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息抜きシリーズ

俺が最強の物語 パート3

作者: Tiroro

バスケのルールほとんど知らないんですけどね。

 俺の名は高柳沢光一。

 現役の中学二年生だ。


 精神年齢は極めまくって3ケタは行ってるけど、肉体年齢は永遠の14歳。

 そんな俺率いる名門中学のバスケ部はついに都大会決勝まで進んでいた。


「90対40……このままでは負けるな。光一、出れるか?」

「もうウォーミングアップは済んでますよ」


 体を暖めるため、30キロ離れた家に走って帰り、お気に入りのクリーム入りメロンパンを食べてここまで戻ってきた俺にその言葉は不要だった。

 もちろん、その際にはしっかり遅刻少女と曲がり角でぶつかるというロマンスは忘れない。

 この腕の傷はその時に負ったものだという。


「残り時間5分で50点差だ。さすがのキャプテンでエースの特待生、高柳沢さんでも厳しいんじゃないっスか?」


 先輩で万年補欠の留学生、マイケル(マイコー)が生意気なことを言う。


「そんなことは無いわ! 光一君はみんなが帰った後も、毎日3時間のドリブルとトラベリングの練習を欠かしたことは無いもの!」


 同じく留学生で学校一の美人のレイチェルが俺を必死で庇ってくれた。

 ちなみにうちの門限は9時だ。


「相手はまだ1軍すら出して来ていない。見てみろ、総大将のゴンザレスなんか特注のベッドをベンチに持ち込んで夢見心地だ」


 ライバル校の留学生ゴンザレスがベッドからこちらを見て不敵に笑う。

 いいだろう、俺が奴を引きずり出してやる。


「そうこう言ってるうちに残り3分だ」

「大丈夫です。あるアニメの世界では残り時間3分が1か月くらい続いたらしいので」


 そう言うと、さっそうと俺はベンチを出た。

 そしてコートに入った瞬間必殺のロングシュートで3点をもぎ取る。

 後に聞いた話だが、この時のシュートが凄すぎて、本当は審判は10点あげたかったらしい。


「くそっ、このままでは追い付かれる……ゴンザレス、出るぞ!」

「おいおい、まだ俺らの登場には早いんじゃないですか?」

「生意気言うんじゃない。お前は高柳沢(あいつ)の恐ろしさを知らんのだ。1年の時に戦ったが、2分で30点差をひっくり返した男だぞ」

「やれやれですね……」

「1軍、出陣だ」


 ついに相手校のレギュラー5人を引っ張り出した。

 幻の6人目がこの試合の審判をやってるらしいので、そうそう油断はできない。

 そして、レギュラーの登場に歓声を上げる相手校の女子生徒達。


「ゴンザレスー!」

「ゴンザレス×高柳沢ー!」


 何気に俺とゴンザレスの本は即売会でも大人気らしい。

 そして、残り時間を見るともうすぐ1分を切るところだった。

 ロスタイムは5分くらいか……。


「まだうちが勝ってるとはいえ、お前は油断のならない男だ」

「俺のエアダンクとレイアップを組み合わせた全く新しい技で華麗に逆転してやるぜ」


 ジャンプボールからスタート。

 ここはバスケ部1背の高い世竹賀鳥衛(せたけがとりえ)先輩に任せることにしよう。

 何せ、先輩の身長は260センチあり、常に酸欠状態だ。


「ボールが高柳沢に回ったぞ!」


 ゴンザレス率いるレギュラー軍団が俺へと一斉に襲い掛かる。

 このままではまずい、パスを回すしかないか。

 辺りを見渡すと、フリーなのは俺の親友でライバルのラファエルしかいなかった。


「ラファエル!!」


 ラファエルは俺から受けたパスをそのままゴール付近へ投げ飛ばした。

 もちろん、これだけではゴールに嫌われるだけだがそこはさすがは俺の恋女房。


「しまった! 高柳沢の罠だこれは!」


 そう、ゴールから跳ね返されたボールは真上へと跳ね上がり、そこへ飛び込んだ俺の必殺エターナルハリケーンシュートが何度もゴールに入ったり出たりを繰り返した。

 ボールはゴールを垂直に23往復し、46点の奪取に成功。

 この間、相手ボールでスタートする隙すらも与えない。

 これで、1点差。

 勝負もいよいよ大詰めというわけだ。


「彼の名は?」

「ミスタータカヤナギ、日本のスター中学生です」


 世界的に有名なバスケットボールチームから視察に来ていた謎の仮面、ミスターロジャーも俺の活躍を見に来ていた。

 専属契約とかCM出演とかも決まるだろうし、これで将来は安泰だ。


「おのれ! 高柳沢め!」


 ゴンザレスとワンオンワン。

 日本語で言うとタイマン。

 俺は威嚇の意味を込めてバッシュをキュッキュと鳴らす。

 こうすることで、もう2点くらいは取った気分になれる。


「ゴンザレス、お前に言っておかなければなるまい。俺はこの試合が終わったらブラジルへ行く」


 そう、俺はついに世界へとはばたくのだ。

 ブラジルで何をするかは決めていないが、スポーツで世界へ行くと言えばたぶんブラジルだろう。

 パスポートの準備しなきゃ。


「そうか……寂しくなるな」

「感傷に浸ってる暇はないぞ。ほら、見てみろ」


 俺達の熱い試合に、観客席は総立ちだった。

 鳴りやまぬ歓声と、ビール売りの声。


「これがラストゲームだ」


 俺はゴンザレスからボールを奪い、相手ゴールへと向かう。

 そして、終了のブザーと同時に俺は体ごとゴールへと突入していた。

 スコアは90対91……勝ったのだ。


 こうして、長く苦しかった戦いは俺達の勝利で終わりを告げた。

 ゴンザレスとは、お互いの栄誉をたたえ合いユニフォームの交換をし、マイケル(マイコー)は人知れず退部したという。


「光一君! おめでとう!」


 レイチェルは涙目で俺に抱き着いてきた。

 それをしっかりと両手で受け止め、レイチェルから口移しでレモンのはちみつ漬けが……。



……………………

………………

…………



「光一、洗濯物持って来たわよ」

「か、母さん! ノックしてって言ったでしょ!」


 秘密のノートを急いで隠し、俺は母さんから洗濯物を受け取った。

 それにしても母親って、どうしてあんな風に気配を消して部屋へやってくることができるのだろう。


 休み明けの実力テストの結果は散々だった。

お読みいただいてありがとうございました。

てぃろろ先生の次回作にご期待ください。

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