ダンジョン攻略計画を提案し、私は出会う 5
「あはははははっ」
私は思わず爆笑してしまう。あ、もちろん、周りに声が漏れないようにはしているよ。なんでこんなに笑っているかというと、今はヒロユキのダンジョンが攻略されて行っているのを見学しているからだよ。
王城には、ドーちゃんを残しているよ。流石に《ドッペルゲンガー》も残さずにうろうろは出来ないからね!!
いやー、ヒロユキは面白い感じに絶望しているね。
ちなみに小さなモンスターを紛れ込ませて、それを通してヒロユキたちの様子も見れているんだよねー。
遠くから観察できるならわざわざ現地に来る必要ないんじゃないか、って言われるかもしれないけどさ。私はもっと絶望を与えるために、そして良い経験値稼ぎに此処まで出向いているわけだよ!!
レベル制の世界だと、経験値は大事なものだからね。
私はもうレベルは結構上がっているけどさ、それでももっとレベルを上げたいと思うからね。私は思いっきり楽しみたいから、もっとレベルもあげたいからね。
私は魔人生活をずっと楽しみ続けたい。もっとかき乱して、楽しい事をもっとしていきたい。だからこそ、私は遊ぶときは遊んで、死なないように警戒もしながら生きている。今の私はレベルも高いし、滅多なことでは死なないだろうけど、それでも警戒はしないと。油断して死んだら面白くないし。
で、私はね、ヒロユキに逃げ道を用意しているんだよね。それを私の可愛いモンスターたちに誘導してもらった。宝石に関しては、隠してもらったよ。何でかって、そうして国から派遣された騎士や冒険者たちに経験値を攫われるよりもそっちの方が良いからね。
「アイさんっ」
そして命がてらに逃げてきたヒロユキ。私を見て安心したような表情を浮かべていた。私なんかを安心した目で見ちゃ駄目なのに。なんて愉快なのか。
――魔人として先輩である私が、後輩魔人を助けてくれるとそう信じ込んでいる。私という存在を信じ切っているなんて、面白いよね。私なんて、人の絶望を見るのが好きだというそんな魔人なのにさ。
「大変だったね、ヒロユキ」
私はそう言って笑いかける。
ヒロユキは安心したように、すがるように私に抱き着いてくる。……うん、ちょっと我慢しているよ。なんでかって?
「バイバイ」
「え」
抱き着かれたと同時に、刃物を背中から突き刺した。ああ、その表情が絶望に染まっている。抱き着かれたのは気持ち悪いけど、この面白い表情を見れたと思うと、何だかニヤリとしてしまう。
「150年も生きている魔人を信用なんてしたら駄目なのよ?」
「……な、なんで」
「経験値にするため。あとは、その絶望した顔を見たかったからかな?」
何で、自分の本音を口にするかというと、もっと絶望した顔を見たかったから。
そうすれば、ヒロユキの顔は信じられないものを――、恐ろしいものを見る目になる。私という存在の、思考回路が分からないといった、化け物を見るような目。
――私の思考は、一般的なものとは異なる。そのことは私も自覚している。でもね、私という存在の事を好いている風だったのに、私の思考を知った瞬間、こういう風に好意が嫌悪に変わるっていうか、そういうの面白いよねー。
「バイバイ」
私は絶望したままのヒロユキを用意していた落とし穴(モンスターに掘ってもらった)に入れて、きちんと息の根を止めるために窒息死させた。埋めたら証拠隠滅にもなるしね。
目的を終えた時、ヒロユキのダンジョンは崩壊した。いやー、こうやってダンジョン崩壊させるのも楽しいよね。
ダンジョン攻略に来ていた騎士や冒険者たちが混乱していたみたいだけど、まぁ、どうでもいい。ダンジョンマスターの所へいって、色々煽ってこようと思っている。
ふふふ、こうして楽しくダンジョン攻略計画を進めるのは楽しいよねー。ダンジョンマスターたちも結託させているからさ、ダンジョンマスターたちと国の全面戦争みたいな風にしたいなー。
そうしたらきっと楽しいよねー。
私は経験値も稼げたし、にこにこだよ!!
ダンジョンマスターたちの不安をあおって、国と戦争をしなければ滅ぼされちゃうかもしれないよーっていうのを、煽りまくってさ。ちなみに私も協力するよーって姿勢にはしているけれど。まぁ、上手い感じに私の可愛いモンスターたちの損害を出さないようにしようとはしている。でもまぁ、私のダンジョンのモンスターたちを出したら、国を滅ぼすとか出来そうだけどさー。
こういうのはやっぱり新米ダンジョンマスターを出してからの方が良いからね。
それに国をただつぶすだけだと面白みも何もなくて、楽しくない。
ついでに結託させてないダンジョンマスターの所にも向かったけれど、怯えているものとか、私を囲おうとするものとか、まぁ、色々だよね。
「――そうですか」
ちなみに一番面白かったのは迅少年かな。何故か、無反応というか、反応薄いんだよね。この世界を非現実的に捕らえているわけではなく、ここを現実と理解した上で受け入れている。




