第一話 無駄に器用な男、舞い降りる。※舞い降りません
初異世界モノ。緊張するね。
「お主は死んだんじゃよ?これもう3回目なんじゃけど」
「今こうしてあんたと話してるのに死んだって受け入れる人間がどこにいんだよ」
俺、川上響はよくわからん図書館にいた。よくプロのイラストレーターが描いてるようなファンタジック図書館だ。本は浮いてるし、ヨーロッパにありそうな豪華な装飾の椅子も浮いてる。そもそも本棚でさえも浮いてる。曲線を描いた本棚、本入れにくいだろ。
「いやマジなの。死んだの。映像見せたろう?お主家の二階から転落して死んでたじゃろう?」
で、俺に「死んだ」とか失礼なこと言う目の前の女のガキ。のじゃロリ属性とかあざといんだよ。全然ときめかない。
「今は映像とか普通にアレして何か凄くあーゆう感じにできるから騙しやすいんだよ。ちなみに俺は騙されんぞ」
「何言っとるかわからぬわ!!何!?なんか凄くあーゆう感じって!?なめとんの?ワシをなめとんのか!?!?てかそもそも映像は本物じゃから!テープレコーダーも使ってないから!ワシが神パワーで映像撮ったやつじゃから!信じろいい加減!話進まないんじゃよ!!」
ぶっかぶかの布纏ってるだけだから迫力が無い。そんな説得力の無い奴に「自分は神」だとか「お主死んだよ」とか言われても信じることなんてできない。仮にもし信じてもそれは、もう元の生活に戻れないことを認めるようなもんだ。
「じゃあ信じる」
ま、だからといって話進まないのもめんどくさい。早く話終わらせて家でゲームしたい。てか夢やん?これ。
「お、おう……さっきまで随分反論しておったのに急に信じられるとこっちもちょっと困るんじゃけど…。ま、まぁ、これでスムーズに契約に移れるというもの。万事オーケー、解決万々歳ピーポーナイツじゃ」
頭おかしいのかな?
「よし、信じてもらえたところで!改めて自己紹介といこう!!ワシはゼウス!お主の世界ではギリシャの最高神じゃ!」
へー、ゼウスってあの……すげー子じゃないか、この子。あれ?これって敬語のほうがいいのかな?その方がスムーズに話終わるかな?あまり怒らせても長引くだけだし………
「お主の世界ってなんすか?」
「お主それ敬語じゃないぞ?失礼なやつよのう。というかそこ気になるの?普通ゼウスとか最高神だとか、他の神様は?とかじゃないのか?」
「誰がそれを定義したんですか。俺は違います」
「おっそうか……そうかの……ワシの人間に対する評価は少し間違ってたのか。そうかそうか、勉強が足りんなぁハハハ」
中途半端な苦笑い。痛々しかった。見てられなかった、早く話切り出せよ頼むって。
「そうじゃの……まぁ端的に言えば世界はお主の住んでる……いや、住んでいた、か。その住んでいた世界の他にも沢山世界があるのじゃよ。異世界ってやつじゃ。異世界から見たらお主の世界こそ異世界じゃが」
「俺はその異世界に転生するんですか?」
「………!よくわかったの、なんじゃ?心でも読めるのか?」
いや、最近のライトノベルは異世界転生系モノばかりだからなんだけど………って、こんなこと言ってもどうせわかんないか。
「らいとのべる……?小説なのか?じゃあ小説で良かろうに…。何故分けるのか理解できぬ」
え?俺今口に出して言ったか?言ってなかったよな?心読めるのか?とか聞いてきたけど、コイツこそ読めるだろ!何?マジモンの神様なの……?
「いやだからさっきから言っとるじゃろ。ワシ神様なんじゃて」
「でも初見でそんな姿の神様誰も信じませんよ?そうとう頭イってる奴くらいですよ信じるのなんて」
「お主敬語の努力が水の泡になっとるのわかる?」
僕わかんなーい。
「喧嘩売っとんな?買うわ、買うわい!神を怒らせたこと後悔すんなよ人間」
うわっ、何!?手からヤベエやつ出てる!黒いモヤモヤしたやつ出てるぅ!!あれで殴るの!?無理無理無理!!構えとってるよぉ!ちょっまっ、やめてぇ!
「ごめんさない!あ、ごめんなさいごめんなさい!失礼なこと言って申し訳ございませんでした!私は貴方様に大変ご無礼を払ったこと、深くお詫び致します!罰として貴方様の願いを何でも一つお聞きいたしますのでどうか何とぞ……」
「ん?いや別に何でもとかいいし、そういうの求めとらんから。あー、でもするとしたら、静かにワシのいうことを聞いて大人しく従って欲しいの」
沈黙が流れる。俺が何も言わないので、ゼウスは不思議に思ったのか、俺に話しかけてきた。
「え?あのー、どしたのじゃ?」
「いえ、聞くだけですから。聞くだけ聞きました。帰って良いですか?」
「お主やっぱ殴る」
神様系のじゃロリの一発は重かったです。
緊張しちゃったね。おるぅえ。