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俺、国王様に会う

目の前に降りてきたのは1枚の紙。

読んでみるとこれは、契約書だろうか。

弱みに付け込んで変な契約をさせられるのだろうか。

やっぱり怖い人たちだったのかもしれない。

これから変な契約をさせられるのかもしれない。

そんな事を思っているとジョーカーが言う。


「そいつはうちに所属する契約書だ。お前さん、ポーターになれ。その方がお前を保護する大義名分になるし身元の保証してやれる。」


どうやらこれは俺の為のものらしい。

保護してもらえるし身元保証もしてもらえる、その代わり働けと言うことか。

シンプルでわかりやすい。とりあえずポーターになれば今の状況は切り抜けられる。迷うことないじゃないか。

そういえばポーターってなんだっけ。グラディアスはポーターなんだよな。てことは運び屋だ。ここまでしかわからないから聞いてみるしかない。


「それはありがたいのですが、ポーターって具体的にはなにをするんですか」


この質問にはグラディアスが答えてくれた。


「ポーターは簡単に言うと運び屋さ。手紙や物資なんかを目的地に運ぶ仕事だよ。」


なんだ簡単そうじゃない。俺でもできそう。

そんなことを思っていると、ジョーカーが不敵な笑みをうかべる。眼光は鋭い。これは心を読まれてるやつだ。


「簡単そう、だろ。だがその認識は間違いだ。たしかに城下町内なんかの手紙は楽だ。だが外はどうだ。外にはうようよ魔物やら盗賊やらがいる。お前、魔物倒しながら荷物運びできるか。つまりはそれなりに戦闘技術と体力が必要なんだよ。ポーターってのは。」


たしかに言われてみればそうかもしれない。

以前じいちゃんは村は結界魔法に守られてるといっていた。だから魔物に出会うということはなかった。

けれど、外には魔物が現れる。あの時のドラゴンみたいなのが出てこられたら正直死ぬしかない。ドラゴンが頻繁にでるかは知らないが正直怖い。

認識が完全に誤っていた。危ない。せっかく助かった命を簡単に散らすところだった。


ジョーカーは俺の表情を見て満足したように頷く。


「そういうことだ。馬車なんかを使う商人達は護衛を何人か雇ったりするしな。それくらい外に出るってのは危険な事なんだよ。だが安心しろ、お前はまだひよっこだ、グラディアスの元で最初は学ぶといい。グラディアス、しっかり育ててやれ。」


グラディアスはこうなるとわかっていたのか納得しているようだ。俺としても知ってる人がそばに居るのはありがたい。早く1人前にならねば。やるしかないのだ。

ジョーカーは思い出したように話を続ける。


「そういやあグラディアス、例の件の報告まだしてないだろう、その坊主も連れていくぞ」


どこかに報告にいくらしい、俺には選択権がないので素直についていくしかない。どこにいくのだろう。

というかここはどこなのだろう。


「どこにいくんですか」


俺の質問に楽しげに答えたのはジョーカーだった。


「国王のとこだ」


なんだって。国王様のところ。

王国の王様のところ。礼儀とかよくわからない。

いっていいものだろうか。


「安心しろ。あのおっさんは礼儀とか気にしねえ」


ジョーカーはどうやら知り合いらしい。

いや国王をおっさん呼ばわりってもしかしてジョーカーも実は大物なのかもしれない。と、おもったのだが。


「国王をおっさん呼ばわりするのはジョーカーさんだけですよ。だめですよ国王様なのですから、そんな呼び方しては。」


グラディアスに怒られるジョーカー。

ますますわからない。本当に何者なのだろう。


「いいじゃねえか、別に。おっさんとは飲み仲間なんだから知らねえ仲じゃねえよ」


国王と飲み仲間のジョーカー。いや、飲み仲間とかそんなフランクなのか国王様。どこで飲んでるんだろう。お忍びなのだろうか。とにかく、その国王様に会いにいくということらしい。気のいいおっさんであることを祈ろう。なるべく失礼のないように。


「んじゃいくか、準備しろ。グラディアス、ラビト、俺は先に謁見許可をとってくらあ」


そういうとジョーカーは扉をでていった。

嵐のような人だな、この契約書どうすればいいんだ。

とりあえずしまっておいていいのかな。

そんな風に思いながら契約書に目を落としていると、グラディアスが側へきた。


「いろいろばたばたして申し訳ない。とりあえずその契約書は大切に持っておいてくれ。たぶんあとで使うことになる。それと詳しいことはまた落ち着いたら話すが今は謁見に向かおう。着いてきてくれ。」


