災禍の呼水
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依然として正門は多くの観光客に取り囲まれ、賑わっていた。
アイスを片手に、会場外から将軍の挨拶を耳にしようと近づいてくる家族連れ。
水着と見分けのつかない服を着ながら、日陰で涼むカップル。
会場内と異なり、静かになる気配が全く見えない彼らは、各々のやり方で、今日という記念すべき1日を祝っているのだろう。
そしてそれは、頑強な門の守りを任された衛兵も同じであった。
「なぁ、アンナ。聞いたか?」
槍を片手に壁に寄りかかる女の隣で、兜を被った男が地べたに座り込んだ。
不意に話しかけられて驚いたのか、一度身体を跳ねさせた彼女は、呆れた様子で息を吐く。
「ハァ、誰かと思えば……。聞いたかって、何を?」
「なんでも、太陽派が市内に侵入してるらしい。厳重に警戒せよ、だとさ」
「あぁ、そのこと。勿論聞いたよ、ミーティングの内容はいつもしっかりメモしてるしね。ま、数日前から言われてた通りってだけでしょ?あたしはどっかの誰かさんと違って気を緩めたりはしないから……って」
三つ編みを垂らす彼女は、腕を組みながら気怠げに笑う。
そして、男が兜を脱ぎ、懐から小包を取り出すのを見ていた。
「何それ。菓子パン?」
「あぁ。どうせ腹減るだろうと思ってな、家から持ってきた。正念場はこれからだろ?」
「バカ。バレて殴られても知らないからね」
「はむ……いや、上官に知られなきゃ大丈夫さ。それに、オレは……」
彼は思い切り右頬を叩くと、太陽のようにはにかんで見せた。
口の端には、パンが纏っていた雪のような粉砂糖が、幾らか張り付いている。
「殴られ慣れてるからな。ほら、オレって昔っからどんくさかっただろ?」
「……。そうだね。模擬戦闘でも、あたしに負けっ放しだったし」
「でも、最近一回は勝ったぞ?」
「一回だけでしょ?それまでの間に、何回負けてると思ってんのよ」
ぐぅの音も出ない。
ぱくぱくと口を動かした後、むすっとした表情で青年は再びパンに齧り付いた。
「フッ。じゃあ、今度、一緒にまた練習する?」
「んあ?ひひほは?」
「あのねぇ。飲み込んでから喋りなさいよ」
「ん、ん、ぐうっ……良いのか?お前、最近上官に気に入られて、ただでさえ忙しいんだろ?」
「うーん、まぁそうだけど。アンタと練習したところで疲れないし。休憩みたいなものでしょ」
「な、なにをっ」
流石にこれだけ好き放題言われると腹に据えかねたのか、男は菓子パンを一気に飲み込んで勢いよく立ち上がる。
彼なりに精一杯凄んでみせているが、相変わらず口周りを砂糖でいっぱいにしているのを鑑みると、全く恐怖感が襲ってこない。
そんなちぐはぐな様子が、何よりも面白かった。
「はっ、あははっ!」
「なっ、笑うなぁ!」
「ごめん、ごめん。冗談よ。まぁ、昔馴染みのよしみってことでさ。今度で良いから、暇そうな日があれば私の部屋に——え?」
アンナの楽しげな顔が凍りつき、身につけた鎧をどろっとした真紅の液体が濡らす。
比喩ではない。
ことりと、何かが地に堕ちる音が聞こえた。
「あ、あ……」
眼が合う。
何と?
