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調子に乗ろうぜ女神さん  作者: あひゅう
プロローグ
2/9

第二話 二人、笑って雑談 ※特に笑ってません

「そうか、俺は本当に死んだのか………だから転生だなんだって、言ってたのか……」


「だーかーらそう言っとるじゃろ!苦節2時間じゃったわ……信じるって大変なんじゃな〜」


当たり前だ。こうして目の前にいる女の子(神だが)と直接話しているのに、自分は死んでいるとか言われても、信じることなんてできない。


「お主のために転生時には、記憶をそのままにして異世界へと送る予定じゃ。いいじゃろ〜普通記憶保持なんてさせないんじゃよ〜?」


記憶保持?ふざけるな。そんなの辛いだけだ。確かに俺は他のみんなと違うところがあったら嬉しい。自分の個性は好きだ。でも、だからってここでみんなと違う選択肢になるのは納得がいかない。


「そ、そうなのか?でも、ワシにも事情があるのじゃ。じゃから頼む、記憶を保持した状態で転生してくれんか」


「事情ってなんすか」


「それは言えん」


「なぜ」


「お主には、まだ、早いと思ってな……じゃから、然るべき時が来たら教えるつもりじゃ」


神だから、異世界にいる俺に何かを伝えることなんて朝飯前なんだろう。でも今はそんなことより、


「すいません、少し泣いていいですか?」


もう、あの生活には一生戻れない。家族、友達、塾の先生、駅前のスイーツ屋の可愛い店員さんにも会えない。ただ辛い。この感情を、俺は死んでも持ち続けるなんて。死んだら楽になれるなんて嘘だ。なれないじゃないか。俺だけなのかもしれない。俺以外の人は楽になれるのかもしれない。でも事実、俺は楽じゃない、苦しい。


「…………お主から見て左手にホラ、扉がポツンとあるじゃろ?そこで泣いてこい。もちろん防音機能付き。覗こうとしても特殊結界に阻まれて覗けん。落ち着いたらまたここへ来い」


俺はその言葉に従い、その部屋へ入った。そして泣いた。



〜30分後〜



扉の開く音がした。


「お、出てきたな。無駄に凛々しい顔つきになっとるが、あまりカッコよくないぞ」


余計なことを……!可愛くない神様だ。


「可愛いわい!お主こそ余計なことを言うな!」


「言ってません」


「よーし、もう一発殴っとこうかのー!」


「すみません」


と、俺が真顔で言うと、ゼウスさんは「唐突にやられると困るんじゃけど……」とぶつぶつ文句を言いながら本題に移った。


「改めて自己紹介でもしようかの!ワシはゼウス!お主の世界ではギリシャの最高神様じゃ!今からお主を転生させる!」


ん?"お主の世界では"?てことは他の世界では違うのか?


「い、意外に鋭いの……お主本当に心読めるんじゃないのか……?まぁ良いわ。お主の世界では最高神じゃが、他の世界では目立たぬマイナーな神様でもあるんじゃよ。そもそも知らない世界もあるしな」


それぞれの世界専用の神様ってことなのかな。


「そんなキャバクラ嬢みたいな例えにしないで欲しいんじゃけど……」


勝手にゼウスさんがそう解釈しただけだけど。


「うー……とりあえず、お主は転生直後、世界が世界ゆえ、速攻で死ぬ可能性が大じゃ!そこで、お主にはワシの能力を貸し与えることにした。いいか?あくまで貸し与えるじゃぞ?与えるんじゃないんじゃぞ?」


そう言って近くの机に置いてあった紙切れを俺に渡した。

ルーズリーフくらいの大きさの紙切れだ。表裏どちらも文字でびっしり埋まってる。真っ黒けっけだった。


そこにはたくさんの、所謂スキル名が書かれていた。


「好きなものを選んで良いぞ」


そう言われたので、俺は少し流し読みした後、気になったスキルについて聞いてみた。


「この『物質創造』ってそのままですか?それともガチで原子とかから作れるんすか?」


「お主学校のお勉強はしっかりしとるのか?物質創造する時にはそりゃあ原子から構築していくに決まっとるじゃろうが。頭悪いのー。原子レベルの大きさのモノを作るのは無理じゃが」


ゼウスさんの煽りは無視して、次に気になったスキルを聞いてみる。


「『漁夫の利』って……これ日本の慣用句ですよね。本当にスキルなんですか?これ」


「ああ、スキルじゃとも。お主は日本人だから漁夫の利、と明記しただけじゃ。そのスキルは横から手柄をかっさらうことに特化したスキルじゃ。恨まれやすいがの」


なんかこのゼウスさんの持ってるスキルって変なのばっかりだな。この『万里の長城』って最早建築物じゃん。スキルかどうか怪しいもんだよ。

でも便利で強くて万能な良いスキルももちろん持ってるから、できればそこから選びたいよね………じゃあやっぱり最初選んだ『物質創造』かな。絶対強いよこれ。


「じゃあこの『物質創造』っていうスキルで」


と、俺が言うと、ゼウスさんは何とも言えない微妙な笑顔でこんなことを提案してきた。


「ほ、本当にそれにするのか?ほら!ほ、ほら!この『剣』なんてどうじゃ!?熟練度によるが、一瞬で剣の達人になれるぞ!?」


剣の達人?それもいいな……男たるもの、剣士ってのは憧れるもんだ。剣士無双ってのもアリだな。

ん?でも待てよ、熟練度ってなんだ?


「その熟練度とは?」


「熟練度というのは、全部で10段階あってな、最初にこのスキルを習得する場合は1なんじゃが、今回は特別に神補正がかかっておるんじゃ!うむ、速攻で強くなれるぞ!」


速攻で強く、良いね……。あ、そうそう、剣士にとって忘れちゃいけないもの………。


「ちなみに刀も扱えるんですか?型とかはどうなんですか?」


「型かー、確か型はのう、『剣』スキルを持たぬものより修得時間が短く、より洗練された型にすることができるのじゃ。ま、いいことづくめじゃ」


良いじゃん『剣』!いつかは二天一流宮本武蔵ッッ!!とか言いたい!武蔵に憧れ!剣の道を極める者也!!ってめっちゃかっくぃー!!


「わかりました!俺『剣』にします!!」


「よーし、決まりじゃな!そこの〜本が散らばってるとこに立っておれ!転生の儀式をするぞ!」


と、ゼウスさんが言った瞬間、恐ろしいほどの爆音が響いた。


これが俺の人生がひっくり返った瞬間だったことを、この時はまだ知る余地も無かった……なんてことは無いだろうけど。とにかく、大きな大きな異変の始まりだったことは間違いない。

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