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調子に乗ろうぜ女神さん  作者: あひゅう
第一章 まずは異世界に馴染もう
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第六話 サバイバルライフ ※こんなつもりじゃないですが

「ヒビキー!こっちじゃー!こっちに追い込めー!」


「わかった!うぉおおおおお!!」


 前方を走る猪を追いかけ、ゼウスが仕掛ける罠に嵌める。これで今夜の晩飯が決まる。


「ブヒィイィィィイイ!?」


「落とし穴にかかったぞ!今じゃ!殺せ殺せ!」


「うおおおおお!!」


「ブッヒィィイイ!」


 仕留めた。


「「やったぁー!」」


 俺とゼウスは拠点としている洞窟へと戻り、猪を解体した。ゼウスは何故か血抜きと臭みを取るのが上手かった。毛も毛布へと仕立て上げてくれた。


 夜になり、今日のメインディッシュが輝く。

脂ののった肉が旨そうに火で焼かれていく様は見てるだけでよだれがでてくる。

 ましてや食べた時の感動と言ったらもう……異世界の猪ってのはこんなにも上手いのか。いや、元の世界の猪食べたことないけど。


「ゼウス〜、この猪美味いなぁ」


「この猪はバカノシという名前だったはずじゃ。こいつは味付けしなくても十分塩味がするという稀有な猪での。こういう時には最高じゃな」


 バカノシって……バカ貝とかあるからそれ系のジャンルなのかな。それともただのおバカさん?

 美味しい肉によって幸せな気分になってるせいか、あまり頭が働かない。究極のリラックス状態だ。


 この生活にも慣れて……そろそろ異世界というものに慣れてきた感じかな……?


感じ……?


感じ……か?


「いや違ーう!!こうじゃなーい!!」


「どうした急に叫びおって……ほれ、肉食べないのか?ワシ食べちゃうぞ?」


「それはダメ!て、違う違う!何なじんでるんだって話だよ!異世界に来てもう数週間経ってるだろ!?何でサバイバル生活を送んなきゃならないんだ!」


「いや、二ヶ月じゃよ?」


「何で忘れてたんだ俺ー!流石に気付けよ!」


 転生から二ヶ月間、それはもう大変だった。右も左もわからぬこの異世界。まずは生き延びることだけを考えていた…………


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「服どうしよう。汚れてきた。身体も洗ってないし気持ち悪い」


「あの辺探索してたら川あったぞ?そこで洗えるじゃろ」


森の奥を指差すゼウス。


「一緒に入ろうぜゼウス〜。一人じゃ怖い」


「全く、子供じゃないんじゃし。モンスターも出んというのに………あ」



 だからって殴ることないでしょ。あーいて〜。水に染みるレベルとかやりすぎだろあの神。少しは加減ってものを覚えて欲しいもんだ。

 つめたっ。


         ○○○


「そろそろ服も破けてきたし、新調したほうが良いな……ゼウス。作れるか?」


「作れんこともないが、材料が無い。葉っぱしかない」


「じゃあもうそれでいいや。よくテレビで大きな葉っぱを使ってる人いるし」


 そう言って俺は服の材料探しを行った。この森には様々な種類の植物があり、ちょうどいい葉っぱを探すのは骨が折れた。


「これでいいか?ちゃんとゼウスの分も取ってきた」


 ご飯担当のゼウスは、洞窟でウサギ肉を焼いていた。横に置いてあるコオロギっぽい虫が気になるが、敢えて触れないでおく。


「おー、ありがとうな。ふむふむ……いいんじゃないかの。特に人間の肌に触れても害を与えるような植物ではなさそうじゃし。じゃあ早速作るからウサギ焼いてろ。焼いてる間にワシはお主の寸法測って作っておくわい」


「りょーかい。いや〜、ゼウスのお陰で意外とやってけるもんだなぁー。異世界…異世界……あれ?異世界ってこんなんだったっけ……?」


「おおおおおお主の寸法測るからジッとしてろぉよ?動くなよ動くなよ〜、何も考えるな感じるな……」


「それは無理だろ!」


 ゼウスが間抜けなこと言ってたからさっきまで何考えてたか忘れちまった。結構重要なことだったような気がするけどまぁ、いいか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「良くないんだよぉー!!」


「大声を出すな!騒々しい!」


 ゼウスは耳を塞いで怒鳴り返す。


「ゼウスは良いのか!?ずっとこんな生活で良いのか!?良い暮らししたいだろ!?サバイバルなんてしたくないだろ!?」


「まぁ、ワシはともかくお主が病気にならないか心配じゃな……今は若さゆえの元気で無理やり何とかしとる感じじゃし。いつか倒れる」


 森でのサバイバルとは、危険がつきもの。その場所自体は危険ではないが、そこで暮らすというのならば話は別だ。毒を持った虫、動物がいるかもしれない。未知なるウイルスが潜んでいるかもしれない。ここが異世界なら尚更だ。元いた世界の免疫なんて役に立たない。つまり俺は今、この世界の病原菌の免疫を一切持たない。赤ちゃんのような状態なのである。


「そのためにも早く街へ行って金稼いで裕福な暮らしをしようぜ?」


「それはもっともな意見なんじゃが……なにぶんこの格好だと確実に怪しまれるんじゃよ……結局場所もわからんし……」


 今の俺たち二人の格好は、葉っぱで作った服である。こんな格好で街歩いてたら取り調べされるわ。不審者確定だもの。


「俺は変態として騒がれ、ゼウスはその手の男どもに弄ばれて人生終了する可能性があるってことか……それは大変だな」


「その手の男どもってなんじゃ…?怖いんじゃけど………ヒビキ、そういう時はお主がワシを守るんじゃよ?ワシもうか弱い乙女なんじゃから」


 街へ行くにはまずキチンとした服を着ることが絶対条件だ。問題はその服をどこで調達するかなんだけど……服を買うのに街へ行かなきゃならないから意味がない。


「か弱い乙女ってとこにちょっと反応欲しかったんじゃけど………」


 ここは一つ、泥棒でもするか?盗むのは気が引けるけど、自分たち用の服を買ったら返せば良い話だし。あ、でも金がない。うーんこりゃ本格的に泥棒しなきゃいけないかもなぁ……


「無視すんなよっっっ」


「え?何々?なんか言ったか?」


「え?結構マジな反応してるんじゃけど。集中してた感じ?そうなのか……ごめん……」


 ゼウスが急に謝ってきたんだけど。怖。


「最初はその辺の旅人の服を拝借すれば良いじゃろ。ワシサイズの服は無さそうじゃが…まぁそこはヒビキさえ動ければあとはどーにだってなるわい。日雇いバイトでもして、金稼いで、宿でも取れば良いのじゃ。その間ワシがずっと葉っぱ服なのが気に入らんが」


「じゃあ脱いどけば?」


「それ、ワシ泣くよ?」


 ゼウスにツッコミされた瞬間、タイミングを見計らっていたかのように馬の歩く音が聞こえた。ゆっくり歩いている。おそらく馬車だ。


「ゼウス!」


「ああ!いくぞヒビキ!ワシらのハッピー異世界ライフはここからじゃ!!」

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