正妃処刑劇場 1
さてさて、お茶会毒殺事件はとても大きな話題となっているんだよ。
あの正妃様がそんなことをするなんて思えない。
そう噂するものも最初はいた。けれど……、私はそんな正妃ちゃんを信じようとしている人たちの不信感をあおるような噂を流し続けた。少しの事実と、少しの噂。それさえあれば人を信じ込ませることなんて簡単なのだ。
伊達に私も長生きをしていないからね。その長い人生の中で、私の人を上手く動かす術も上手になったからね。
ちなみに側妃も亡くなってんだよねー。私は運よく生き残ったってことになっているけど。
正妃ちゃんが側妃や愛妾を邪魔に思って殺そうとしたってことになっているらしいよ。正妃ちゃんの食べていたものには何も入ってないけど、それ以外に毒が含まれていたから、正妃ちゃんが疑われるのも当然なんだよね。
全部私が仕組んだわけだけどさー。状況さえ作れば全く非のない存在をどうにかすることなんて簡単と言えば簡単なんだよね。
小型のモンスターをひっそりと忍ばせて毒を忍ぶのもやりやすくていいよねー。というかさ、基本的に今までこの世界にいたダンジョンマスターって固定概念にとらわれている人多いんだよね。
固定概念にとらわれているからモンスターたちと交流しようとはしないし、こうして外に出て色々かき乱すよりもダンジョンで獲物を待ちわびる方が多いっていうか。そもそも同じ地球からきた人だとあくまで死にたくないからダンジョンマスターをやっているだけで、進んで人類に被害を与えようとか思っていないもんね。
だからこうしてひっそりと何も起こさずにモンスターが街に侵入しているとかほぼないんだよね。そんなことするダンジョンマスターいなかったんだろうね。
それに人類の敵である魔人が後宮で暗躍しているってこの世界の歴史だと全くないことだよね。きっと。うんうん、そう考えると私は猛烈に楽しくて仕方がないよ。
私が少しずつ状況を作って行って、正妃ちゃんが疑われるような場を作っていったんだ。それに気づかなかった正妃ちゃんが、ただ政戦にまけただけなんだよね。いってしまったらね。たださ、私が魔人なことだけが普通の政戦とは違うよね。
正妃ちゃんの実家は正妃ちゃんがそんなことをするはずがない!! って言い張っているんだって。それ、正解。正妃ちゃんはただオッドーのために頑張ろうとしていただけだもんねー。それを私っていう魔人をオッドーが気に入って、後宮になんて引き入れちゃったからこんな悲劇が待ってるんだよ!!
うん、実行犯は私だけど完全にオッドーのせいだよねー?
ちなみに私は怯え切っている愛妾を演じているよ。そりゃあ、側妃たちが目の前で毒殺されて、自分も死ぬところだったんだから怯えて当然だよねー? ってわけで怯えたふりしているよ!!
正妃ちゃんの実家はね、私に対して会おうとしてきてるの。私が正妃ちゃんをこんな状態に追いやったとは、彼らも思ってないみたい。
まぁ、周りからしてみたら私はあくまで平民で、力がない愛妾だからね。
そんな愛妾が正妃ちゃんを蹴落とすために――まぁ、実際の目的は私が楽しむためだけなんだけど――こんな大がかりなことを起こすなんて全く思っていないみたい。面白いよね。もっと想像力を豊かにしないと。
オッドーはね、私の心身を思って、あわせないようにしているんだって。だって私は正妃ちゃんに毒殺されそうになって怯えている存在だもんね。オッドーは私に夢中だし、私が殺されるのではないかって怯えているみたいだよー?
私は中々邪悪な人間なのに、全くそれに気づかないっていうのが面白いよね。
私は敢えて怯えたふりをしながら、最初は渋っておきながらあとから彼らに会うように手配したよ。
正妃ちゃんに毒殺されようとしたことは恐ろしいことだけど、正妃ちゃんは今まで優しかったから、正妃ちゃんがこんなことをしたなんて信じられないといった様子を私は見せている。
「アイ様、是非とも我が娘タビタを救うために助けてください。タビタはこのような恐ろしいことを行うような子ではありません。誰かにはめられてしまったのです」
「まぁ……そうなのですか……? たしかにタビタ様は私に優しくしてくれました。私もあれだけ優しかったタビタ様がこのようなことをするなんて思えなかったのです。誰かにはめられてしまったなんて……なんと恐ろしい」
「分かってくださいますか!!」
希望を見出した顔をしているけど、そのはめた犯人私だぞー?
私がこんなことをやるとは全く思っていない様子で、公爵とはいえ、まだまだだね!! あらゆる可能性を考えて私の事をもっとさぁ、警戒しないと。
私は直接的には誰かに意図的に接触したり、やらかしたりはしていないけれど……、モンスターたちを使って暗躍しまくっているからね。そんな力が私にないと思って警戒を持っていないんだろうけど。全然だめだよね。
さーて、とらわれの正妃ちゃんの元へ会いに行こうかな。
優しい正妃ちゃんがこんなことを起こすとは信じられなくて、此処までやってきてしまった心優しい愛妾を演じようか。




