エピローグ
というわけで本日三話目。最終話です。
「ねーねー、迅、遊ぼうよ!! デートしよ、デート」
「今はやることあるから、後でな」
「りょーかい」
私は今日も迅のダンジョンに来ていた。
相変わらず迅はツレナイので、私は迅の元にグイグイきているのだ。
え? あの告白の後、どうなったかって? どうなったかって、まぁ、それはもう保留にされたよ!!
「……俺は愛のことをそういう目で見ていない。そういう気持ちを向けられても現状は答えられない」
「うんうん、それは知っているよ。でも、グイグイいくよ。迅が誰かのものになるのも許せないし」
「……はぁ、愛は自分勝手だな。でも愛がそう言う気持ちを向けているならそういう風に見る努力はする」
「やったー!! じゃあ、迅を振り向かせるよ!!」
そういうやり取りをして早数年経っているけど、迅ってばまだ新米ダンジョンマスターで忙しいからってそういう気ないんだよねー。
まぁ、『魔人』の寿命何て倒されない限り永遠だし、沢山時間はあるわけだけど。それでもはやく迅に振り向いてほしいなーっていうわけで私は迅にグイグイいっているよ!!
ちなみにこの数年で、迅がゾンビにした少年のパーティーメンバーが迅のダンジョンにやってきて殺したり、あの和風少女の知り合いがあの街にやってきて色々探ってたり、色々あったよ!! 私は迅を落とすことを第一に行動していたから、国を崩壊させるようなことはせず、大人しくダンジョンマスタームーブしてたよ!!
『黒き死の森』を訪れた冒険者を殺したりね!!
面白かったのは、私が崩壊させた国出身の冒険者が、正妃ちゃんのゾンビと遭遇したことかな。滅茶苦茶驚いていて、何だかちょっと噂になっていたよ。ちなみに生かして返したのは噂になった方が面白そうって思ったからだよ!!
『黒き死の森』から生還した冒険者ってことでちょっと有名になって、調子にのって戦って即死したらしいよ!! 死に方まで面白かったね。
神様は完全に私が迅を落とそうとしているのを見て楽しんでいたりする。
神様からしてみれば、「愛の恋心がそれだけ続くとは」といっていたから、私が恋をして、飽きもせずにしているのが面白いらしいよ。
まったく失礼だよね? 私も人なんだから恋ぐらいするし、それに夢中になったりもするっていうのにさ。
まぁ、昔の私が今の私を知ったらそれはもう信じないだろうけれど。
迅はこの数年で結構したたかになったというか、『魔人』として適応してきた。元々『魔人』として暮らすことを受け入れていた迅だけど、ちゃんと『魔人』としての暮らしをして、中身も『魔人』らしくなった。
私のことも強くなるために利用しようという気持ちもあるみたいだし。うんうん、その方が迅らしいよねー。
相変わらず私が色々やらかしていても態度が変わらないのは流石だよ!!
もっと迅がどれだけ私がやらかしても態度が変わらないかって実験をしてみても楽しいかもしれないね?
そんな風に考えながら私は楽しく過ごしているのだ。
「ねーねー。今度、国家つぶしに行こうよ!!」
「……俺がもっと強くなったらな。愛におんぶにだっこでそうやるのはちょっとやだし」
「そういうの気にしなくていいのにー。ま、迅がそういうならその時を楽しみにしているよ」
もっと強くなった迅と一緒に、国家をつぶしたり、楽しい遊びをする。それはきっと楽しいだろう。
というか、あれだよね。もっと迅のダンジョンが有名になって、迅が強くなったら私と同じぐらい強くなったりするんだろうか?
そうやって将来でも迅と一緒に楽しく過ごせたらいいな。
願わくばそのころには迅が振り向いてくれていることを願うよ!!
――私の初恋は続いていく。
きっと、どちらかの命が尽きるまで、私の恋心は続いていくことだろう。
迅が私に振り向いても、振り向かなくても関係がない。迅が私の好きな人である事実は変わらないのだから、迅が誰かのものにならないように私が排除し続けよう。
逃がして何てあげない。
「……こんな対等じゃない関係で、気持ちを返すなんて出来るわけないだろう」
迅がそんなことを呟いているのを私は知らない。
そして神様が私の様子も、迅の様子も知っていて、色々察していることも私は知らないのであった。
「よし、次は――」
そんなことも知らずに私は迅を振り向かせるために、行動をし続けるのだった。
これからも私は楽しく過ごしていくよ!!
愛の初恋話を書いてみたいなと思って書いたので、此処で終わりです。
前々から書いてみたいなと思っていたのですが、愛の初恋……想像がつかない。となって中々書き出せなかった物語です。
どんな風に終わらせるかも含めて色々悩みましたが、愛はやっぱり書いてて楽しいキャラクターです。
性悪で、人を絶望させることを本当に心の底から楽しんでいる愛ですが、結構一途なのです。愛の初恋暴走譚はずっと続いていくことでしょう。
個人的には凄く気に入っているキャラクターです。読む人によっては好き嫌いが分かれるでしょうが、愛のことを好きだと言ってもらえたら嬉しいです。
では、此処まで読んでくださりありがとうございました。感想などもらえたら嬉しいです。
2020年12月25日 池中織奈