かつて、親友だった男の眼と。
しかし、その瞳に光はなく、自らの赤に染め上げられていた。
司令塔を失った身体が風に揺らされ、倒れ込む。
無意識の内に、彼女はそれを受け止めていた。
「ああっ、あああ、あがっ」
「……騒ぐな、卑しい婢女め」
揺れる眼差しが、黒いローブを捉えた。
うなじに冷たさと、暖かさを感じる。
燃えるように熱く、芯から凍えそうな程冷たい。
「私が今から聞くことに答えろ。さすれば、命だけは助けてやる」
「……ふぅ、はぁ、はぁ……」
「ここを守っている衛兵は何人だ?」
「……ぐっ」
「答えろ。二度は聞かんぞ」
ずぷり、と不快な音が鼓膜を揺らす。
鎧の隙間から、まだ体温の感じられる血液が流れ込んできた。
大きな樹の下。
得物は、その手の中に。
最も懸命な選択とは、言われるがまま、脳裏に浮かんだ数字を口にすることなのだろう。
しかし、迸る激情が、彼女にそれを許さなかった。
「クソがッ!!!殺してや——」
そして、槍を手に振り返った瞬間。
アンナは、肩から対岸の腰まで一挙に切り捌かれ、崩れ落ちる。
手、足、首。
あらゆる関節の制御を失い、滴る液体と共に血溜まりの中へ倒れ込んだ。
なんでもない、どんな場所でも起こりうる凡百の惨劇。
しかし、その惨さは、数量によって希釈されるものではない。
「所詮、彼奴等は罪人でしかありません。我々真人と同じ賢明な判断ができるわけではないということですよ。これで、よく分かりましたね?」
そう吐き捨てたのは、ローブを人一倍深く被った背丈の低い誰か。
声音からして、彼が年端も行かない少年であることは明らかだった。
しかし。今し方振るわれた剣技は尋常のものではない。
「アントワーヌ様……!居らっしゃっていたのですね!やはり、教父の仰られた通りでした。住まう無辜の民には更生の余地があるとしても、走狗に成り下がった衛兵共に慈悲をくれてやる理由などない、と」
「ええ。その通りです。アリアンデル様は、全てを見通しておられる。それに、彼女は重大なミスを犯しました」
アントワーヌと呼ばれた少年は、血沼に沈むアンナを見遣る。
そして、鎧の中を弄ると、無造作にメモ書きらしきものを1枚取り出した。
「ミーティングの内容はいつもメモしている、などと。情報統制の面においても、彼らはあまりにレベルが低い」
「……」
「ふむ。それでは、手筈通りに同胞達を展開しなさい」
「了解。太陽の導きが、我々を救うことを願っております」
「きっと、その祈りはかの王に届くことでしょう」
ナイフを仕舞うと、男は姿をくらました。
アントワーヌはメモを丁寧に折り畳みながら、惨劇を知らぬ正門を見つめる。
彼らは、影だ。
太陽の光によって、不可逆的に作り上げられる暗い場所だ。
刺客は、太陽を慕うが故に、太陽亡き場所に潜む。
耳に心地良い喧騒は、果たしてすぐに訪れた。
「な、なんだお前ら!」
まず1つ。
群衆の中から、とびきり大きな声が上がる。
それは、演説の声や楽器の音色では掻き消せない悲哀の雄叫び。
得てして、青い色とは広まり易いものだ。
彼らの平静は掻き乱され、段々と事態の深刻さを理解し始める。
そして、その声が上がるのは、時間の問題だった。
「逃げろ、太陽派だ!!!」
2つ。それは、衆愚を恐怖のどん底に叩き落とす鳴動。
平和を享受し、人間の死体など見たことがない腑抜け共は、群衆の中心に放り投げられた血と肉の張り付いた鎧を前にパニックへ陥る。
「やめて!あっちに子供が!」
「逃げろ!殺されるぞ!」
「衛兵!衛兵はどこにいるの!?」
悲鳴、悲鳴、悲鳴。
これこそ、太陽派が求めていたものだった。
何も、会場の中で暴れ、高貴な賓客を傷つける必要など全くない。
ただ、国籍問わない多くの無辜の民が被害にあったというだけで、アズールは糾弾の対象となる。
きっと、太陽派に対するマークも深まっていくことだろう。
しかし、それがどうしたのだろうか?
