第九話 運命の歯車はもう既に回っている ※何を言っているのでしょうかね?
今回は短いですが、重要な回の直前のお話なのでよく読んで感情移入してみて下さい。
しばらくして、やっと馬車は止まった。街の暗い裏路地のさらに深い場所だった。ハリボテの木で出来たボロボロの扉が開き、スキンヘッドの男が出てきた。そして同時に馬車の周りをゴッツイ見た目の男が囲った。
「なんだ」
「新しい商品だよ。男の方は普通の奴隷としてだが。見ろ、注目して欲しいのは女の子供だ。なかなか上物じゃないか?将来有望だと思うのだが」
「………貴様、割れていないだろうな」
「ありえないから安心してくれ。大森林にいた孤児。いや、野生児だ。言葉はわかるから何かしらの事情アリだけど。充分値打ち物の筈だ」
スキンヘッドは扉を閉め、数秒後にまた扉を開けた。この時スキンヘッドは手にクリップボードを持っていた。何かのリストのようだ。
「今から審査を行う。暴れないようにしっかり見張っておけ」
スキンヘッドはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、扉を大きく開けた。入ることを許可したのだ。
「わかりました。おい、早く入るんだ。結界は外した」
商人?のおっさんが俺たちに命令する。
「……行くか……逃げられなさそうだし………ゼウス?」
ゼウスは俺の横にピッタリとくっつき、黙りこくっている。
ああ、そうか。今やっと気付いたのか。さっきまで疑っていなかったのに、俺の言っていたことが現実に起きているから。罪悪感でも湧いているんだろうな。
馬鹿野郎。
「ゼウス」
「…?」
俺は、ここで終わるつもいはない。前世ではあんな人生だったんだ。もう後悔や、悲しみに暮れたくない。自分の満足のいく人生を送りたいんだ。だから、
「安心しろ」
あんまり長く喋るとバレる。短く端的に俺の気持ちをゼウスに伝えるには、この言葉くらいしか俺には思いつかなかった。
俺の言葉に安心したのか、ゼウスは口をムグムグさせた後、顔を向けてコクンと頷いた。
「行こうか」
「うむ」
俺たちはボロボロ、だからこその不気味さを感じさせる建物へと足を踏み入れた。
次回頑張りまっする