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レイナ

 週明けの学校。僕の心配こどは空振りに終り、いつものような学校生活だった。三上さんと月曜の朝に会話した程度。しかもこの時は僕と言うより勝に絡んでいた。それ以降、野口さんも三上さん共に僕に絡むこともなく平穏な日常を送っていた。


 何事もなく今週も学校が終わると思っていた金曜日に事件は起こった。

 一匹の迷い犬が校内へ乱入して来のだ。校舎に入り込み廊下を爆走している。教師が必死なりその犬を追いかける。


「ダメだ」


「警察?」


「いや、消防署だろ」


「保健所?」


「猟友会呼べ」


 先生方が廊下を駆けまくる。教室に入られると危険なのでドアを開けないように指示が出る。


「こわーい。猿谷くんなんとかして」


 三上さんが冗談半分に指を組み目を潤ませながら猿谷にお願いしていた。僕も興味はあるが素知らぬ不利をした。さすがに教師の指示を無視するのはまずいだろう。


「よし、僕が犬を捕まえてみせよう」


「お!さすが猿谷。頼むぞ」


 クラスメイトのほぼ全員に祭り上げられ猿谷が教室はのドアを開けた。


「バガモノ!」


 廊下より教師の怒号が飛んで来る。猿谷が開けた教室のドアから一匹の犬が教室内に突撃してきた。皆が驚き犬から距離を取る。僕はウチのワンコより一回り大きい犬だったが可愛らしい犬じゃないかと警戒もせず席から動かなかった。


「よし、今から僕が捕まえるから皆は離れていて」


「いけー猿谷!」


「猿谷君頑張ってー」


 猿谷が再び犬の確保に挑む。流石はモテ男だけはある。クラスの信頼は厚い。黄色い声が飛び交う。僕はそんな様子を横目で白けたように眺めていた。

 それが悪かったのだろうか?猿谷は犬に飛び付くも逃げられ逃げた犬は僕の方に向かってくる。


「痛っ!」


 何故か僕はその犬にすねをかじられていた。この!僕は刹那に犬に反撃をしようと腕を上げる。


「松下君待って」


 僕の目の前に野口さんがいた。何かを訴えているような目だ。僕は振り上げた拳を静かにおろし犬の首輪に回す。


「確保」


 周囲から歓喜が上がる。首輪に手をかけある程度身動きをとれなくしたつもりだがそれでも犬は暴れようとする。つか、早く離れろバカ犬。すねが痛い。首輪を放さないのがやっとだ。犬が暴れついに僕のすねから口を外す。今度は僕の腕を狙っていた。慌てて姿勢を変える。


「こ、これどうするの」


「私が落ち着かせます」


 誰かに助けを求めようとすると、野口さんがやって来た。彼女は犬の目線に腰を落とすと犬が暴れるのを止めた。野口さんはそまま犬の喉元を優しく撫でる。すると犬はすぐに腹を見せ服従のポーズを取った。流石は動物病院の娘と言うべきか。僕は転がる犬に巻き込まれてくなかったので服従のポーズを取る瞬間首輪から手を放していた。


「松下君大丈夫?すぐに保健室へ行かないと」


 僕らの様子を伺っていた三上さんが声をかけてくる。


「この程度なら大丈夫だよ」


 僕は足を軽く叩き大丈夫とアピールをする。多少痛かったがワンコにもこないだミナミちゃんにもやられている。慣れっこといえば慣れっこだ。


「レイナちゃんはちゃんと狂犬病の予防接種しているからそっちは問題ないけど破傷風が出る可能性はあるから流水で5分以上傷口を洗い流して」


「わかった。松下君行くよ」


「1人はでも大丈夫だよ」


「いいから行くよ」


 三上さんへの返答に野口さんが答える。動物絡みの人の怪我は慣れているのであろう。それを聞き、三上さんが有無を言わせず僕を教室から引っ張りだした。


 僕が教室のから出ると同時に教師達が雪崩れ込んで来た。


「もう、大丈夫です。松下君が捕まえてくれました。私がレイナちゃんの家を知っています。家まで送り届けますから、あまり騒ぎにしないで下らない。お願いします」


 教室の中から野口さんの声が聞こえて来た。犬のことを教師を説明している。


「翔子ったら。動物のことになると積極的なんだから」


 僕の腕を掴みながら三上さんさんはボソッと呟く。


「家が動物病院だからね」


「そうね」


 僕が相槌を打つと彼女は意味深な笑顔でうなずいた。


 僕らが保健室のに入ると保健室の先生は当然犬の騒動のことを知っており、直ぐ様治療となった。三上さんは僕を保健室へ送り届けると教室へ戻って行った。

 腕の傷を流水で流されその後、消毒。カットバンを張り治療は修了した。治療後、保健室の先生に心愛と教室へ戻っても良いし家に帰っても良いと言われた。正直、犬に噛まれる程度は大したことではない。僕はその後が気になり教室へ戻る選択をした。


 教室へ戻ろうとすると昇降口付近で野口さんと僕に噛みついた犬を見かけた。野口さんはゆっくり歩こうとしているが犬の方がパワーがあるようで引きずられていた。


「野口さん。どうしたの?」


 僕は声をかけられすにはいられなかった。


「あっ。松下君。松下君は大丈夫でしたか?あ、レイナちゃんダメ」


 僕が野口さんに声をかけると、犬の方も反応したため野口さんが必死に僕に近づかないようにリードを引っ張っていた。


「僕は大丈夫だけど野口さんは大丈夫?その犬かなりパワーがありそうだけど」


「私は馴れてますから大丈夫です」


 全然大丈夫そうに見えない。野口さん華奢だから。ウチのワンコでも苦労していたのに。それよりコイツは一回り大きい。


「そのリード僕が持つよ。どこ行くの?」


「......噛まれますよ」


「何で噛まれるかなー」


 犬の行動は理解不能だ。何を見て判断して良し悪しを決めているんだか。でもこの犬は僕のことが嫌いなのだろう。何となくはわかる。その疑問に野口さんが答えてくれた。


「その。ワンコ君の匂いが松下君からするようで」


「あぁ。他の犬の匂いがダメか。でもそれだったら野口さんだってダメじゃん」


「その、結構抵抗したらしいんですが無理やりだった見たいです」


「何が?」


「ワンコ君のお相手の2匹目です。すごく恨んでます」


 何個かのピースを組み立てる。無理やりワンコの相手?


「念のために聞くけどその犬はメス?」


「はい」


 僕はその場でうなだれる。総合的に考えてるとワンコが放浪中に襲ったよ相手でワンコが嫌いになり同じ匂いがする僕も嫌い。だから僕は噛まれた。ってこと?そう言えば三上さんのとこのミナミちゃんにも噛まれたったけ。ワンコの呪いか。


「で、野口さんはこれからどこ行くの?」


 気を取り直し、再度、野口さんに質問をする。犬連れて歩く彼女。良く見ると帰り支度も済んでいるようだ。


「レイナちゃんを家に送り届けます。先生に許可を貰って学校は早退します」


「の、野口さん僕も付き合うよ」


 自分ても信じられないような言葉が僕の口から飛びだした。

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