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国を崩壊させた私は、恋心に気づく 1



「それでさー、めちゃくちゃ楽しかったんだよ!! これだけ大暴れ出来ることはそんなにないからね。こういうのはちゃんと考えてやらないといけないからねー。

 迅少年はどう? 私の大暴れで漁夫の利を得たでしょ? 結構楽しめたかな??」



 私は国家崩壊事変を起こした後、思う存分殺しまくってずらかった。私はオッドー以外には、私が国家崩壊を行ったとは知らない状態だから、私もこの大きな出来事で亡くなったと思われていることだろう。



 ちなみに小さな魔物たちは、まだ国に残っている。混乱の最中にある国の事をちゃんと報告してもらうためにね!!


 それにしても私にしては中々長い遊びを行ったものだよね!! 凄い楽しかったけれどね。でもこうやって長期間良い子として遊ぶのはちょっと疲れるしさー、やっぱり今度は違う遊びをやりたいなーって思っているんだよね。



『黒き死の森』のこともしばらく放っておいたからね。そろそろ帰って、別の遊びをしたいからねー。



 さて、私は迅少年の元に話に来ている。何でかっていうと、私の話を聞いて、迅少年がどんな反応をするのかなーって興味を持ってさ。





「愛さんは本当に心から楽しそうですね……。大暴れしてここまで楽しそうにしているなんて良い性格をしているとしか言えないです……。

 俺は愛さんの漁夫の利をちゃんともらいましたよ。楽しめたというか、まぁ、レベルも上がったし、俺のダンジョンのモンスターたちの良い経験にもなりましたし。なので俺が愛さんに言える言葉はありがとうございますですかね」

「ありがとうございます……?」



 迅少年がありがとうございますなんていうから、私は驚いてしまった。そんな風な言葉をかけられることなんて今までなかったから。



 私は、『魔人』として異世界にやってきた。だからこそ、『魔人』として、人の敵として生きてきた。そもそも『魔人』としての生き方を心から楽しんでいる私は、周りから共感されることなんてなかったし。神様やレルナとはまた違う関係だしさ。




「愛さん、何でぽかんとしているんですか? そんなぽかんとした気の抜けた表情を浮かべていると、何だか国をかき乱したような存在じゃないみたいなんですけど」



 ――しかも、こんな風に笑われてしまうなんて。

 私が笑うではなく、私が誰かに笑われるなんて……正直言って、久しぶりの経験だったと言える。ううん、素の私にこういうことを言ったり、素の私を知っていながらこんな風に私に笑いかける人がいるというのは初めてであると言えるかもしれない。




 地球ではずっと私は”良い子”だった。

 私は皆が望むそういう子を演じていて、皆笑っていたけれど――、私の素は一切見せなかった。自分が異常な性格をしていることは知っていたし、あえてそういうのを見せようとは思わなかったから。


 だからこの世界にやってきた時、楽しく過ごせるのだと嬉しくて仕方がなかった。


「驚くよ? だって私にありがとうなんていう人がいるとは思わなかったし。やっぱり迅少年は変わっているね。変わっていて、凄く面白い」





 神様は邪神だから、私みたいな変わった人を気に入るのは当然だった。

 レルナは心が折れて私の配下になったから、私を崇拝するのも当然である。



 でも――出会ったばかりで、私を正しく理解しているわけでもないだろうに、異世界からこの世界に来たばかりだというのに――私と話して、当たり前のように、迅少年は笑っている。







「自分にとって得になることされたらお礼言うの当然ですよ。それに愛さんを敵に回すと絶対大変でしょ。俺は死にたくないんで」

「迅少年、そういうことを私相手にはっきり言う所が面白いんだよ?」



 迅少年は正直だ。私が『黒き死の森』のダンジョンマスターだとは知らないにしても、私が格上のダンジョンマスターだと知っているだろうに。



 それでもこの私にはっきりと言い放つ。




 ――私は、何だか心の中で感じた事のない感情が芽生えるのを感じた。



 こんな風に私の素を知っておきながら、こんな風に当たり前みたいに私に笑いかけ、当たり前みたいに私に言葉をかける。

 そのことが嬉しかった。なんだか楽しかった。






「俺は普通ですよ。そんなに変な事は言ってないですし」

「言っていることは普通なのかもしれないけれど、私が相手ってだけで面白いんだよ。自分でいうのもなんだけど、地球からやってきた私がこれだけ好き勝手やっているのを見て引かないのが面白いんだよ。

 私はね、楽しい事が大好きだし、人の絶望が大好きなんだよ。だから人肉を食べたことだってあるし、今回の遊びのように、私は散々人を騙してたぶらかして遊んでる」

「……本当良い性格してますよね。他の人が言うなら冗談だと思いますけど、愛さんが言うなら本当にやったんだなってわかります」

「ふふ、私が本当にそんなことをやってきたというのが分かっているのに、そうやって当たり前みたいな表情で、当たり前みたいに私と話しているのが迅少年も大分異常だよ?」



 私が本当に絶望が大好きで、遊んでいて、人肉を食べたり、騙してたぶらかして――そうしているのを本当に理解した上で、迅少年は笑っている。




 ――ああ、それが私は嬉しい。

 それと同時に広がったのは、感じた事ない温かい気持ちで。




 私は迅少年の事が好きなのかもしれない、と思った。




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