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後宮に入り、遊びます 5

 正妃ちゃんを絶望に追いやるたくらみは進んでいる。

 正妃ちゃんの立場は、侍女の死体が見つかったのもあり、すっかり正妃ちゃんの株は下がっている。



 死体が捨てられた時間帯、私が部屋にいたことは把握されているし、愛妾である私が使い勝手に出来る侍女なんていないとされているからね。だからこそ、私は疑われない。


 私はあくまでこの後宮で力のない愛妾として此処に居る。幾らオッドーに気に入られているとはいえ、ただの庶民である私にはそんな力なんてないって思われてるしね。私魔人なのに誰も気づかなくて面白いよね。


 正妃ちゃんに全てを押し付けて、正妃ちゃんを処刑させようと動き中の私って客観的に見ても見なくても悪人だよね。そんな私の事を信頼しきっているなんてやっぱり馬鹿みたいだなーなんて思ったりする。




 正妃ちゃんは一生懸命なんだよ。

 正妃として正しくあろうと、その誇りを胸にいきている正妃ちゃん。ああ、なんて眩しい子なんだろうね?

 自分っていうものを持っていて、それでいて目標のために必死な正妃ちゃん。

 そんな正妃ちゃんが、国のためを思って行動した正妃ちゃんが処刑される。


 ああ、もうやっぱり考えただけで楽しいよね。





「アイ、楽しそうだな」

「ええ。オッドーがいてくれるから楽しいわ。それにもうすぐタビタ様が招待してくれたお茶会があるでしょう。タビタ様は優しい方だから楽しみだわ」

「……アイ、何かあったらいうんだぞ。あいつは冷たい女だ」



 本当にオッドーは何を見てるんだろうね? 私みたいな悪人を信じて、正妃ちゃんっていう本当の味方を信じなくて――……なんて滑稽なんだろう。





 オッドーが気づかないなら、貴方を思って、貴方のために行動している女の子――可愛い正妃ちゃんが死んじゃうよ?



 そんなことを全く考えもしないオッドーは、きっと私の手のひらで踊るだろう。今も正妃ちゃんのことを疑って、嫌悪している。そんなんだから、本当に自分を思っている人を失うんだよ。




 私はそれを思って微笑んだ。








 ――お茶会で、もっともっと、楽しくしよう。


 可哀そうに正妃ちゃんは疑われている。全部私が行ったことが原因だけど、こうして信頼されていたはずの正妃ちゃんが、徐々に疑われていくのは楽しい。……うんうん、もっと敵を増やしてあげよう。






 そんな気持ちで私はお茶会に挑む準備万端である。

 モンスターたちを上手く使って正妃ちゃんが絶望に陥るようにしているのだ。




 モンスターたちからの報告だと、ちゃんとレルナもダンジョンを幾つかつぶして、新たに増えた後輩ダンジョンマスターに危機感を持たせているみたいだしね。

 レルナは私の言うことをよく聞いてくれる眷属だから、本当に仕事がうれしくて私は嬉しいものなの!!





 さてそんなことを考えながら、私は自分の後宮での名声を高めるための行動を起こしている。何をしているかってまぁ、後宮に住まう人が私を好きになるように演技しているの。

 庶民出で、優しい愛妾様。

 王も寵愛している可愛い愛妾様。

 ……うん、私の素を知っている人には目を剥かれそうだけど、私はそういうのを演じているの。




 少しずつ、正妃ちゃんの違和感を拡散していく。——誰かが本当だと告げた台詞、火消しできなければどんどん広まっていくものだから。



 どんどんどんどん広まっていけ。そしてどんどん正妃ちゃんを追い詰めていけ。

 そんな気持ちで私は、火種を作っていく。







 ――そんな中でお茶会の日がやってくる。



 正妃ちゃん主催で、妃たちが集められるもの。

 側妃たちも正妃ちゃんのことは認めている節があるのよね。それだけ正妃ちゃんがちゃんとやっていることを後宮にいるからこそ分かっているからだろうけど。



 なんだろう、側妃たちも結局オッドーの寵愛が欲しいとか思っているんだよね。オッドーへの好意があるからこそ私を睨んだりしているわけ。そう考えると、やっぱり私はこの後宮にいる女としては異端なのよね。

 オッドーに好意なんてないし、ただオッドーが王という地位があって、面白そうだからと此処にいるだけだから。遊ぶために、絶望を与えるために――。


 これで私が悪人だって正妃ちゃんたちが気づいて、それでいて私を追い出そうとするとかも面白いパターンなんだけど。流石にまだ年若い正妃ちゃんでは気づけないかな?



 それはそれで窮地に陥りはするけど、楽しいんだけどね。

 魔人を国の中核まで忍ばせた愚王としてオッドーが広まることになるわけだし。





 そんなことを思いながら穏やかに微笑む彼女たちを見つめる。



 正妃ちゃんが用意した紅茶やお菓子を口に含む。——その直後に異変が起きた。

 側妃が倒れた。正妃ちゃんはピンとしている。私もこの時のために毒耐性を一部切っているから、少しだけ体調不良だ。魔人だし、この位では死なないけど。



 周りが慌ただしくなる。正妃ちゃんの顔が強張っている。

 ――毒見役がいたはずなのに、その後に毒と思われる症状がおこっているのだ。

 私も倒れる(一部フリだが、毒耐性を切っているから体調不良は本当)。



 なんでこんな状況に陥っているかって?

 私がモンスターたちに頼んで毒を忍ばせたからだよ!!







 

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