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迷探偵

 見知らぬ人の家の前から、見知らぬおじいさんを救急車に乗せる。野口さんは救急団員に同乗するようにお願いされ救急車に乗っていった。


「今日はゴメンなさい。詳細は後で連絡します」


「気にしないで」


 ここで僕らのデートが終了だ。かなり残念に思うが仕方がない。次回が有るのか気になるところだが頭を切り替える。


 僕らはこの家に土足で上がっため、僕は掃除をするために残った。野口さんの話しではおじいさんは1人暮らしとのこと。子供は二人いるらしいが1人は都会で生計を立て、もう1人は海外生活とのことだ。どちらとも連絡が取れなかったと野口さんが嘆いていた。


 僕はワンコを庭の芝生に置かせもらう。奴が脱走しないように物干し竿へリードを結ぶ。奴は楽しそうに物干し竿をくるくる回る。ワンコが逃げれないのを確認してから部屋の掃除を始める。


 まずはガラスの片付けだ。その後に軽く床の拭き掃除をしよう。バケツを見つけガラスの破片を片付けて行く。大方拾った後、掃除機をかけた。

 ガラス戸はどうしよう?野口さん躊躇なくガラスに石をぶつけていた。おじいさんが倒れてなかったら器物損壊の犯罪者だ。そう考えると野口さんの行動は異常だ。何を考えているなさっぱりわからない。たまたま、おじいさんが倒れていたから感謝されるのだ。


「ニャー」


 この家の白猫が僕の足下にすり寄ってくる。まだ小さい子猫にも見える。掃除の手を止め僕は猫を抱いた。


「お前、可愛いな。今日はどうする?留守番するか?それともウチにくるか?」


「ニャー」


 猫は僕の手をペロペロ舐める。カワイイ。誰も戻ってくる様子がなければウチに来てもらうか。野口さんがユキちゃんって読んでたな。この子も動物病院の絡みの子なんだろう。猫を手から降ろし掃除を続ける。たまたまだけど、この子の飼い主が病院へ行けて良かった。


 自分が思ったことにふっと疑問を感じる。本当にたまたまか?良く思いだせ。


 この白猫が野口さんの前に来てから野口さんが走り出したんだ。まるで野口さんに助けを求めているようだった。野口さんはそれに応えたのだ。虫の知らせ?イヤそんな中途半端ではない。確実に家の中に倒れている人がいると確証を持ってないと野口さんのような強引な行動は取れまい。


 まさか。おじいさんを襲った犯人は野口さん!アリバイ作りの為に僕をここに誘導した!そんな信じていたのに。


 なんてどっかのノリの名探偵に成りきる。我ながらアホな想像だ。おじいさんは見た目はなんともなかった。目立つ外傷などはなかったから病気で倒れたのであろう。


「なあ。お前のご主人は何で倒れたんだ?」


「ニャー」


 何となく白猫に話しかける。返事をしてくれるこの子はなかなか頭がよいかも。遊んでないで掃除しないと。ガラス戸にその辺にあったの段ボールを張り応急措置をする。大方掃除が終わった頃僕のスマホが鳴る。誰かを確認すると野口さんだった。


「今日は本当にごめんなさい」


「いいよ。そっちは大丈夫?」


「なんとか。それでですね。川上さんは脳梗塞で緊急手術を受けてます。身内の人と連絡は取れたんですけど、こちらに来るのは明日になるそうです」


「そうか。野口さんは何処の病院?」


「医大です」


 野口さんが口にした病院は近くの病院だった。それなら。今度は僕が彼女を誘う番だ。彼女への疑問も直接聞きたい。


「野口さんはまだ病院で待機なの?」


「いえ。私はもう帰っても良い様です」


「それじゃ。今から合流しない?お昼まだでしょう?」


「わ、わかりました。場所は?」


「中央駅は?」


 僕は桜さんの店の位置を知らない。野口さんに案内してもらう立場だ。変な待ち合わせ場所にすると遠回りなる。なので店の位置を知っている彼女に待ち合わせを選んでもらいたかった。


「中央駅で問題ないですよ」


「じゃあ。中央駅の熊さん像の前で」


「わかりました。あ!そうだ。松下君。申し訳ないんですが、ユキちゃん白猫ちゃんも連れて来てくれますか?」


「わかったよ」


「では」


 電話を切り家を出る準備をする。ワンコの様子を見に行くと、物干し竿に絡まり身動きがとれなくなっていた。奴を解放し掃除中に見つけた猫バックに白猫を入れた。ワンコは相変わらずのテンションで跳ね喜び、白猫は大人しく猫バックに入り眠りにつく。家の鍵の在りかを野口さんより聞いていたので家には鍵をかける。全て問題ないことを確認し中央駅へと向かった。



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