神命を帯びた人々とは、得てして社会に疎まれ、自らを正しいと誤認しているマジョリティに迫害されるものなのである。
これは、約束の国を現世に具現化するという神務における、一過性の苦しみに過ぎないのだ。
「殺せ!老若男女問わず、殺すのだ!!!」
不意に、ナイフを掲げる女の声が辺りに響き渡った。
誰もが、その暴力的な宣言を耳にしただろう。
パニックは深まっていく。悲鳴は怒声に代わり、生存欲求と慈愛、狂気が人間という人間を支配する。
アントワーヌはそれを、恍惚とした表情で見つめていた。
当たり前のことを当たり前だと信じきっている人々が、非日常に叩き落とされ、怒りの中で消えていく。
そう、これこそが。この、混乱こそが。
門の脇を固める2人を失い、人数でも実力でも大きな差をつけられた衛兵達が、命に頓着のない十数名の狂信者によって次々と切り刻まれていく。
「アドルテラーレ共!死ね!!!」
「こ、の、狂信者がッ!」
「殺せ!殺し尽くせ!誰1人として逃すな!」
ここは、正門だ。人目も多く、隠密行動は難しい。
しかし、これ程までに入り乱れれば、目立つものも目立たなくなってしまう。
人間の輪郭も、感情の形状も、全てが曖昧になっていく中、金切り声だけが鮮明なイメージを保っていた。
鉄の香りが充満し、頭が、腕が、内臓が、飛び交う。
死体は破裂し、沸騰する温度によって甚大な火傷が広がっていく。
その惨憺たる光景を前にして、成功を確信した……刹那。
「ねー、君達。何をやってるの?ここは、年に1回しかないおめでたい祭典の正門なんだよ?」
あり得ない、と感じる。
その声は、無数に絡み合う叫び声の中にあっても尚、カリスマ的な音色でもって、くっきりと人々の前に立ち現れていた。
不気味なペンダントをかけた刺客も、刃を弾く鎧を身につけた衛兵も、一般人も、問わず声の出所に眼を向ける。
「アリア、悲しいなぁ。こんなことしたら、折角楽しいはずの1日が台無しになっちゃうよ?」
「貴様……」
ローブの男が、衛兵に突き刺したナイフを引き抜き、構えた。
その視線は、キョトンとした表情の女へ向けられている。
アリアと自称する女。紺と白を基調にした華美にして機能的な衣装。
間違いない。
アリア=ベルゼブルだ。
「逃、げろ……アリアちゃん!近づい、ガハッ」
「貴様、何と言った?我々を愚弄しているのか?」
「愚弄?うーん、というよりはね。良くないよ、って言ってるだけだよ」
静まり返った群れの中で、明朗なアリアの言葉が響き渡る。
「さっきも言ったけど、今日はお祝いの日でしょ?なのに、こんなことしちゃダメだよ。折角、私もライブで盛り上げたのにさ。まぁ、お祝いの日だからこそ殺し合うってのは、演出としてかなりルナティックだけど……」
「……」
「演出が、盛り上がりを台無しにしちゃ、意味ないよね。そんなのルナティックじゃない、そうでしょ?」
ね?と。
彼女ははにかむ。
しかし、そんな説得が通じれば、元より彼らは虐殺など引き起こしてはいまい。
議論に値しないと見るや、彼が動くのは早かった。
「わわっ」
向かい合っていた男が彼女に飛びかかり、ナイフを振り下ろす。
そして、首筋に刃が届くというその時、耳に響くような金属音が響いた。
短剣が宙を舞う。
「ぐっ……」
男は手首を押さえ、腹を抱えながら片膝を付いた。
「ブリス、正気か?相手は取るに足らん女だぞ?」
「……ふぅ、はっ」
どうやら、得物を弾き飛ばされたらしい。
しかも、口端から流れ出る唾液を抑え込めていない辺り、鳩尾に手痛い反撃を喰らったようだ。
余裕を崩さないアリアの手には、1本のマイクが握られている。
「ダメだよ〜人にナイフを向けたら危ないんだよ?それに、私はアイドルなんだから!傷付いたら大変でしょ?」
動揺が広がる。
眼にも止まらぬ速さで跳躍した刺客の攻撃を、的確に弾いただと?
ならば、2人では?3人では?4人では?
