目覚めた俺、天井をみる
「村をやったのはあなたですか」
まずは、まずはこの確認だ。
敵だったら逃げないとやばい。
でももし敵だったとして、この質問はまずいかもしれない。記憶があることで消されるかもしれない。
選択ミスをしてしまったかもしれない。
そう思っていると、男はフッとわらった。
何わろてんねん。
「それはちがう。あれは僕じゃない。というか僕のこと覚えてないの」
違うらしい。
覚えてないのと聞かれても思い出せない。
うーん、と考えを頭にめぐらせていると
「覚えてないのか、じゃあこのクリスタルは覚えているかい、ラビト」
そういって俺の名前を言うと、クリスタルのはめ込まれた棒を俺に差し出してきた。
その瞬間、柔らかな光に包まれていく。
そして頭に映像が浮かんできた。
それは幼き日の俺とこの男だった。
村長と話しながら俺は男にベッタリだった。
外から来た人間。そしてとても強い。
白いドラゴンを従えた男。
この男はグラディアスだ。
ポーターというのをしているらしい。
ポーターというのがなんなのかわからないが、簡単に言えば運び屋らしい。
剣を教えてもらったり、魔法を見せてもらったりと男の子ならワクワクすることを沢山教えてくれた人だ。
「グラディアス」
俺は思い出した。
めったに人が来ない村で突然白いドラゴンにのって現れた男。なぜ現れたのかは理由はわからないがとてもかっこよかった記憶がある。
「やっと思い出したか。本当にラビト、君が生きててよかった。そして、村を助けられず申し訳ない」
悲しそうな顔で謝るグラディアス。
なんで彼が謝るのかはさておき、村はどうなったのだろうか。あの感じではもう、全滅だろうが改めて聞いておく必要がある。
意を決して俺は口を開いた。
「あの、村はどうなったんですか」
その言葉にグラディアスは目を伏せる。
言葉にはしていないがそれが答えだろう。
やっぱりだめだったか、そうなるとこれからどうするべきだろうか。
帰るところはもうない。かといって頼れる人はいない。
グラディアスは知ってはいるがそこまで頼ることは出来ない。不安が一気に襲ってくる。
これからどうしようか。一難去ってまた一難。
悲しむ余裕はまだないのである。
そんな事を考えているとグラディアスはお茶を渡してくれた。
「これからのことを話さなければならない、そして君は真実を知る必要がある。少しだけあとで付き合ってもらえるかい。」
目は真剣である。
真実とはなんだろうか。とにかくその話で俺の行く末は決まるわけだ。こうなってしまったらもうままよ。
俺は一気にお茶を飲み干した。あつい。
ゆっくり飲めばよかった。
「わかりました」
ちょっとだけ後悔した俺はそう返答をした。
グラディアスは俺の返事に頷くと一安心という表情になった。
「ありがとう、ではまずギルド長に話を通してくる。あとでまた来るから少しゆっくりしているといい。」
そう言うとかかとを返しグラディアスは扉を出ていった。ほんとに何者なのだろう。
外から来た人間という情報しか正直ない。
彼は何かを知っているのだろう。
とりあえずゆっくりしていいとのことだ、俺はベッドに横になり目を閉じたのだった。