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正妃処刑劇場 3

 正妃ちゃんの評判は地に落ちている。




 正妃ちゃんのことを信じて、正妃ちゃんのことを思って、そうして牢屋にまで赴いた心優しい寵妃——つまり私につかみかかったことを騎士たちに見られたからだ。



 前までは正妃ちゃんがこんなことをするはずがないなどといっていた人たちも正妃ちゃんの事を悪く言っている。




 全部私の手のひらの上で転がっている。特に正妃ちゃんは本当に良い踊りっぷりだ。




 正妃ちゃんの親族もすっかりもう正妃ちゃんを救えないと諦めてしまっているようだ。もっと本気で正妃ちゃんを助けようとすれば面白いのにね。


 正妃ちゃんがこんなことをするはずがないと信じながら、正妃ちゃんがこんなことをするはずはないと思っているけれども、やっぱり陛下であるオッドーには逆らえない

 オッドーの取り決めに逆らうわけにはいかないってバカなのかなって思う。



 結局の所、自分の立場とかの方がきっと大切なんだよね。



 だからこそ、正妃ちゃんの潔白を信じていてもこれ以上の動きを見せない。ううん、見せられるけど、見せようとしない。






「アイ、君のことは俺が守るから。アイのことは絶対にあの魔女のような女には傷つけさせない」

「オッドー……」



 一番、手のひらで踊っているのはこのオッドーだけどね。

 踊りすぎじゃない?

 もう少しさ、私の事を疑いなよ。ってしか言いようがないのだけど。




 私としてみれば面白いけどさ、王様なのにこんなに私の手のひらの上で踊っていていいのかな? って感じだよ。





 ちなみに周りの官僚たちの中では正妃ちゃんが実はやっていなくて、誰かが裏で手を引いていて、正妃ちゃんのことを貶めようとしているのではないかと思っている人もいるみたいだよ。

 それ正解!! その裏で手を引いているのは私だよ!!

 ちなみに私が正妃ちゃんを貶めようとしているとは誰も考えていないみたい。私みたいな平民がそんなことを出来るはずがないと思っているんだって。私、魔人だけどね!!




 あとは正妃ちゃんの事を慕っている下位の貴族達や、平民たちは正妃ちゃんを処刑なんかさせてたまるかって動いているみたいだよ。

 彼らの方がなんというか気概がとてもあるよね。正妃ちゃんの親族たちよりもずっと正妃ちゃんのことを分かっているっていうか。



 ぶっちゃけさ、そこで正妃ちゃんのことを逃がして、その後に正妃ちゃんリターンズみたいにしても面白いのかなって気持ちはあるよ。それでもやっぱり処刑してしまった方が面白いのではないかって思うんだよね。






 そんなわけで正妃ちゃんのことを助けにきた連中は私の可愛いモンスターたちに正妃ちゃんの前で殺してもらうようにするんだよ。そっちの方が面白いし、正妃ちゃんが絶望するからね。

 門番には幻覚を見せて気づけば死体が積みあがっていたみたいにしてもらうの。そうすることで呪われた正妃とかそういう付属品がつくからね。



 もっともっと貶めて、そして失意の果てに正妃ちゃんは死亡するの。その先で正妃ちゃんがどんなふうに動くのだろうか。どんな風に処刑をされるのだろうかってワクワクだよね。




 なーんて、そんな性格の悪いことを考えている私だよ。




 そんな私の手のひらで踊っているこの国は、そのまま正妃ちゃんの処刑を決行することになっている。


 明日はついに正妃ちゃんの処刑日だよ。




 正妃ちゃんは稀代の悪女とか、国を滅茶苦茶にしようとした魔女だとか呪われた魔女だとか、好き勝手言われているよ。少し前まで正妃ちゃんが正妃で良かったって言われていたのに、なんとも民は身勝手なことだよね。というか、自分で言うのもなんだけど、私の方が絶対その称号ピッタリだと思うよ。

 そういう風になるように誘導したのは私だけどさ。皆、チョロすぎない? 地球にいた頃、漫画で見かけたチョロインって単語を思い浮かべてしまったよー。というか、この場合チョロインって、オッドーだよね。私に軽くなびきすぎだよねー。



 






 処刑の日、私はオッドーに見に行かなくていいと言われたけど、オッドーの傍に立ちたいから、背負いたいからといって、横に立つことになったよ。



 感動しているオッドーだけど、私はただ正妃ちゃんの処刑を見たいだけなんだよねー。





 そうそう、私は正妃ちゃんの仕事を少しずつやらせてもらっているよ。私は周りからの評価は平民の出だけど一生懸命で、仕事も出来る有能な寵妃になっているよ!! 

 真面目にオッドーの助けをやっているんだよー。この国をもっと滅茶苦茶にして、もっと楽しく遊ぶためにね!!




 私の発言力を強めた方がずっと楽しいからね。







 そんなわけで私の評価は上がっているよ。

 まぁ、側妃たちも死んじゃったし、正妃ちゃんは処刑だし、今は私しか残っていないもんねー。オッドーは私に夢中だし。とはいえ、そういう行為は幻覚でしかしていないんだけどねー。オッドーも可哀そうにって感じだよね。客観的に見たら。でもまぁ、私はオッドーとそういう行為する気は全くないけどね。











「――聞きなさい。私の事を『魔女』だという国民たち……。『魔女』はアイですわ。あの少女を放っておいたらこの国は大変なことになります」



 それにしても正妃ちゃんは本当に強くて、高潔な子だね?



 最後に言いたいことがあるかって聞かれて、この国の事を思って、私の事を告発するなんて。ああ、なんて良い感じの心の強さを持っているんだろうかね。



 正妃ちゃんの心は折れなかった。これだけ貶められても正妃ちゃんは正妃ちゃんのままだった。正妃ちゃんは泣き叫ぶことも、喚き散らすこともしなかった。

 ただこの国のために私の事を告げた。



 オッドーのことを、この国の事を思って――、正妃ちゃんは私が裏で手を引いていることを知っているから。



 だけど、そんな高潔な正妃ちゃんの告発はオッドーの心には響かなかった。




「最期までアイを貶めるとは!!」



 オッドーは愚かにもそんな風に怒って、私を抱き寄せた。あー、こうやって引っ付かれると気持ち悪いね? でもこのくらいなら我慢はするけどさ。



 視界に映る正妃ちゃんは、自分の死を受け入れたような目をしてそのまま処刑された。





 本当にどこまでも高潔で、強い心を持った正妃だった。この国は今、この国にとってもっとも必要であったであろう、正妃を失ったのだ――。そんなことをオッドーたちは自覚をしていないだろうけれども――、きっと私が現れなければ正妃ちゃんはこの国に繁栄をもたらしたことだろう。



 その繁栄の芽を私は完全にたたき折った。なんて楽しいんだろう。なんて愉快なことだろう。私の心は踊っていた。



 その後、正妃ちゃんのことを気に入っていた私は、処刑された正妃ちゃんの死体をモンスターたちに回収させるのだった。






 


 そうして正妃処刑劇場は幕を閉じたのでしたー。パチパチパチってね!!






 

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