すぐさま声を上げたのは、中央で赤子の腹を捌き、尚も命乞いをする婦人の首を握り潰した無名の女だった。
「殺せ!殺せ!同胞が傷つけられたのだぞ!こいつも、世界連合の犬だ!殺せば、大いに世界を震撼させるだろう!」
「殺せ!」
「殺せ!」
「殺せ!」
あらゆる殺意が、彼女に対して向けられる。
それでもアリアは、至って笑顔で罵声を受け止め。
群衆の向こう側に現れた、誰かを見つめていた。
「これは、いけないね。世界で最も有名なアイドルに対してそのような言い草とは、お里が知れるというものさ」
「何……?」
「やぁ。やたら騒がしいと思ってね。来てみたのだが」
車椅子に座った女は、困ったような表情を浮かべて、周囲を見まわした。
果たしてここは、戦場だっただろうか。
いや、ある意味でそのような場所だったのだろう。
少なくとも、それは軍人ではない無辜の市民に犠牲が出る程、悲惨な戦場だ。
「このような行為は、あまり褒められたことではないね、太陽派の諸君。単なる正面突破ならぬ裏面突破はあり得ないだろうと睨んではいたが、よもやこちらで荒らし回るのが本命だとは。誇るといい!かつて、猛将と謳われた本官から一本取ったのだからね」
「シルバー=ゼーランディア……!ラグナルの病巣が自ら顔を出すとは、命を差し出し、太陽に捧げる覚悟ができたということか?」
「ハハ!何を言う?本官が、君達に首を捧げるわけがないだろう?それは、恐ろしい希望的観測というものだよ」
「貴様、一度ならず二度までも……」
4名か、5名か。
入り乱れる人々を突き飛ばしながら、シルバーに対して明確な敵意を持つ彼らがナイフやメイスを片手に迫り来る。
「記憶の改竄かい?君達が本官に煮湯を飲まされたのは、一度どころじゃないだろう?しかし、本当にゴキブリのような存在だね、君達は。第三議長殿との追いかけっこは順調なのかな」
「……ハッ!貴様、どうやら既に我々を咎めたつもりでいるようだが……」
男は、近くに居た青年を引き摺り出し、その首にナイフを当てた。
「ひっ!?た、たす」
「黙れッ!今、ここで首を差し出せば、この場の一般人は全員生きて帰そう。どうだ?貴様の汚らしい首で、数十人の市民を救えるのだ。悪い取引では——」
「殺せばいい」
「……何?」
首から血を流す青年は、涙を流しながら必死に眼で訴える。
しかし、シルバーの眼は至って寒々しいものだった。
それが、彼女にとって何を意味しているのかは誰にも分からない。
「聞こえなかったか?殺せばいいと言っている。本官は、敵を殲滅するためなら、国民1人、村1つ、犠牲にしてきた。褒められたことではないが、軍人とは、戦争とは、そういうものだ。国に仕えているのなら、少なくともその命令が正しいと考えている内、躊躇することがあってはならない」
「……」
「ただし。そういう手を使うのは、犠牲に対するリターンが釣り合うと確信している時だけだ。そして——」
「……」
「絶対に、失敗しない。犠牲者の血で穢れた敵を逃すことは、絶対にない。繰り返すが、殺したければ殺せばいい。この場の全員が死ぬまで、待ってやっても構わない。ただし、その後、犠牲になるのは貴様らだ。情報を聞き出し、太陽派を殲滅する。なに、心配はするな。拷問は得意分野だ。同じ轍は踏まないさ」
シルバーは、張り付いた笑顔を浮かべたまま、そう語った。
剣を抜いているわけでもない。
立ち上がれるわけでもない。
ただ、そこに座っているだけで、言葉が現実のものになってしまうのではないかと思わせる程の威圧感を感じる。
「さぁ、選ぶといい。裏門に人員を割いているのだろう?少数精鋭を自負してこの場に来たのだろうが、どうやら二手に分かれるという作戦そのものが悪手であることに気づかなかったようだね」
「貴様ッ……!」
「貴様と言うばかりでは分からないじゃないか。君達が仕事を始めた瞬間、手が滑って邪魔をしてしまったらどうするつもりだ?それと、良いことを教えてあげよう。裏門で待ち構えているのは君達以上の精鋭でね。これだけの時間があれば——」
遠く。数十m向こうだろうか。
声が響いてくる。
青年の声。低い女声。高めの女声。
