翔子と美香
私が高校入学と同時にイケイケの子と友人になってた。彼女の名は三上美香。中学までは私と同様な地味っ子だったらしい。高校デビューを果たしたそうだ。外見はついて行けなかったが内面的は純情だったので良き話し相手となってくれた。
美香の交遊関係はどんどん広がりとんでもない噂まで流されるようになった。
そんな彼女とは週一のお昼を一緒に過ごす。ずっと輪に囲まれていると疲れるそうだ。彼女は私に愚痴をこぼす。
「翔子。聞いて、『サルだる』の奴がさ。馴れ馴れしくベタベタ纏わりついてくるんだよね。気持ち悪い」
「美香。あんまり人のこと悪く言うのはどうかと思うけど」
「イヤー私には今の環境、無理ゲーだったよ」
「上手くやっていると思うけど」
「上手くやるのと慣れるのは違うから」
「でも、自分が変わりたいと思って頑張ったんでしょ」
「そうなんだけどさー。俺はモテるんだぞオーラー出してて、恩着せがましくてイヤなんだよね」
「実際、猿谷君はモテるよね」
「翔子!あんなのタイプなの!紹介しようっか」
「やめて」
そんな女子高生には当たり前のような会話をする。因みに猿谷君はカーストの上位にいる文武両道のイケメン君だ。見た目でみんなの人気者となっている。私の情報網では動物虐待のヒドイと聞こえてきている。
「翔子に似合いそうなのは、動物好きな人だよね。そんなのこのクラスにいる?」
「いるよ」
「え!翔子。気になる男いるの?」
「そんなのじゃないけど」
そんなんじゃないけと、猿谷君とは正反対の目立たないけど優しい人も知っている。松下幹夫君。彼は動物に優しい。ただ、動物達には警戒されたり馬鹿にされたりでちょっと可哀想。間抜け行動をしているのを教えてあげたい。
「例えば、まさちゃんとか」
「そんなわけないじゃん。美香の幼馴染みをとったりしないよ」
美香は一瞬緊張の顔をしたが、すぐに緩む。まさちゃんとは白石勝。美香の幼馴染みだ。美香は高校に入ってから彼の横に立ちたくてイメチェンしたが、逆に彼は距離を置くようになったと嘆く。白石君は確か松下君と仲が良かったはずだ。よく連れだっているとこを見かける。彼の情報は可もなく不可もなく。美香がとても気になる存在らしいが勇気がでないらしい。動物全般に興味がない。
『キンコンカンコーン』
お昼修了のチャイムがなる。
「はや。翔子との楽しい時間は終りか。あ、そうだ。今週末ウチに遊びにこない?ちょっとお転婆な犬を紹介したいだけど」
「噂のミナミちゃんね。うーん。行きたいけど、土日は家の手伝いだから。日曜の午後しかあかないんだ」
ウチの家は動物病院を経営しているため、土日は多くの患者さんはやって来る。月曜から金曜までは特に患者さんが多くはないため、父さんが受付・診察・支払い全てを1人でやる。土日は患者さんが多くなるため私が受付支払い担当する。
「それで良いよ。今度の日曜日の午後」
「わかった。宜しくね」
美香は外見がアレだが本当に優しい子だ。動物達にも人気がある。そんな美香の誘を断わりたくなかったので頑張って彼女の家に遊びに行くことにする。ミナミちゃんも素直で可愛いかった。飼い主と似るのか似ないのかミナミちゃんは『良い犬いない?』と聞いてくる始末だ。あと、ミナミちゃんは美香ラブだ。『美香に近づく男』は襲う宣言をしている。
高校二年になっても美香とは良い友人関係を保っていた。そんな彼女が怒って一匹の迷い犬を連れて来た。この犬は美香の飼い犬のミナミちゃんを襲っていたそうだ。
「犬は預かるけど。ミナミちゃんはどうする?中絶も出来るし避妊手術も出来るよ」
「うーん。ミナミにも母親には、なって欲しいんだ。ミナミもコイツも犬種は一緒みたいだし。まだ考えてないや」
ミナミちゃんは血統証つきのシベリアンハスキーだ。何処ぞの馬の骨にやられてると勿体ないと考えるブリーダーもいる。何件のお見合い話もあったはずだ。
「わかった」
「私もさ、お母さんになってみたいし、Hにも興味あるしさ。翔子はしたことある?」
「ないよ。相手もいないし」
「私もない。誘ってくる相手はいっぱいいるけどチャラすぎて信用度出来ないんだよね。まるでその犬みたい」
私には想像のつかない話を彼女はさらっと言い放つ。誘われるんだ。私は男の子と話したことないのに。私の顔は赤面していたかも知れない。誤魔化すため目の前の犬に話しかける。
「君の名前は何かな?飼い主さんは何処の人かな?」
『俺の名はワンコ。飼い主はばあちゃん』
「そんなので飼い主解れば苦労しないよ」
美香は私の独り言にチャチャを入れてくる。本来は声に出さなくても直接心に聞けば彼らは答えてくれる。
そう、私は動物達と会話が出来る。美香に愛想笑いを向ける。
「ワンコ君、暫く宜しくね」
「勝手に名前つけて」
美香に呆れられてしまう。
『飯はドックフードとたまにニボシをくれ。散歩はちっと足が痛むから遠慮する』
「え?」
「翔子どうした?」
私はワンコ君の足を触診する。
「キャン。キャン」『痛い痛い』
「たぶん。打撲かヒビか」
触診を止め美香のことを見る。
「私は何もしてないよ!ちょっと水をかけたけど」
『うむ。ちっと車と戦ったからな』
「水かけるぐらいは良いよ。別の場所で怪我したらしいから。お父さんに診察頼むけど時間ある?」
「時間はあるけど、そいつの支払いはヤダな」
「支払いは飼い主に請求するよ。診察終わるまで待つ?」
「ごめん。帰るよ」
「そう、気をつけて。ワンコは預かるよ」
「お願いね」
美香は手を振り家へ帰って行った。それからワンコ君の診察をする。結果としては軽微の骨折。骨にヒビが入っていた。
「因みにワンコ、自力で帰ろうと思えば帰れたりする?」
近所なら帰れるかもと思い本犬に確認する。
『遠征していてさっぱり何処だかわからん』
帰巣本能ってデタラメだったかな?
ワンコを預かってより2日後、電柱に迷い犬のチラシを見つけた。名前と犬種。写真が一致する。私は飼い主へ連絡を取る。自宅電話は反応がなく、携帯へと連絡をする。ばあちゃんが飼い主と言っていたが、電話に出たのは男の人だった。