよ。
もちろん、景色の素晴らしさにも心を打たれたけれどね」
あー、ここから見える景色の在り方に思うところがあった感じなのか。
まあ、色とりどりの花々が一面に咲き誇っているこの光景は、かなりのインパクトがあるだろうしね。
「当時の境遇というと、学園での生活が大変だったのですか?」
「大変だったというより、僕の気持ちの持ちようの問題かな。
学園に入る前に折り合いをつけたつもりだったものが、実際に入った結果、周囲の声などに色々と惑わされてしまうこともあってね。
だから、ここについては、そういった諸々を吹っ切るきっかけをもらった場所という感じかな」
そんな風にレオン様の思い出話を聞き、しんみりとした空気の中で思い出の場所を後にする。
とはいえ、しんみりとした空気はすぐになくなったので、帰り道も楽しく和やかに散策することができたけど。
その後、最後に王都の高級なお店でのディナーという強敵が待ち構えていたものの、どうにかこの日のレオン様とのデートを無事に乗り切ることができた。