いずれにしても、それが彼女の味方であることは火を見るよりも明らかだった。
「まさか、あ、あり得ない……!」
「あり得ないとしても、現実で起きているだろう?君達の足止めは失敗した。いや、この場合は痛み分けといったところかな。少なからず犠牲は出ているからね」
「どうされますか、指揮官。このままでは」
「逃げるなら見逃してあげよう。さぁ、第3の選択肢だ。選ぶと良い」
忌々しげな眼でシルバーを見つめるローブの男。
刃を震わせ、悲しみと怒りに暮れる刺客達。
2つに1つ。破滅か逃亡かを突きつけられ。
——何を迷っているんだい?撤退しなさい、アロイス。
あの、耳に残る声が脳内に響き渡った。
「そ、その声は……」
「……アリアンデル」
——あぁ、数日ぶりだね、シルバー=ゼーランディア君。どうかな、このエイダンによる心ばかりのサプライズは。喜んでもらえたら嬉しいのだが……。
「相変わらず、悪趣味なものだね。信者を犠牲にした襲撃を、サプライズだと言うのかい?」
シルバーの表情は険しい。
当然のことだ。彼女は、エイダン=アリアンデルという男を、心底嫌っている。
——いやはや、そう嫌われるようなことをした覚えはないんだけどね。悲しいことだが、さて。アロイス君。
「は、はい!教父様!」
——重ねて言うよ?撤退するんだ。
「し、しかし……」
——いけない、いけないね。君は、方便と本音を聞き分ける力を身につけなければ。彼女が口にした、痛み分けという言葉を真実だと思うのかい?
「……」
シルバーは、エイダンの言葉を前に表情を歪めることはない。
——犠牲者が出た。その時点で、数は1人も10人も変わりはしない。重要なのは、誰が、どこで、誰に対して、行動したかということ。その点、今日のサプライズは、式典に華を添えるこれ以上ないパフォーマンスになったことだろう!
「承知、致しました。それでは、撤退を」
男が片手をあげ、闇に紛れる。
まるで影の中に溶け込む煙のように、彼らは次々と輪郭をぼかしていった。
——あぁ、それで良いんだ。学べば良い。そして、より優れた真人に育つのだ。無知と欠陥は、伸び代の証さ。
「……」
——それでは、諸君。お騒がせをしてすまないね。良い、建国記念日を送りたまえ。
どの口が、と文句をつける前に。
脳髄に響く声の主人は、泡のように消えていった。
シルバーは息を吐く。
そして、懐に帯びた刀の柄から手を離した。
聞き覚えのある声、聞き覚えのない声が近づいてくる。
トラブルは去った、と言っても良いだろう。
「シルバー!無事だっ、た……か……」
「ハハ!うん、君達にどうやら助けられたようだね」
惨状を目の当たりにし、言葉を失う彼らの前で、シルバーはいつも通りの笑みを浮かべた。
「さて、それではもう少し働いてもらおうかな。今すぐに救護班を呼んできてくれ。その後、エステベス将軍の元へ報告に向かおうじゃないか」
うめき声、鳴き声、罵声、安堵の声。
感情は十人十色、出力の方向性も三者三様。
ただ、少なくとも、その場に満ちているのが死の色であることは、揺るがしようのない事実であった。
きっと、また誰かの演説が終わったのだろう。
喝采の音が響き渡り、一際豪華なオーケストラの演奏が始まる。
美しい音色は鉄の香りを乗せて、晴れ渡る空へと吸い込まれていった。
お疲れ様でした。
思ったより、長くなってしまいましたね……。
筆が乗った結果だと考えていただければ嬉しいです。
良いことですからね。そう、良いこと。
さて、今回は、シルバーさんの他に意外な人物が再登場しました。
強靭!無敵!最強!なアイドルこと、アリアちゃんです。
彼女は本当に肝が据わっていて、虐殺現場の前でも笑顔を絶やさない胆力を持ち合わせています。
流石は、アイドル界のトップランカー。
あまつさえ、マイク1本で刺客を撃退してしまうとは、こやつ何者。
元軍人のシルバーさんが強いのは当然として、実力がないと頂点には立てない。
それがアイドル界なのでしょう。
我がことながら、殺伐とした世界ですね。
最後になりますが、感想やレビューなどいただけると本当に嬉しいです。
執筆の励みになりますし、1つ1つじっくりと読まさせていただきます。
それでは、りんどうでした。