プロローグ
2020年6月3日、僕が家に帰ると理華子が自殺していた。
僕より二つ年上の彼女は、常に独創的で、彼女の話には人を納得される何かがあった。そんな僕にはない何かを持つ理華子の瞳に、僕はいつもどこか惹かれていた。
あの日僕が家に帰ると、そこには彼女らしい綺麗な紅色に包まれた、死体があった。彼女は遺書を残さなかったが、その代わりに日記から破いたであろう数ページの日録を残した。
この日録が、僕宛であるか、またはみんな宛であるのかはわからない。しかし僕は、彼女が毎度日録の最後に残す、”私の日記を見ているみんなに”から始まる文章が、明らかに僕宛でない事から、これらはみんな宛であると判断した。
これらの理由から、僕は彼女の日記をみんなに共有しようと思う。
そうやって、彼女をただ忘れるのではなく、向き合い、彼女を知ろうと思う。そうすることで僕にはない何かを知ることができるかもしれないから。
これから、日録を書くうえで特定の知名や人物名は、それらの方々に迷惑がかからないよう、内容に差し支えない程度に変換している。この事に了承していただけると幸いだ。ただ、彼女の名前だけはどうしても変えたくなかったため、これだけははっきりと記す事にする。