ダンジョン攻略計画を提案し、私は出会う 6
私は楽しくて仕方がない。
――この先にどれだけ、楽しい事が待っているだろうか――、その気持ちがいっぱいである。
ヒロユキの絶望は楽しかったけど、もっとたのしく、もっと愉快に――折角のこの遊びをもっと楽しくするために……。
「アイ、どうしたんだ? 何か悩みでもあるのか?」
「……私はオッドーのただ一人の妃になったでしょう。私が、何を出来るんだろうって不安なの」
本当は私はただ、ダンジョンマスターVS国家という楽しいたくらみを行おうとしているだけなのだけど。
それにしてもオッドーは、本当に私のことを疑っていない。
私は心優しい、妃。オッドーに寵愛されている存在。……うん、考えただけで気持ち悪いね。でも今の私の立場はそうなのだ。
「アイ、君の名をもっと広めるために共に視察に行こうか」
「視察? 私が行っても大丈夫なの?」
「当然だ。アイのすばらしさを国民に知らせないとな。俺はこれからもアイと共に人生を歩んでいきたいんだ」
「オッドー……、分かったわ。私、頑張るわ」
私のすばらしさねー? 私はこの国を滅亡させようとしているような存在なのに。ふふふ、本当に何て愉快なんだろうか。
まぁ、オッドーや王城の人々の前での私はそういうのを装っているからだけど。
そんなわけで私はオッドーと一緒に視察にいっているよ。
国民達は私たちの姿を見て騒いでいる。私はオッドーの采配により、美しく着飾っている。動きやすい服装ではあるけれど、オッドーの妃として相応しい服装。うーん、こういう高価そうなものは何だか落ち着かないんだよねー。
オッドーは真剣な表情で視察をしている。この国の事を心から思っている。——きっとオッドー自身も自分が良き王であると思っているだろうし、周りもオッドーのことを良い王だと思っている。
あの正妃ちゃんを断罪したのも、自分たちが正しいと正義だと思い込んでいるからこその行動であると言えるだろう。
本当にそのあたりが滑稽だ。
私は妃としての姿と、ダンジョンマスターとしての姿を使い分けている。——でもルーツは私だし、まぁ、ばれたらばれたで楽しいだけだけど。
新人ダンジョンマスターの子たちの中で、外に出ようという気概の子がいたらいいんだけどね。そっちの方が私は不利になるかもしれないけれど、絶対に楽しいもの。
私はそんなことを考えながら、視察を楽しんだ。——私の評価はおおむね高い。もちろん、私に反感を持つ人もいるけど、そういうのは、私の玩具にするだけだ。
そんなことを思いながら、王城に戻った時、私はダンジョンのモンスターたちから話を聞く。
小さなモンスターたちからの情報を整理していく。その中で面白い情報を見つけた。新米ダンジョンマスターの一人が、私のモンスターに気づいたらしい。ふーん、良い勘だね。
ちなみにそれは迅少年らしいよ。あの迅少年ってちょっと変わっているよね? 他の子たちよりもちょっと変わっていて、少し好奇心がわいてくる。
私に警戒するのは、生き残るダンジョンマスターになる証だよ。
私の近場にいる後輩ダンジョンマスターたちは、絶望にたたせるつもりだけど……、どれだけ生き残るかな。
私のことを差し違えるぐらいの覚悟を持っている方が楽しいけど。
そんなことを思いながら私は着々と、ダンジョンマスターたちを煽って暴れさせていた。正当防衛という名目で好き勝手している。どちらかというと、平常心は保ててない。それに対してオッドーたちはダンジョンマスターを滅ぼしてこの国に平和をもたらそうとしている。
私は積極的にダンジョン攻略の知識を学び、騎士たちに伝えている。
やっぱり、ドーちゃんがいると便利だわー。だってドーちゃんがいるからこそ、私はこうして王城を自由に抜け出せるわけだし。
ダンジョンマスターを煽りまくって、国も煽りまくって――良いマッチポンプ。でもまだまだ足りないね。そんなわけで私はモンスターたちに頼んで、派手に人を襲ってもらった。それも新米ダンジョンマスターたちの所のモンスターたちを装って。
さぁさぁ、派手に行こう。
ここから始まるのは全面戦争だ。ダンジョンマスターたちと、国家の戦争――、どちらが勝っても私は構わない。
少しずつ準備をしたものが、時を得て、形になっていくのが嬉しい。
戦争が起こる。私が起こした戦争が。
――そしてその後に、最後に笑うのが私になればいいな。ううん、そう導くよ。
まぁ、私以外が笑っていても、全然問題ないけどね。
「アイ……ダンジョンマスターたちが結託しているようなんだ。どうにか勝たないと、この国は亡ぶだろう」
「ええ。オッドー。国民のためにも勝ちましょう!!」
――意気込むオッドー。
焚きつけた私が此処にいるなんて思っていない。
戦争の勃発。——そこで私は『黒き死の森』のダンジョンマスターとしても、この国の妃としても楽しく動いてかき乱そう。




