第三話 男三人女一人。 ※全員神だと思ってはいけません
最初っからよくわからん展開になる素人小説
「うぐぁっ」
つい耳を押さえる。それほど大きな音だった。
爆音の衝撃で宙に浮いていた本や椅子、それどころか本棚までもが落ちてきた。そのせいで埃が部屋中に舞ってしまった。
「うわぁああああ!!!なになに!?っうぉっほっ!ゲホッゲホッ!ほごりやゔぁっ!」
埃のせいで上手く喋れない。だがそれとは対照的に、随分と透き通った声でゼウスさんは俺に向けて叫んだ。
「響!早く立て!!奴等が来ぬうち」
俺とゼウスさんは、爆音と埃のせいで、背後から迫る脅威に気付かなかった。
俺は素早く立って、ゼウスさんの顔を見ようとした。が、そこにゼウスさんの顔はなかった。
「え……」
埃がだいぶ落ち着き、首から上が無くなっているゼウスさんに目が釘付けになる。
右を向いた。本が散らばっているだけだ。
左を向いた。血だらけの本が散らばっていた。
小さいゼウスさんの頭部が転がっていた。
「ひゃはははははッはァ!!やったぜやったぜ大手柄だァ!!!ここでゼウスを始末できるなんてヨォ!やってみるもんだなァ〜!」
「落ち着け。ゼウスを侮るな。アレはお前が殺せるような代物じゃない」
「あぁ!?じゃぁテメェは殺せたのかァ!?首飛ばせたのかァ!?何にもできねェくせに口出しするなザコがよォ!」
目の前に二人の男。
1人は派手な服装。紫タイツに、カウボーイがよく付けているヒラヒラした簾のようなものが付いていた。色は青赤緑黄というか最早虹色だった。しかもツノが生えている。これも虹色に装飾された派手なツノだった。髪は真っ青。気持ち悪い青色だ。手を見てみると、鎌のような形をしていた。爪は長く、ゼウスさんの首を一瞬で吹き飛ばしたのも納得がいく。全体的に見て、殺人ピエロが頭に浮かんだ。
もう1人の方は、どこかの貴族に仕えている執事のような格好だった。あのピエロとは違い、作法というものを知っている。片眼鏡を付けた渋い顔立ちのジェントルマンなのだ。
ゼウスさんの身体が俺にもたれかかってきた。俺の胸のあたりに血がじんわりと染みていくのがわかる。怖い。恐ろしい。逃げたい。叫びたい。泣きたい。これらの感情が同時に込み上がってくる。変な感じだ。狂ってしまいそうだ。
「あーららァ〜?こいつは誰だァ?」
「見ればわかるだろう。転生予定のガキだ。転生用の陣が書かれているだろう?こんなものッ」
足下で黄色く光っていた魔法陣のようなモノが消えた。細かい粒子になって消えたのだった。
「転生ってこたァこいつがあっち側の希望の星ってわけだナ?はッ!こんなやつに希望託すなんて無謀の極みなのにヨォ?」
「だが脅威ではないからと言って見逃していいわけでもない。少ないとは思うが、出来る限りの情報をいただいたのち、殺すとしよう」
「拷問かァ?あれめんどくさいから嫌ダ」
「私も同感だ」
そう言って執事の格好をした男は、俺の額に手のひらを付けた。
俺は動けなかった。この男に何かされている訳ではない。でも、怖くてすくんでしまう。死にたくない。殺されたくない。だけど、もうすぐ死んでしまうという気持ちは、俺を発狂させないで、黙らせていた。
「むぅ……大した情報はわからなかったな…残党の手がかりでもと思ったが…そうもいかないか」
「じゃア殺すのか?」
「ああ、もう用は無い………………だから、この人間の記憶に、貴様が死んだと記録させたのか、ゼウス」
男が手を離したので、俺はすぐさま左を向いた。そこには吹き飛んだゼウスさんの頭部が。右を向くと、全身、傷一つないゼウスさんがそこにいた。
「なぜ死んだと思わせた」
「騙し討ちでもしようかなと思ってな」
「私が貴様ほど強いのを忘れちゃいないな?ゼウス」
「忘れる訳ないとも」
とゼウスさんが言った瞬間、俺の懐に入り込んで背負い、魔法陣を出した。
「逃げるが勝ちじゃよ?ハデスくん?」
「落ちたな」
ゼウスさんにハデスと呼ばれた執事の男は、手を前に突き出し、何か唱えた。(ように見えた)
「あ、ヤバイ」
「ちょっ!?ゼウスさん!?」
魔法陣が激しく光出し、爆発する。
かろうじて、ゼウスさんは俺を背負ったまま避けていたので怪我は無かった。
「『スキルブレイク』止めにしないかい!?それはちょっとずるいなぁハデスくぅんん!?」
「戦場から逃げ出すような奴にずるいと言われたくはないな」
「てゆーカ、俺を忘れんナヨォ!!」
ジェントルマンな男が喋り終えたのと同時にピエロが爪で攻撃してくる。最早鉤爪だけど。それもなんなく躱すゼウスさん。
「ヤバイのう……正直勝てる気がせんわい……」
「どうするんですか……?俺、死ぬんですか?」
「阿呆が、死ぬ訳なかろう。お主もう死んどるし。ワシが今から生き返らせるっつーとるんじゃから、お主がこれから歩む道は“生き返る”。ただそれだけじゃよ」
こんな小さい子供に背負ってもらって凄く恥ずかしいのに、妙に安心するな…。
俺は、何故かここで意識が途絶えた。自分で気絶したのか、それとも誰かが俺に何かしたのかどうかはわからない。
そして、目覚めた時にはもう、このことは覚えていなかった。
面白い?じゃあ続ける☆