俺、人馬一体の心を得る
「さてラビト、講義はまだ始まったばかりだがここで1つ依頼がある。それの依頼で実戦経験をまずつもうじゃないか」
急に始まる依頼。まだ図鑑はスライムのところしか読んでない。これがなかなか面白くてスライムのページを熟読してしまった。いきなり依頼と言われても。
どんな依頼だろうか。
「依頼ですか。どんな依頼なんですか」
グラティアスは1枚の紙を取り出す。
「国王陛下から君への初依頼だよ。スライムを一体捕まえて欲しい。なんでも王女様がスライムをペットにしたいらしい。」
魔物をペットにしたいとはぶっとんでるな王女様。
でもスライムも最弱といわれているが魔物だ。
怪我なんかしたら大変だ。
「大丈夫なんですかそれ、魔物ですよね」
グラディアスは困り顔で答える。
「まあスライムは魔物の中でも比較的穏やかな魔物だからね、ただやっぱり個体差はあってそこで君の出番というわけだ。」
俺の出番なのか。
初任務だから簡単な依頼だからなのか。
それとも別の理由があるのか。
「冒険者ギルドへの依頼じゃだめなんですか。国王陛下からの依頼なら報酬よさそうなのに」
別におくしてるとかじゃない。決して。
うーん。いまいちぴんとこない。もうひとこえ。
「冒険者ギルドではどのスライムがいいか判断がつかないんだ、つまり、君のメモリーポーターの力で最適なスライムを選び王女の元へ運んでほしいということだね」
なるほど。スライムの気持ちをたしかめて、優しい子を連れてこいと。できるのだろうか。まあやるしかないのだが。初任務で失敗はしたくない。グラディアスが受けたということはできるのだろう。
「わかりました。やってみます。」
やらねば始まらない。
ポーター初依頼。がんばりましょう。
早速準備と作戦を考えねば。
「どこに行けばスライムと会えるんですか」
グラディアスは少し考えたあと答える。
「どこにでもいるが、今回はエルデンウッドという森林に行こう。シルヴァン王国からそんなに遠くなく、あそこの森ならそんなに強い魔物もいない。」
初めて知ったがこの国はシルヴァン王国というらしい。
たしか国王陛下の名前がレオンハート・シルヴァンディールだっけ。なるほどなるほど。
そうと決まれば早速と行きたいところだけど、持ち物ってなにがいるんだろう。そういえば図鑑に冒険の手引きみたいなのが書いてあったような。
あった、最初のページだ。
冒険の際の必要な道具リスト:
冒険者のギア:
剣や槍、弓矢などの武器
盾や鎧などの防具
冒険者用のバックパック
剥ぎ取り用ナイフ
生存道具:
食料と水
睡眠袋やテント
火打石や松明
医療用具:
包帯や消毒薬
薬草やポーション
簡易な治療道具
探索道具:
地図やコンパス
探知器や虫眼鏡
筆記用具と冒険日誌
魔法アイテム:
魔法の巻物や呪文書
ポーションやエーテル結晶
魔法の杖や宝珠
交渉用具:
貴重な品々やトレードアイテム
通訳用の辞書や符号手話の本
照明:
灯りや蝋燭
魔法のランプや光る宝石
道具の手入れ用具:
砥石や油、修理キット
道具の手入れに使う布やブラシ
特殊道具:
水中呼吸の薬や耳栓
高所移動用の鉤縄や登山具
動物との交流のための特殊なおやつや装備
めちゃくちゃ必要だった。
どうしよう。お金ない。ほんとにこんなに必要だろうか。これがフルセットだとして、たぶん必要ないものもあるはず。記号手話の本とか。省けるものは省いていこう。頭を悩ませてるのを見てグラディアスがクククと笑う。
「今回はすぐに帰ってくる予定だからそんなに用意しなくて大丈夫だよ。そうだな、その中で言えばギアくらいで十分だろう。私の昔使っていた剣をあげるよ。移動は馬で行く。」
ドラゴンでいかないのか、ドラゴン乗ってみたかった。
顔に出ていたのかさらにグラディアスが笑う。
「今回はスライム達が逃げないように馬だよ。またドラゴンは乗せてあげるよ」
やったぜ。言質とったからな。
しかし馬ものったことない。乗れるだろうか。
「移動方法は色々あるが最初は馬になれておくといい。基本的には馬に任せれば大丈夫だ」
賢いのねお馬さん。
「それに君にはメモリアポーターがある。その練習も兼ねて馬と対話してみるといい。」
