街の視察という名の初デート 1
「ふふふふふ~ん」
「アイ様、ご機嫌ですね?」
「そりゃ、ご機嫌だよ。迅少年を上手く言いくるめて出かけることが決定したんだから」
私は神様に相談をしてから、迅少年の元へ何回も顔を出した。あまりにも顔を出してデートに誘いまくるのは、恥ずかしいからそのあたりは適度にだけどさ。それにしても迅少年ってば、中々頷かないんだよね。
なんというか、全く持って私の言葉を信じていないっていうかさー。酷いよねー。こんなに可愛い私が誘っているのにさー。
まぁ、でもそういうのが迅少年らしいよね。
そんなわけであの手この手で迅少年を誘いまくったら、頷いてくれたのだ。ただ迅少年に甘い誘いばかりすると、迅少年は私んほ事を警戒するからね。
そんなわけで適度に厳しくしながら、誘ったらなんとか頷いてもらえたんだよ。
私は超テンション上がっているよ。こんなにテンション高い私とか、珍しいよねー。自分で自分が面白いよ。
「迅少年、ハロー、いこうか」
「はい……ところで愛さん、その迅少年って呼び方やめません? そんな呼び方されている人って目立つっていうか」
「それもそうだねぇ。……じゃあ、えっと、迅」
おぉう……なんか恥ずかしいね!!
いざ、呼び捨てにしてみたけれど、なんか恥ずかしいっていうか。やっぱり私、迅少年のことを好きなのだなって気分だよ。
なんだかドキドキしちゃうし、なんか落ち着かないし。
こんな自分の感情が面白いね!!
「愛さんって不思議ですよね。変なところで照れてますし……そういう所を見ると見た目通りの年齢に見える。でも愛さんって実際はずっと年上なんですよね」
「ふふふ、自慢じゃないけれど私はそういう事は経験したことないからね!! ところで、女性に年齢の話はしない方がいいよー。あとさ、私に敬語は不要。もっとくだけた方が周りにも変に思われないよ。いいね、迅?」
「了解です……いや、わかった」
なんだろう、一気にこうして砕けた口調で、呼び捨てになるとなんっ高仲良くなった気持ち。なんだか嬉しい!! 私のテンションは出かける前から高いよ。
「迅、行こうか」
「うん」
迅のダンジョンから出て、私たちは街へと向かう。
一番近かった国は私の手によって、混乱に陥っているから。
もう少し違う街に来ている。というか、あの国は私が混乱に陥らせ過ぎたし、私の顔は分かっているだろうし。
まぁ、大暴れしすぎたから迅と出かける前に見た目が変わる魔法は使っているよ。
迅には本来の私が見えるようにしていたけれどね! こういう細かい操作はやろうと思えばできるものなんだよ。難しいけどさ。
「さーて、迅、私と迅は恋人同士っていう設定だからね? オッケー?」
「いいけど……なんでわざわざ」
「……その方が面白いからね」
実際は私が迅と思いっきりデートしたいなーって言う願望の元、そういう設定にしているんだけど。
でも私たちの年頃の見た目だと、恋人役の方が自然だからね。それに私はそういう風にしたいからね。
それにしてもこのやってきた街は、結構栄えているなぁ。このまま思いっきり蹂躙するのも楽しそうだよね。
そういう気持ちが芽生えていてうずうずしてしまうけれど――うん、駄目だね。今回はデートが目的なんだよ!!
迅と一緒にデートしながら蹂躙旅もいいけど、あくまで今回の目的に関しては、楽しく過ごすことだしさ。私のことをもっと知ってもらいたいしさー。
「迅、手」
「……え」
デート風に見せるためにも、手を繋いだ方がいいのではないか! という事で無理やりつないだよ。
誰かとこうやって手を繋ぐって恥ずかしいね!! しかも興味を持っている相手ととか、何だか不思議な気持ちだよ。
私はずっとそんな気持ちばかりである。
「迅、聞きたいことがあるのならば私に聞いてね。私に答えられることならば、なんでも答えるからね?」
「はい……いや、うん」
迅は私に対する敬語が中々取れないみたい。まぁ、仕方ないね。でもそのうちもっと迅は私に慣れ慣れしくなるかな?
それにしてもさー、近くにある国が私によってズタボロにされていて、正直言ってこの街だってつぶされる可能性も十分あると思うんだよ。
それなのに、こうしてこの街が希望に満ちている――とあるとなんか本当思いっきり遊びたくなるなぁ。
「愛さん、今日はあくまで視察だから」
「分かってるよー。私は信頼がないね? 私はちゃーんと、時と場合を考えているんだから」
そういって笑ったけれど、迅には何だか疑うような目で見られた。酷い!! 私はそういう所はちゃんとしているんだぞー?
「さーて、迅、見て回ろうか」
まだまだ街の中に入ってすぐだからね。だからこそ、迅がいきたいところにこれから行くのだ。
それにしてもこの世界にやってきてこんなに楽しい街探索は初めてかもしれない。




