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透明に生きたいコック・ナン

第0話【プロローグ】


「まったく良い天気だ、嫌になる」


ーパリー シャンゼリゼ通りで

最新チャート人気No.1の曲を流しながら

時代遅れのオンボロ中古車を走らせる青年がいた



右側がライトグレー

中央がブラウンの地毛

左側がアプリコットのスリートンヘアーという

奇抜な頭をした青年



『コック・ナン』 あだ名か偽名か本名か 

彼を知る者はそう呼ぶ


ーーー


彼は人通りが賑わいを見せていることを

嘆きながらもダッシュボードに置かれた

リストの顔写真に目を移す




(この人物を…見つけてサッサと退散だ)



(じゃなきゃホテル代がエライことになる)


(まったく…)


プルルルル


(電話……来ると思った…)



「はい、コック・ナンです」


『どうだ順調かい?』


「えぇ、多少道は混んでいますが

予定通り到着できるかと」



『そうかい、ならいい』


『最近、この街では交通事故が多発している』


『それらの事故を捉えたどの防犯カメラにも

同じ男が映っている事が分かった!』



『偶然か…事件の関係者か』


『何か能力を持っているか』



『それを調べて欲しいんだ』




「了解です…が」



「今は運転中です

この携帯は“周りから見えてません”が

当たり前のように電話しないで下さい…」



電話の相手は君が心配だったんだと

自分の軽率さを誤魔化すように

震えた声で物言うが



「班長のせいで警察に止められたら、

ホテル代は経費にしてもらいますよ」



そう返され焦りながらも悔しそうな声で陳謝し、

真剣な様子で以後気をつけるという内容を伝える



彼はそれを軽くあしらい、電話を切るのであった



(さぁ、目的地も近い…気を引き締めるか…)



 


ーーーー


ーエトワール凱旋門ー 付近


「到着っと…」


車から降りた彼は

興奮した様子で声を荒げる髭面の男と

情けない声を出す冴えない老人に気付く


髭面の男

「テメェがぶつかってきたンだろォ!」



「ブランドのバッグに傷がついちまった!」


老人

「す、すみません、すみません」


髭面の男

「すみませんで済むなら警察ぁいらねーんだよ」


「バッグ弁償してくれやァ!なぁ?」


老人

「ひいぃ…!弁償なんてそんな…!

許してくださいィ!すいません!」




彼は遠目で二人の顔を確認する


(一般人同士の揉め事だな介入する義務はない)


(まして、このタイミングではな………)



老人

「だっ誰か!助けてくれェ!恐喝だッ!

イチャモンつけられてるんだ!」


彼が注意を向けつつも素通りした瞬間

老人から服を引っ張られる


老人

「ま、待って!助けてくれ!

あんたコイツに何とか言ってやってくれェ!」



しかしすがるように頼み込む老人の手を振り払い

自分には関係のない話だと言い漏らす

そして、警察に助けを求めることを薦める



老人

「なっ…この薄情もの!み、見捨てるのか」




髭面の男

「うるせーぞジジイ!」



うじうじとする老人に腹を立てた男は

ポケットからナイフを取り出す


髭面の男

「弁償出来ねーって言うなら

バッグに付いたものと同じぐらいの“傷”

テメェの顔につけてやるよッ」



この脅迫に老人はたじろいで後ずさりをし

刃物の使用を止めてくれと

悲鳴を上げながら男に懇願する



二人がいざこざを起こしている間

彼はポツンと置かれたバッグを

一瞬ばかり触れると冷静に尋ねる



「なぁ、二人は“何”の話をしている?」



髭面の男

「あぁ!?関係ないんじゃねーのか!?」

よそ者に話を割られたことに激情した男が

彼に突っかかる



彼は驚くことも怯むこともなく再度尋ねる

「いや知りたいのさ、“何”で言い争っているか」



髭面の男

「何もこーも、オレの“バッグ”をコイツが…」


「あ…アレッ!オレの……バッグ…ない!」


「ないぞッ…どこだ!さっきまで…」


困惑する男に彼が問いただす


「どうした、傷がついたとか言っていたよな?

どのバッグの話なんだ?え?」



男は状況を理解できず怒りを噛みしめながらも

逃げるように去っていった



「困るよなァ…見えないバッグの話をされても」



スーツの男性

「助かっ……た?」

男性は乱れたネクタイを直しながら安堵する




「怪我はなさそうだな」



「ところで、さっき薄情ものって言ったよな?」


「充分何か罪になるんじゃないか?」


「慰謝料の話をしておくと…」



スーツの男性

「わ、悪かったよ…!慰謝料は勘弁してくれ!」


彼は小走りでその場を離れる老人を眺め



「被害者ズラしてもトラブルは解決しないものだ」


と呟いたのだった





彼が持つ特殊能力、それは


『『自分の姿・触れたものを透明にする』』



この力は彼の争いごとを避けたいという思いを

予期するかのように幼少期に発現したものだーーー



この物語は、

彼が依頼された謎や人物の能力を解き明かす

その上で、己の過去の真相と正しい生き方を知る

そういう物語なのだ


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