好きな人にゾンビを勧めてみる。
「というわけで迅!! ゾンビはいいよ!! 人間だった頃の影響も強くて、観察対象としても良し!! とても楽しいからね!!」
「……愛、突然なんなんだ」
ちなみにあのデートの時から私は迅に呼び捨てとため口をしてほしい!! と何度も言って、すっかり迅は私にため口である。
正妃ちゃんを連れてきて、ゾンビのよさを勧めてみた。
突然やってきてゾンビのことを勧める私に迅は何を言っているんだとでもいう風に言葉をかけてくる。
そういえば迅は一人も人を眷属にはしてないんだよねー。というか、慎重な性格だからか、私が誘わないとこの世界の人の街には私が誘わないと行かないっぽい。
そういう慎重な性格もいいと思うよ!!
それにしても人の街を見たいと私とのデートに出かけてくれるってことで、私は毎回楽しんでいたよ。色んな街に連れて行ってみたんだよ。
迅はとても楽しそうに過ごしていたんだよ。
私は自分の気持ちを隠したりはしていないのだけど、相変わらず迅は私の事を全く信じていないんだよねー。
「ほら、迅。これは私がゾンビにしたタビタちゃんだよ。是非、ターちゃんとでもよんであげて!! 見た目は人間に見えるタイプのゾンビだよ。こういうゾンビも使い勝手がいいからね!!」
「そうだな。ゾンビには見えないな」
「ふふ、でしょー。しかも頭いいからね」
正妃ちゃんは正妃として必死に勉学に励んでいたから、とても頭がいいんだよねー。参謀タイプっていうかさ。
そういう所もいいんだよね。人の記憶はうろ覚えでも、人として感覚があるからどういうダンジョンにしたら人が嫌がるかっていうのも分かるしね。
「私はタビタです。アイ様のゾンビです。どうかお見知りおきを。ジン様」
「……本当に人間みたいだな。元人間だからか」
「そうそう。元人間だよ。私がお気に入りだった人間なの」
正妃ちゃんはとても良い感じの人間だったからね!! 死体を回収するぐらいにはお気に入りだったから。
「あ、でも迅。女の子は駄目だよ!! 私、嫉妬して何するか分かんないよ!」
「……またそんなことをいって、愛はからかってばかりだ。俺を」
「本心だよ?」
いやもう、本当に私のことを迅は信用していないなー。それはそれでそういう所がいいと思うんだけどさー。でも迅にゾンビをすすめといてアレだけど、ゾンビを女の子にしたら私はちょっとすぐにつぶすかも!!
そういうのなんか気に食わないしさー。
それにしても一年ずっと言ってるのに、全く信じないんだよね。
私も私自身が恋をするなんて信じられなかったし、私みたいな性格の存在が恋をしたなんて他の人に言われたら全く信じられないけどさ。
これどんなふうにしたら迅は信じてくれるんだろうか。
まぁ、私たち『魔人』の人生はずっとずっと先まで続いていくのだ。だからこそ、まだまだのんびりでもいい。
いや、本当はさっさと通じた方がいいんだけど。
それでも私は恋愛初心者だし、焦っても仕方がないし。
「ね、迅、ゾンビ作らない? ゾンビ作りたいなら、私が良い感じの人を捕獲してくるけど!!」
「くれるっていうならもらうけど、愛のことだから何か条件付きっぽいじゃん」
「ふふ、私デートしてよ! 変わりにそれでいいよ!! それか、村とかつぶしに行くとかさー。景色見に行くとか。あとは、ちょっと遠出してダンジョンマスターを殺しに行くとか。なんでもいいよ!!」
とりあえず理由をつけてだったら迅は私とのデートに出かけてくれるんだから。だからこそ私はそういう風に誘った。ただ誘うだけだと、一緒にいってくれないんだよねー。いや、もう本当、迅が何も条件なしに私と出かけてくれたらいいんだけど。
「……というか、ゾンビにするならちゃんと選びたい。愛からもらうというよりも、選びに行きたいかな」
「ふふ、じゃあ、ゾンビにする人探しにいこーよ!! 大丈夫、私が守ってあげるから迅は何も心配しなくていいんだからね!!」
迅のゾンビ探しの旅に行くのもいいよねー。私も気に入った子がいたら眷属にするか、ゾンビにするでもいいかも。正妃ちゃんのゾンビが中々有能だからねー。
というか、あれだね。ゾンビを生み出すことによってまた色んな遊びも出来るしさ。
でもまぁ、迅とのデートがメインだし、この前国を崩壊させたからしばらくは大がかりな遊びはしない予定だけど。
「じゃあ、行く。いつ?」
「迅が都合がいい時で。なんか準備したいなら、準備終えてからでいいよ。私はいつでもオッケーだから」
正直私はそこまで予定が詰まっているわけではない。というか予定があっても迅を優先する。寿命はないにも等しいし、いつでもいいのだ。
そんなわけで迅の準備が出来たらゾンビにする材料(人)探しに出かけることにした。
それにしても迅も『魔人』になったからと何だかんだ割り切っているから、そういう所がいいよね!!
私も良い感じの人いたら眷属にするかゾンビにするか、軽く遊ぶか、そういうことをしよう。楽しみだなぁと私はわくわくしている。




