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迅との距離を縮めたい! ③




「アイさんは優しいね。それでいて強い。大変な目に遭っても一生懸命で凄いと思うわ」

「そうかな? 雛菊さんの方が凄いと思うけれど……」



 私は照れたような顔をしながら、和風少女を見る。



 あーあ、騙されちゃって面白いね?

 ふふ、もっともっと貶めるからね?



 どうやるかといえば、私が雛菊の恰好をして色々やるの。幻覚魔法のレベルも結構上がっているからね? 色々と使い勝手があるわけ。ちょっとぐらいなら雛菊のふりをするのも出来るんだよ。




 『魔人』になった頃の私だとそういう事は出来なかっただろうけれど、今の私は『魔人』暦が長いからね。

 ただリスクも高いんだよねー。私は和風少女のことをちゃんと演じる必要がある。そいて私が和風少女の事を演じているとバレないようにする必要がある。それはそれで結構難しいんだよねー。



 如何に和風少女本人がそういうことを行っているかというのを信じさせるか否かだよね。あと和風少女にアリバイがあっちゃいけない。アリバイがない時間に良い感じに色々貶めさせるようにすることだよ。




 ――迅はたまにこの街に来ているけれど、人の街にいる私と遭遇はしていない。遭遇しないように魔物たちと連携してやってるしね。しかし、和風少女がやっぱり迅とそこそこ仲よさそうで凄い嫌なんだよねー。



 和風少女の口から迅の言葉を聞くのも嫌だしね。



 にこにこと笑いながら私は和風少女の言葉を聞きながら和風少女の暮らしを魔物を使って観察し、良い感じに演じられそうになった。



 ――そして和風少女が一人で、過ごしている中で、私はそれを決行した。





「うんうん。そっくり。良い感じ」




 和風少女そっくりの恰好に幻覚で見せたので、私はにっこりと鏡の前で微笑む。


 良い感じ!!

 これであの和風少女を貶められる!!

 



 そういうわけでにこにこと笑って出かけた私は早速、和風少女の恰好で妻帯者を誘惑した。良い感じに出来たよ!!

 此処はまずは私の傾国の乙女ムーブが良い感じに発動したね。あの時の経験から男を手のひらで転がすことが得意になったしね。とはいえ、和風少女のふりをして行うのは難しかったけどさ。





 そういう行為をね、私は和風少女が一人の時の、アリバイが全くない時に限って行ったの。まるで本当に和風少女が妻帯者を誘惑したり、気に入らない女性に嫌がらせをしたり、子供に酷い態度を取ったりしているようにね。



 楽しかったな。

 和風少女を信頼している女性を虐めるのも。

 今までの一年間は嘘だったとそんな風に演技をするのも。

 ――絶望に染まる顔を見て、私は楽しかった。もっと絶望させたかった。でもやりすぎると私が和風少女ではないとバレるので自重したけど。



 そうして少しずつ和風少女は、街の人から距離を置かれた。

 今まで培ってきたものが少しずつなくなっていく。和風少女は日に日にやつれて行った。でもやられっぱなしじゃなかった。





「アイさん……私を貶めている人がいるの。どうにか証拠をつかみたいわ。そして私がそういうことをしていないっていうのを分かってもらわないと」

「ええ。私も雛菊さんが誤解されているのは嫌だわ」



 ああ、どうして私に協力を願うのだろうね? 一番信頼してはいけない私に。

 でも上手くいっていると油断はしなかったよ。和風少女は中々したたかで、私のことも警戒していた。



 でも私は《ドッペルゲンガー》のドーちゃんを使って上手いぐらいにアリバイを作った。私が和風少女を貶めようとしていないってアリバイを。



 ――結局の所、和風少女は私っていう『魔人』が暗躍していることに気づけなかった。

 百五十年以上生きている『魔人』の私の力に和風少女は気づかない。だから、自分を貶めている存在を、私を探そうとしても探せなかったのだ。



 迅が次にこの街にやってくる時までに、和風少女をどうにかしよう。

 幸いにも迅は『魔人』だからこそ、あまり街には来ない。――この女が迅に酷い目にあっていると縋るのも嫌だし、気まぐれに迅がこの和風少女を助けようとするのも嫌だもの。



 なんだか、醜い嫉妬を感じているなーと思いながらも私は楽しかった。



 私は自分にこういう人間らしい感情があるなんて思っていなかった。誰かを好きになる事も、嫉妬することもあると思っていなかった。

 ――だからこそ、今まで見た事のない自分に出会えることが楽しかった。







「ふふふ、良いスパイスだよね。むかつくけど。それでもこれで私の恋心は良い感じに高ぶるわけだし。どんな風に絶望するのか楽しみだねー。ふふふ」





 ――私はそう言って微笑み、和風少女の事を破滅させた。



 和風少女はその街で悪女となり、ウソツキとなり、そしてならず者たちに暴行され、最後には首を落とされて死んだ。



 それも有権者の旦那に手を出したからである。

 もちろん、仕組んだのは私だ。

 ちなみに幻覚を見せただけで実際にはそういう関係さえもない。



 だけど、幾ら良い関係を築いていてもこうして積み重なれば人は破滅するのだ。




 あー、楽しかった!!

 これで迅に近づいた和風少女を排除できたし、良かったかなー。





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