言われるままグラディアスについていく。

ここは二階建ての木造建築物らしい。

階段から降りると広いホールに出た。

地図や掲示板が掲げられていて、バーでは、様々な人が休息し、仕事の成功や失敗について語り合っている。情報交換の場として、様々な種族の者たちが集まり、異なる経験や知識が共有されているのかとても賑やかな場所だ。


「グラディアスさんおつかれっすー!」


「グラちゃんまた一緒に飲みましょー!」


「グラディアス先輩相談乗ってくださーい」


「グラディアスまた仕事しようぜー!」


どうやらグラディアスは人望があるらしい。

色んな人が声をかけてくる。こういう時ってきまずいよね。どんな顔をして後ろを着いていけばいいのだろうか。俺は影、俺は影。なるべく気配を消してついていく。


「みんなまた今度話そう!」


グラディアスは声に答えながら出口へ向かうのだった。


出口を出るとそこには美しい街並みが広がっていた。

街は見とれてしまい歩くのを忘れるほど美しい。

堂々とそびえる城壁に囲まれ、風格ある門があり、古き良き時代の趣きが漂う。

城壁の上には見張り台があり、鎧兜を身にまとった衛兵が市街を見下ろしている。

石畳の小道が城門から放射状に広がり、商人たちや街人たちが行き交う。


街の広場には、立派な石造りの噴水があり、その周りには古びた木のベンチが配置されており、鮮やかな花々が広場を彩り、街の中心に位置する城からの影が広がっていた。


建物は石造りで統一され、美しい彫刻や紋章が施されており、アーチ型の窓からは優雅な光が差し込み、壁面には旗が掲げられている。

商店や宿屋は石の柱とアーチで装飾され、ドアは金属製の飾りで飾られていた。


これが初めて見た街並み。

その壮大さに感動をしてしまう。

大森林しかみてこなかった俺は今日初めて街並みというものをみている。

人の多さ、建物の大きさ、すべて村とは比較にならないほどの壮大さ。そしてその中央にあるのが、目的地である城なのだろう。近づくほどその大きさはスケールアップしていく。

これがこの国の要なのだと理解出来る。


巨大な城は、天空にそびえ立ち、壮麗な姿を見る者の心を圧倒する。その城壁は堅固で、巨大な石造りの塔が不動の存在感を漂わせている。城門は重厚で、守り手の騎士や兵士たちが厳かな表情で見張りをしている。

巨大な城は堂々とした美しさを誇り、その姿はまさに王国の誇りを示すような存在となっている。


絵本や小説でしか観られなかった場所に今俺はいる。

城内に入ると、広大な中庭が広がり、芝生や美しい花壇が配置されている。高い塔からは旗が揺れ、城の誇りを象徴している。


城の最上層には、王の寝室があるのだろうか、豪奢なベッドと絢爛な調度品が配置されていることだろう。その部屋からは、城下と広大な領土を見渡すことができ、王はその高みから国を統べているのだろう。


何が言いたいかというととにかくすごい。

今日1日でおなかいっぱいの経験をしている気がする。

ドラゴンに襲われ目が覚めたら城に向かっていた。

それも国王に会うというイベントを残している。

グラディアスがいなかったら心細すぎる。

俺は離れまいとグラディアスについていくのだった。


門番と話をすると中から案内の人がでてきた。

そのひとについていく。絨毯がふかふかだ。

壁には高そうな絵画や鎧が飾られている。

少し歩くとジョーカーがいた。


「おう、待ってたぜ。国王様はこの中だ、気い引き締めていくぞ」


流石のジョーカーも城内ではおっさんといわないらしい。その辺は弁えてる常識人なのかもしれない。

切り替えって大事だよね。

国王に会うというから広い玉座のある場所を想像してたけど普通の部屋だった。

護衛が扉を開き緊張しながらグラディアスとジョーカーの後ろを着いていく。


中に入ると国王がおり、その後ろに護衛が2人。

王の護衛は重厚な甲冑に身を包み、その兜からは雄々しい羽根飾りが付いている。2人の鎧は金と銀で彩られ、太陽の光を受けて輝き、王の側に立つ誇り高さを象徴していました。手には頑丈そうな盾と鋭そうな剣を携え、威風堂々とした構えで立っている。かっこいい。


そして国王は、冷厳なまなざしで、その座に君臨していた。彼の顔には深いしわが刻まれ、知恵と経験の証となっていました。厳粛な玉座に座り、身にまとったローブは深い紫色で、王の威厳を際立たせている。