そういえばそうだった。メモリアポーター便利アイテムだ。これで馬と仲良くなれるかもしれない。
「これは国宝級アイテムだからね、無くしないように気をつけるんだよ」
そういいながらメモリアポーターを渡してくる。
それを受け取り剣と共に腰ベルトにさした。
なくさないようにしなくては。
なくしたらどうなるかわかったものじゃない。
とりあえず準備は出来た。
さあ行ってみよう。
ということで来ました馬屋。
グラティアスは既に馬に乗り準備している。
好きな馬を選べと言われた。
ふむふむ、目の前には3頭の馬。
とりあえず念じてみよう。
馬さん馬さんのせてくれる馬いませんか。
すると微かにメモリアポーターが光る。
それと同時になんとなく馬の感情を感じる。
左の馬はなんとなく嫌そう。
真ん中の馬は良さそう。
右の馬は......。
すごく乗ってほしそう。
じゃあ右の馬にしよう。
「君にお願いします」
そういうとブルンと1回鳴いた。
なんだか嬉しそうである。
それをみていたグラティアスがほう、と感心した。
「ほんとに感情がわかるんだね。たしかに左の馬はあまり人を乗せたがらないんだ、真ん中は人馴れしてるから平気だけど、右の馬が1番人を乗せて走るのが好きみたいなんだ」
ちゃんとメモリアポーターが機能したみたいだ。
すこしうれしくなって馬の首をなでた。
「よろしくお願いします」
馬にそう言うと、跨った。
視線が高い。ちょっとこわい。でも馬に任せよう。
そう思っていると。
(大丈夫、任せて)
なんとなくそんな気持ちを感じた。
言葉で聞いた訳では無いがなんとなくってやつ。
もう少しメモリアポーターが使いこなせたら話すらできそう。行きの道中ためしてみよう。
こうして俺とグラディアスはエルデンウッドを目指し馬を進めたのだった。
馬を進めて少したった頃。
ちょっと慣れてきた。常歩から速歩くらい。いまだ馬に任せっきりで俺は手綱を掴んでるだけである。グラティアスは俺たちを気にしながら少しづつ進んでいく。
その間もメモリアポーターを使って馬と会話をしている。会話とはいえないが感情は何となく伝わってくる。
その時だった。一瞬で視界が変わる。
全力で走るこの馬とそれに乗る騎士。
数多もの戦場を駆け抜けた日々である。
時には攻め、時には逃げ、どんな時もこの馬と一緒にいた騎士の記憶、いや、これはこの馬の記憶か。
銀色のたてがみを風に流し颯爽と走る。
名はシルバーメイン。この馬と騎士の物語を俺は体験している。
そしてすぐに現実に引き戻される。
これが聞いていた記憶の共有。
今なら人馬一体でこのシルバーメインと走っていける気がした。
今なら聞こえる。シルバーメインの声が。
(さあ、走ろう、一緒に)
何かを感じ取ったのだろう。グラディアスが一気に加速した。今までの比にならないくらいの速度だ。
けれど、ついていける。むしろ追い越せそうだ。
「はっ 」
掛け声と共に俺も一気に加速した。
これがシルバーメインの本気、視界が光のように抜けていく。けれど不思議と怖くない、シルバーメインの気持ちは手に取るようにわかる。
(楽しい)
不思議と笑みがこぼれる。
気づけば目的地まで来ていた。
湖の畔で馬を止める。
「ありがとうございます。シルバーメイン、君のおかげで馬には乗れそうだ」
(帰りも任せて)
シルバーメインの首を撫でる。
気持ちよさそうに顔を近づけてきた。
馬、かわいい。
「それがメモリアポーターの力だね。素晴らしいな。シルバーメインは戦場で引き取った馬なんだ。彼の主は戦場で散ってしまったが、どうやら次の主を見つけらたらしい。どうだろう、君の相棒として育ててみないか」
グラティアスが感心している。
これが、俺の力らしい。
シルバーメイン。新しい俺の相棒。
どこへでも行けそうな気がする。
前の主のように全力が出せるように乗りこなしてあげられるように頑張らねば。
「よろしく、シルバーメイン」
(よろしく、あるじ)
こうして俺は新しい相棒に出会うのだった。
そしてそれと同時に流れる言葉があった。
〈人馬一体の心を記憶〉
ある種の能力なのかもしれない。
それを心に刻みスライムを探すのだった。
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