表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/42

幹夫と勝

 慌ただしい週末を終え、月曜日。いつものように学校へ行く。正直学校へ行くのは気が重い。そんな折、珍しく何処ぞの野良猫がすり寄って来た。思わず抱き上げる。特に猫からの抵抗はなかった。


「おーにゃんこ。おはよ。ちょっと聞いてくれるか?ウチのばあちゃんが変なこと言うしさー。この週末にクラスメイトの女子と面識持っちゃったんだ。学校でどう接するのがいいかな?」


 ついつい野良猫に相談事をしてしまう。


「ウニャニャャャ」


「痛」


 野良猫は暴れだし、僕の手からすり抜けた。無数の引っ掻き傷つきだ。僕は頭をかき何事もなかったように学校へ歩きだす。


「うっす」


 学校の教室へ到着する。ドアを開けると僕の悪友のヤローが目に入ってきたので、すぐさま挨拶をする。悪友の名前は白石勝。この学校で知り合い早や二年。よく性格が分からない奴だ。悪い奴ではないが掴み処がない。


「おお。ミッキー。おはよ。この週末なんか楽しそうことあったか?」


 週明けの定例会話だ。


「いつも通り」


「犬は見つかったか?」


「おかげさまで無事見つかりました」


「そっか。今朝に思い出したんだけどさ。野口んとこ動物病院を経営しているから聞いて見ればって思ったんだが。見つかったか。残念。女子と会話出来るチャンスだったのにな」


 勝の言葉に驚く。勝は野口さんの家の動物病院知っていたのか。それと同時に女子二人と会っていたことを話すべきか悩む。平気なフリをしていつもの定例の言葉を続ける。


「勝はどんな週末だった?」


「ひたすら対戦ゲーム!師匠にご指導受けてました」


 勝は対戦ゲームとちゃかして話すがそんな軽い物ではない。彼は囲碁のプロを目指して日夜剥げんている。


「そっか。お疲れ」


「あれ?ミッキー今日はなんか雰囲気違うな?週末何かあったな。教えろ」


 勝は僕の首を抱え込み、頭をグリグリして来た。特に先週と変わった雰囲気はないと思うのだが、何が不味かったのだろうか?


「痛い痛い。止めろ止めろ」


「白状するのか?週末、綺麗なお姉さんとかと出会ってたりして」


 勝はさらにグリグリを強めて来た。ちょっと我慢出来ない痛さだ。僕は週末の出来事を話すことにする。


「わかった。話す話す」


 僕が諦めた所で勝から解放される。まだ首元が痛い。


「んで。週末何があった」


「ウチの犬。野口動物病院で保護されていた」


 僕はワンコ保護の経緯を勝へ説明する。その際に女子二人と出会ったことも話した。勝はウンウンと聞き手にまわる。


「美香か」


 話が三上さんの所に入った時、勝がボソッと呟く。美香?名前呼び?その表情は何か隠し事をしているようだ。


「おい、何で三上さんのこと名前呼びなんだ?まさかー付き合ってる?」


 先ほどのお返しとばかりに勝を茶化してみる。彼は落ち着いていた。


「あぁ。幼稚園からここまで腐れ縁で一緒の学校だったから」


「なぬ!お前、僕の仲間と思っていたが、勝はカーストの上位の人間だったか。モテないブラザーズは解散だな」


「なんだ?そのモテないブラザーズってのは。美香と僕はただの腐れ縁だ。知り合い程度の関係だ」


「ほう。知り合い程度だったの。毎年バレンタインチョコを贈っている私の立場は?」


 突然、横の方から乱入者が現れる。驚き勝と二人揃って声のほうを確認する。そこには三上さんが仁王立ちしていた。


「義理の10円チョコだろ」


「私、マー君にしか渡したことないもん。お返し貰ったこともないし」


 三上さんは拗ねて泣き真似をする。からかい半分。少しだけ怒っている?


「わーた。来年は返すよ」


 勝が三上さんを宥めるため、めんどくさそうに声をかける。三上さんはその言葉を聞き泣き真似を止める。


「今年は?」


「わーた。わーた。なんか考えておく」


「頼むよ。じゃ。松下君もまたね」


 三上さんは僕と勝に手を振り自分の席に戻る。残された僕らはぼーぜんと見送る。


「なあ。ミッキー美香の奴の『松下君またね』って言ってたけど何かアイツとあったか?」


「なんもねーよ」


「でも気に入れられたっぽいな」


「そうなのか?」


「あぁ」


 勝の話だと、僕は三上さんに気に入れられたらしい。周囲から殺気のような物を感じる。良くクラスを見ると周囲の男子が先ほどからこちらをチラ見する。皆な怖えーよ。


 そうこうしていると、もう1人週末出会ったクラスメイトが登校して来た。彼女は僕に一礼だけし、そそくさと自分の席に向かって行った。


「野口か。割りと美人系なんだけどな。クラスではボッチぽいからな」


「話すと柔らかい感じだったぞ」


 勝の野口さんの評価に対し、僕は一昨日出会った野口さんの印象をそのまま口にする。


「そうか?一年のあたり以外と人気があって先輩男子が告白してメチャクチャやっつけられたらしいけど?」


「そんなことあっんだ」


 野口さんが告白を受けるのは何となく想像出来る。ただ、彼女にやっつけられるは想像が出来なかった。とてもそんなことするタイプではない。


「お前信じてないな。彼女は魔女じゃないかって噂もあるんだぞ」


「お前バカか?魔女って」


「だってカラスの集団に先輩は襲われたって言ってたぞ」


 野口さんは魔女?あり得ないでしょ。皆変なファンタジーの読み過ぎだ。たまたま、カラスを攻撃とかした先輩だったんでしょ。でも話題としては盛り上がる。勝もその辺が解っていて話すのだろう。


「彼女が魔女なら僕は猛獣使いで」


こんな下らない話で勝と盛り上がる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