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ばあちゃんの弄り

「ただいま」


 気持ちがボカボカした状態で家路に着く。リビングに入りばあちゃんに帰宅の報告をする。

 僕は無意識にニヤケテいた。なんだろう?この高揚感。さっきまで野口さんが隣にいたんだよな。明日また会えるんだ。気分は春色だ。

 これからばあちゃんによる尋問が待ち構えているとも知らずに有頂天になっていた。


「幹夫お帰り。早かったわね。ばあちゃん。今日デートで遅くなるた思ってたわ」


「デートって、ただ犬を持って上げただけだよ」


 レイナちゃんを届ける際、僕らはばあちゃんに目撃されている。でも野口さんと僕は付き合っている訳ではない。デートなんてほど遠い。


「ついに幹夫に春が来たと思ったんだけど」


「あはは。それは残念でした」


 これで野口さんの話題は修了。と思っていたがばあちゃんは話を続ける。頬に手を併せて困ったような顔をする。


「言ったでしょう」


「何を?」


「少し強引な男がモテるって言ったでしょう。女の子も待って隙を作っているものよ。そこを見逃さす食いつかないと発展はないんだからね」


「だ、だから僕と野口さんはそんな関係じゃない」


 女の子が隙を作る。隙ってなんだ?酔った振りとかそんな感じ?高校生の僕らは関係ない話だ。そもそも野口さんに隙はなかった。


「野口さんだっけ。彼女可愛いよね」


「ま、まあ可愛いかな」


「彼氏とかいるの?」


「さあ?そもそも高校生で彼氏彼女が要るのはレアなんだよ」


「そんな彼女と幹夫は一緒に帰ったのよ」


「レイナちゃんを届けるためね」


「それが彼女の隙」


「え?」


 ばあちゃんの言葉の意味が解らなかった。ばあちゃんは話を続ける。


「彼女は1人でも届けることが出来たハズよ。幹夫に頼る必要なんてないのよ。幹夫を頼りにして話もして見たかったんじゃないかな?」


「そんな素振りはなかったよ」


「鈍感」


「うっさい」


 僕は逃げるように自室へ行く。野口さんが僕と話して見たかった?そうなのか?チャンスを自分で潰したの?くそくそくそ。ベッドにそのままダイブする。そのまま、うとうと寝てしまう。



「ニャー」


 一匹の黒猫のが僕を睨み付ける。冷たく悪魔のような目をしていた。そんな猫でも僕はいつものように声をかける。


「どうした?怖いことでもあるのか?」


「ニャー」



「幹夫。ご飯よー」


 僕はばあちゃんの声を聞き目を覚ます。夢だったらしい。凄い寝汗をかいていた。黒猫か。不吉な夢かな?頭を左右に振り頬を叩く。気持ちを切替へ着替えてリビングへ戻った。


 リビングに行き、いつもの自分席に着く。正面にばあちゃん。ばあちゃんの脇にワンコが待機している。僕らの食事が終わるとワンコのご飯となる。席に着くなりとんでもない物を食卓で見つけた。


「ばあちゃんなんだコレ?」


「お赤飯」


 食卓には普通のおかずの他に重箱に入った赤飯が並んでいた。


「いや、それはわかる。何で赤飯」


「だってー幹夫に彼女が出来たからお祝い」


 頭が痛くなる。何考えてやがる。


「あのなー」


「幹夫。頑張れ」


 ばあちゃんは僕の言葉に被せて来る。ばあちゃんのなりの応援らしい。


「うん」


「良かった。さしあたって明日のワンコの病院はお任せしても良いかしら」


「わかった」


 僕がワンコを連れて動物病院へ行くつもりだったが、ばあちゃんが行く可能性もあったのだ。ばあちゃんの申し入れを有りがたく受け取る。


「ちなみになんで二人で帰ることになったの?」


「えーと」


 僕は食事をしながら、レイナちゃんを送り届けることになった経緯を話す。素直に何も考えずそのまま伝えた。


「あら。あら。ばあちゃん心配し過ぎだったわね。幹夫の方から声をかけたんだ」


「えっぁ」


 その通りだ。僕から野口さんに声をかけたんだ。『一緒に帰ろうではなく』『一緒に送り届けよう』だけど。ばあちゃんの言葉を聞き僕は恥ずかしくなる。


「その調子よ。幹夫のペース少しずつ進めば良いのよ。それが幹夫の長所でもあるかもね」


「ふうん」


 内心汗だくだくだが冷静を装う。変な反応をするとばあちゃんの弄り餌食だ。無心でご飯を食べる。


「でも避妊はしなさい。犬とは違いますからね」


「ぐぉ!ば、ばあちゃん飛躍しすぎだ!」


 危なくご飯を喉に詰まらせるところだった。高校生の孫にそんな恥ずかしいこと言うんじゃない。会話も録に出来ないのに、出来るわけないじゃん。ばあちゃんの過激発言は続いた。


「幹夫。女の子だってしたいのよ。若ければ興味もたくさんあるし」


「そ、それはばあちゃんのことだろ。他の女子はそうは思ってないさ」


「甘いわね。女の子達の会話はもっとギリギリを言っているのよ」


「......」


 僕は黙り込む。何も言えない。


「顔を真っ赤にしちゃて。幹夫には刺激が強かったわね。まずは話して来なさい。動物の話題なら貴方も得意分で共通の話題でしょ」


「......」


「あーあ。拗ねちゃた。仕方がない。ワンコ、明日ばあちゃんと動物病院行こうか?」


「ワン!」


「それはダメだ!僕が行く」


 つい立ち上がり叫ぶ。ばあちゃんは笑っていた。ダメだ太刀打ち出来る気がしない。直ぐに腰を下ろす。ばあちゃんはワンコと会話を始める。


「クゥン」


「あら、ワンコ。ばあちゃんと行きたかったの?」


「ワン」


「ゴメンね。幹夫がどうしても行きたいんだって」


「ハッハッハッ」


「そうなの。ばあちゃんと離れたくないの。私も一緒にいたいけど幹夫のことお願いね」


「ワン!」


「出来れば幹夫の気持ちを代わり伝えてやって。野口さんラブだって」


「おい。そんなことをは言ってないだろ」


 ここで、ばあちゃんに釘を差す。暴走すると集約が着かなくなる。いつもなら僕の言葉を無視しワンコと会話を続けるばあちゃんが僕の方を見て来た。


「嫌いなの?」


 くそ。ババア。


「大好きです。Hもしたいです」


「素直でよろしい」


「アホ。風呂行ってくる」


 ばあちゃんはその後ワンコにお兄ちゃんを宜しく頼むとお願いしていた。僕は逃げるように食卓をあとにした。



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