女の子達は
家路に着き、私はホッとする。男の子と帰るなんてドキドキだ。変な発言していなかった気になってしまう。匂いとか大丈夫かだったかな?
「翔子お帰り。早速だか、手伝ってくれるか?」
「は、はい」
「ん?まっいいか」
父に声をかけられ慌ててしまう。自分の部屋へ行き仕事着に着替える。父の待つ診察室へ入りに手伝いをする。今日に限っていつもはやらないようなポカミスを多々犯す。父に集中力が足りないと怒られてしまう。
「翔子。何があったか?帰って来てから少しおかしいぞ」
「なにもないよ」
夕食時、私の仕事のミスの多さが気になったのであろう。父に心配される。何もなかったのだから何もないと同然のように答える。
「熱は無さそうだけど」
父は私のオデコに手を当て熱を確認する。
「大丈夫だよ。ちょっと歩き疲れただけだから」
私はレイナちゃんを送り届けたことを父に話す。松下君のことは話さず、1人で届けたような感じて話した。
「そうか。今日は早めに休みなさい」
「そうする」
私は食事を終えお風呂に入るとすぐに部屋に引き籠った。部屋に入った私がまずする事はスマホの着信の確認だ。美香より毎日スマホを見て返信するように言われている。機械音痴の私も彼女のお陰でスマホだけは使えるようになっていた。
美香『今週もお疲れ様。最後の最後で松下君と接触出来たね』
美香『レイナちゃんは無事送り届けた?』
美香『あのあと直ぐ松下君も帰ったけどひょっとして一緒に帰った?』
美香『おーい返事』
美香『まさかデート中?』
美香『まだかなー詳細求む』
そのコメントを読み私の力は抜けへなへなとその場に座り込んでしまう。少し間を取り返信内容を考える。ヘタな嘘は美香には直ぐにばれる。
『お疲れ様。今日も学校疲れたよ。松下君と一緒に犬を送り届けたよ』
よし。送信。
美香『キター。どんな状況?奴はどんな感じ?』
美香になんて説明すれぱ良いかな?状況?松下君の様子?変なこと書いて松下に嫌われたくないな。
『状況。並んで帰った。松下君。無口』
美香『あの男無口かー私の前ではそこそこしゃべったよ』
え?松下君。美香とは会話しているの?私とだと会話が直ぐに無くなる。通りすがりの猫に私達との接し方を悩んでいたと聞いていた。美香は良いんだ。軽くショックを受け取る。
『会話が続かない』
これは愚痴かな?嫉妬かな?私だってもう少し松下君と話してみたいよ。
美香『童貞丸出しだからね』
『美香』
美香は性的に激しい発言をしばしばする。それに注意を促すのは私の役目となっていた。初めて聞いた時は私は驚き赤面した。美香が言うには女子同士では当たり前の会話らしい。美香も私もそんなHな経験は無いのに知識だけは貯めていく。
美香『怒らない怒らない。様は慣れだと思うよ。二人とも良い雰囲気だから共通の話題とかあれば良いんじゃない?』
松下君と共通の話題?動物。犬とか猫だよね。彼は犬派だよね。でも猫とも会話はする姿も良く見かける。私の知識は医学よりだからなぁ。少し不安。
『頑張ってみる』
美香『しかし、本当に一緒に帰ったんだ。報告ありがとう❤️』
美香の返信に自分が余計なことを書いていたことに気づく。私達は偶然、帰りの時間に顔を会わせただけだ。クラスの皆は私と松下君が一緒に帰ったなんて知らないはずだ。
『あまり人前では話さないでね』
美香『わかってるって。声をかけたのは翔子から?松下君?』
『松下君』
美香『お。あの男やりますなー。でも誘っておいて会話がほぼ無かったのね』
『私も話し方よくわからなかったし』
美香『松下君のこと気になる?』
美香にはだいたいのこと話してしまっている。ここで隠し事しても無意味だ。口に出すのは恥ずかしいが文字に書き込むことは出来る。
『気になる』
美香『そんな翔子にとってお気のアドバイスをして上げよう』
『何?』
美香『いつも通りの翔子でいいよ。取り繕っても自分のストレスが溜まるだけだから。自分に自信を持って』
『何それ?アドバイスになってないよ』
美香『素の翔子にひかれるの。私みたいに変わらないで欲しいかな』
『わかんないよ』
美香アドバイスは意味不明。それだと会話が成立しないと思うのだけど。
美香『えーじゃあ。女武器を使う?翔子がHさせればイチコロだよ』
『美香!』
直ぐ下ネタに持って行く。出来るわけ無いじゃない。
美香『だって翔子スタイル良いじゃん。出るとこ出て。松下君も翔子の体目当てかもよ』
『松下君はそんな人じゃありません』
松下君はそんな人じゃない。とても穏やかで気遣いの人だ。レイヤーちゃんに噛まれた時も反撃を我満して、捕まえるのを優先した人だ。私の体目当てなんて考えていない。
美香『はいはい。でも恋人同士になって『したい』って迫られたらどうするの?』
『おやすみ』
美香『あ!逃げた(笑)初Hの報告待ってるよーおやすみ』
松下君と恋人同士になって迫られたらするよね。きっと。そんなことを想像してたらHな気分になる。
「松下君。じゃなくて、幹夫君」
独り言を呟いたら恥ずかしさがあふり出てくる。変な妄想が頭から離れなくなる。私はHな女なんだ。松下君に対し後ろめたさが残った。
いつの間にか眠っていた。
「翔子。翔子」
一匹の黒猫が私の前に座る。見覚えのある猫。間違いなくお母さんの猫のミスターだ。お母さんが亡くなった次の日に後を追うように死んだ猫。その日から私は動物の言葉が解るようになった。
「ミスター。どうしたの?おいでおいで」
「翔子。理性と本能のバランスが崩れている。動物との会話を一時ヤメロ。またはあの男と絡むな」
「あの男?誰?」
「いいか。力を使い過ぎるな」
「ミスター!」
早朝、ベッドの上で目が覚める。夢を見ていたらしい。ミスターの夢とか珍しい。どんなに夢を見たかった記憶があやふやだ。
それよりは失敗もなく今日の診察を乗り切ろう。週末土曜日の動物病院は忙しい。......松下君はいつぐらいに来るかな?