国王と護衛だけでも絵になりそうな雰囲気だ。


国王の前に行くとグラディアスとジョーカーは膝まづく。それにならって俺も膝まづいた。

勝手に話してはいけないのだろうか、静寂が流れる。

それも長くはなかった。国王が静かに話し始めた。


「おもてをあげよ、報告せよ」


それに続き顔を上げジョーカーが話す。


「は、昨日コリツ村に向かわせたグラディアスが戻りました。報告によると、コリツ村は壊滅、クリスタルも奪われてしまったもよう。村人もまとめて葬ったところを見るとコリツ村出身の人物の仕業かもしれません。」


報告を聞きながら改めて村がなくなってしまったのだなと認識する。悲しみが襲ってくるがここで泣く訳にはいかない。国王の前なのだ、今はただじっと耐えるしかない。それにしてもコリツ村の住人の仕業といった。

人口も少ない村だ、いなくなった人間がいたら分かるはずだがそんな記憶は無い。あとでグラディアスに聞いてみよう。


それを聞き国王は目を閉じる。


「なるほどの。なんということだ、クリスタルは奪われ村は壊滅。国にとって大きな損害であるな。対策を立てねばなるまい。して、その者は何者であるか」


刺さるような視線だ。見定めているのだろうか、答えるべきだろうか。

そう思っているとジョーカーが答えた。


「この者はラビト、コリツ村で唯一の生き残りです。村の襲撃を目撃しております。このラビトの処遇をどうすべきか国王陛下に委ねたく連れてまいりました。」


さすがにこの言葉に国王も驚いたようだ。

少し目を開いた。


「なんと、生き残りがいたとは。村のことは残念だ、しかし、よくぞ生き残ったラビトよ。おぬしのおかげで少し希望が見えそうだ。」


なんだかよくわからないが、褒められた。

褒められたけど意味深な言葉が残った。

希望がみえる、とは。

ほんとにあの村、なにかものすごい村らしい。

俺村人なのに何も知らなかったな。

ジョーカーはさらに続ける。


「そこで保護を目的にポーターをさせようと考えております。許可をいただきたく」


国王は目を閉じ考える。

少しおいて


「なるほどの、よかろう。ラビトよ、ポーターとして活動をするが良い。そして我が国に貢献せよ。コリツ村の生き残りとして誇りを持ち励むのだ」


生き残りという言葉が心に重くのしかかる。

ここから俺は一人で生きていかねばならない。

これははじまりなのだろう。

俺はしっかりと自分の口で返事をしようと思った。

余計な言葉はいらない。ただ一言でいい。

すべての思いをのせて。


「はい」


国王は少し柔らかい表情になると、大きく一度頷くのだった。


「ではこの場で簡略ではあるが、ポーターの義を行うとしよう。ジョーカー、そしてグラディアスよ、よいな。お前たちの名を持って、ラビトをポーターとする」


ジョーカーとグラディアスはそれぞれ返事をする。


「「御意」」


なるほど、ポーターになるにはそれなりに大変なことなのだろう。察するに推薦が必要で、国王の許可が必要らしい。

ポーターという仕事はそれほど重要な仕事なのかもしれない。安易に辞めることはできなそうだ。辞める気は無いけど。


「では、契約書とメモリアクリスタルを出すが良い」


国王の言葉で思い出したが契約書は俺が持っている。

これを出せばいいのだろうか。

そう思い先程しまった契約書を取り出す。

でもメモリアクリスタルはもってない。

と思っていたらグラティアスが持っていた。

俺にみせたクリスタルがはめてある棒だ。

その両方を護衛が回収し、国王へと渡す。


国王は書類に目を通すと立ち上がり、俺の前まで来た。

自然と頭が下がる。


「このメモリアクリスタルは本来はコリツ村に返すものであったがこうなってはお主に託すしかあるまい。汝、ラビトは今からこれより、ジョーカー、グラディアス2名の推奨によりポーターとし、これを我、レオンハート・シルヴァンディールが認める。」


正式に認められたらしい。

もしかしてポーターってなるのめちゃくちゃ難しいのでは。推奨と国王の許可。さしずめ国家資格というところだろうか。それほど重要な仕事なのかもしれない。

これからがんばらないと。まずはグラディアスの元で修行だ。早く1人前になるぞ。


国王はさらに続けた。


「ラビト、これからおぬしはメモリーポーターと名乗るが良い。」


なんか二つ名ついた。

メモリーポーター。なんだろうそれ。何を運べというのか。メモリー、記憶とかそんな意味だったっけ。後で聞いてみよう。

なんにせよ、メモリーポーターとしてやっていくことになった。やることはまだよくわからないけど。


「これにてポーターの義を完了とする」


こうして、ポーターの義はあっさりと終わるのだった。

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