俺、クリスタルについて知る
扉が突然開かれ、今度は2人来た。
1人はグラディアス、もうひとりは誰だろう。
グラィアスより背が高くガッチリでみるからにマッチョで髭がダンディなおじ様。めっちゃ強そう。眼力がやばい。ワイシャツは胸筋で張り裂けそうである。
指1本で俺なんてやられそう。そんなオーラのひとだった。
「おう、坊主。身体の方はどうだ。悪いが少し邪魔するぜ。」
こわい。野獣を前にした草食動物はこんな気持ちだろうか。とにかく圧がすごい。
でもなんだか安心できるというか、信用していいと俺の中の何かが伝えてる。
そんなことを考えながらグラディアスにヘルプの目線を送ると笑いをこらえている姿が目に入った。
あれ、楽しんでませんか。
「クックック。ジョーカーさん、そんなに凄んだらラビトがびっくりしちゃいますよ。ただでさえ顔こわいんだから。こちらはギルド長のジョーカーさんだ。」
ギルド長に目を戻すと気まずそうに頭をかいていた。
グラディアスは相変わらず笑いをこらえている。
「そ、そうか、すまん、ついな。坊主、悪く思わんでくれ」
悪い人では無いらしい。
ひとまず安心。
「いえ、大丈夫です」
とりあえず返事をしておく。
その流れが終わりジョーカーは真剣な顔に戻った。
「で、この坊主がコリツ村の生き残りか。おい坊主、何が起きたか理解してるか」
その問いに関しては完全にNOである。
だって狩りからもどったら村が焼け野原である。
分かりようがない。なんならドラゴンに追いかけられて死にかけたインパクトしかない 。しいていえばあの炎の中で見た人影がだろうか。あいつが村をやった張本人なのだろう。
「誰かに、襲われた。目的は、クリスタルかな。クリスタルの近くで炎の中に人影をみました。あと黒いドラゴン。」
状況を思い出しながら独り言のように答える。
正直それ以外はわからない。
それ以上の答えがでなさそうなのをみて、ジョーカーは話をを続ける。
「その通りだ。お前たちの村にあるクリスタルが狙われ、そして奪われた。ではそれが何故がわかるかな」
まったくわからない。
村の秘密は村長に教えられることなく村は崩壊した。
秘密という秘密はすべて闇の中ということだ。
黙っているとさらにジョーカーは続ける。
「お前たちの村は特殊でな、メモリアクリスタルというやつを管理している村だったんだ」
メモリアクリスタル。
あれか、村の真ん中に祀られてたクリスタル。
あれの事だろう。
「メモリアクリスタル」
「そうだ、メモリアクリスタルだ。あれは世界の記憶と知識が入っている超重要なアイテムだ。そしてあれを扱えるのはお前たちコリツ村の人間だけということだ。故に皆殺しにされた」
なるほど、あれがそんなとんでもアイテムだったとは。
てっきり祈る為のものだとばかりおもってた。
あれ、扱えるのは村の人間だけってことは、俺も扱えるのかな。そういえばさっきグラディアスが持ってたクリスタルもそうなのでは。
そう思い、グラディアスの方に目を向けた。
彼の目は正解と言っているかのように微笑んでいる。
それにしても、もうすこし情報がほしい。
「世界の記憶と知識。それってなんですか。」
その質問にはグラディアスが答える。
「君が先程読み取った記録みたいなものだよ。人の記憶だったりこの生きとし生けるものの記憶そして知識や感情、そういったものをこのクリスタルは吸収し保存しているんだ。」
なるほど、つまりそれを使うことで記憶や知識が手に入るということか。そんなの手に入れてどうなるというのだろうか。なんなら扱えるのは村の人だけなら、奪っても意味ないんじゃ。そんな考えをめぐらせていると
「奪っても意味なさそうだろう。だがそうではない。重要な機密情報も含まれるんだよ、それこそ国家機密から人間が知りえない情報とかな」
ジョーカーが答えてくれた。
人間が知りえない情報ってなんだ。
人間以外が知ってることってなんだろうか。
どういうことだろうか。
ふとを外を見ると白いドラゴンが静かに眠っていた。
ああなるほど、人間以外の生き物ってことか。
そんなことできるのかね。
「黒いドラゴンに襲われた時に安心して眠れってそういうことなのか」
あの咆哮はたぶんあの白いドラゴンの咆哮で、助かるから安心しろという事だったのか。
きっとドラゴンの感情を俺が読みとったのだろう。
どうやって。クリスタルなんか持ってたかな。
うーん。思い出せない。
俺の呟きにグラディアスが反応した。
「あの時と言うのは黒いドラゴンに襲われた時かな。そうか、彼女がそんなことを。さっきも言ったが彼女は、僕の相棒だったんだ。だが、奪われてしまった。」
どうやらあれはグラディアスの相棒だったらしい。
女の子だったんだあのドラゴン。
負の感情があったのは操られてる感じがしたからなのね。
納得である。
ジョーカーはまとめにはいる。
「まあそんな訳でクリスタルは奪われてしまった訳だ。村人を全員やったところをみるとあいつはコリツ村の人間かもしれねえ。あとお前が生かされた理由はわからん。で、これからの話だが」
そういうとジョーカーは書類を1枚とりだし、目の前にもってきた。