レッツ! ゾンビづくり!!
というわけで私と迅は楽しい楽しいゾンビクッキング――ゾンビ作り!! を始めている。
どうにかその冒険者を罠にかけて、迅のゾンビにしてしまおうと考えているのだ。
私がまずはやったことは、ハニートラップである。うん、私は見た目がいいからねー。あの冒険者、結構女性に弱いみたいだしさ。だから私は良い感じに自分の見た目を使おうと思っているのだ。
好きな人の前でそんなことをするのに抵抗はないのかって? 特にないね。
私は好きな人のために役に立てるのならば全然嬉しいしね。
「ねぇ、貴方かっこいいね」
――私がちょっとそう言って声をかけたら、その冒険者の少年は私に簡単になびいた。なんというかチョロすぎない? 私の見た目的に戦えるように見えないだろうし、彼らにとっての敵にはなりえないように見えるかもしれないけどさ。
少年と同じパーティーの人は、「……女癖が悪いのはどうにかしたほうがいいよ」ってそんな風に忠告しているのに全く聞きもしないんだから。
そういう忠告をちゃんと聞くような人ならば、ゾンビになるのを回避できたかもしれないのにね?
ハニートラップにかかりやすい人、この世界に多いよね? こんな風に人を信じ切ってどうするんだろう。
その点、迅は最初から私の事を疑っていて、私の性格に気づいているから面白いよね。
「アイさん……俺と一緒に――」
「ええ」
私と男女の関係になれると、この子は信じている。私が笑いかけて、甲斐甲斐しく話しかければそれだけで私が自分の事を好きだと思い込んでいる。
なんというか、この子の同じパーティーの女の子は、この少年に恋しているみたいだ。女癖が悪い少年に恋して、いじらしく初恋をすねらせている。私と迅がこの少年に目をつけなければ、女遊びをすっぱり諦めて、その女の子と恋仲になった可能性もあったかもしれない。
二人で話している時にこの少年は、そのパーティーの女の子を気にしている素振りもあったもの。多分素直になれない思春期特融の感じなんだろうね。
「アイさん――」
私は少年に睡眠薬を飲ませた。
こういう異常状態を与える薬が入っていると全く思わないのもアレだよね。もっと冒険者としての暦が長ければそういう警戒心も持っていたかもしれないけれど、この子はまだまだだよ。
誰が敵になるか分からない。周りのすべてが敵かもしれないっていうそういうのを考えて行動したほうが絶対にいいのにね?
「ほら、迅。留めさしたら?」
ちなみに迅がゾンビにすると決めた少年なので、眠ったままの少年は迅に差し出した。
私が殺してもいいんだけど、迅の経験値稼ぎにもなるし、私が全て手はずを整えなければ迅が生きていけないってぐらいになるのは嫌だしね。
「ああ」
本当に迅もダンジョンマスターとして生きていくことをすっかり受け入れている。
私のように人を殺したり絶望させることに対して興奮を覚えたり、喜んだりはしないけれど、ダンジョンマスターとして強くなっていくために必要なことでは人を殺すことも厭わない。
――そういう思い切りのよい所が良いと思う。
眠ったままの少年は、迅の手によって殺される。
血があふれ出ないようにしてである。此処は人の街で借りた家だしさ、下手に騒がれたら困るもんね。
それにしてもこのまま私と少年が駆け落ちしましたってしようかと思うんだよねー。いつか、この少年と同じパーティーのメンバーが迅のダンジョンにやってきて、ゾンビになった少年を見て絶望するまでがワンセットというか、それがいい気がする。
まぁ、迅は進んでそういうことをしようとは思わないだろうから、私があくまで誘導して楽しむのだけど。
ゾンビにするために死体をばらさない方がいいので、《ボックス》の中にそのまま入れた。
迅と一緒に何食わぬ顔をして街を抜け出して、ダンジョンへと戻った。
迅のダンジョンの中で、死体を放り出す。
その下には、魔法陣を描いている。
これは人の死体をゾンビ化させるために必要なものである。まあ、失敗することもあるから、そのあたりは迅の力量次第だけど。
失敗したら失敗したでいいんだよね。違うゾンビ手にするだけだし。
目の前でゾンビを創るための呪文を口にする迅を見ながら、私は楽しいなと思って仕方がない。
ゾンビつくりという共同作業を迅と一緒に行えたって中々良い経験だと思うんだよね。楽しいしさ。
――そして迅が呪文を言い終えると同時に、その死体が光った。
成功したかな? とドキドキしながらそれを見る。
そのゾンビは起き上がった。
「貴方が、俺のマスターか」
「ああ」
自分がゾンビになったことに対して悲観もせずに、そのまま受け入れて、迅に絶対服従の様子に面白くて仕方がない。
貴方を殺してゾンビにして、貴方の人としての未来を奪ったのは、私たちなのにね?
楽しいゾンビづくりが一区切りしたけど、やっぱりこの子に惚れていた女の子は迅のダンジョンに連れてきたいな。




