Eden of Wisdom
人工惑星Eden of Wisdom――通称、EOW。
それは、天を鋼に覆われた、この世の叡智の楽園とも呼ぶべき情報と鋼鉄の惑星。
亜空間航行技術の完全確立により、人類の領域が『銀河』にまで広がった現在。タキオン通信技術によりネットワークまでもが銀河規模となったことで、電子情報の流量は指数関数的に増大。現在は濁流となった天の川の如く、0と1が宇宙空間を光の速さを超えて流れている。
そのように革命的な拡大を遂げたネットワークの全てを管理しているのが、銀河最大の情報技術企業、Doodleである。
当初、Doodleはネットワークを広げた惑星毎にデータセンターを設けていたが、それではあまりにも維持、管理、安全保障が困難なことは明白である。経営陣の予測は的中し、やがて小さな惑星一つ分にまで肥大したサーバ群は維持と信用の限界を迎えた。
しかし、銀河級の大企業の名は伊達ではない。彼らは破滅寸前で、実に大胆な……いや、気の狂ったような計画でもってこの困難を打ち破った。
惑星ほどにまで肥大してしまったのなら――惑星にしてしまえばいい。
彼らは宇宙空間にデータサーバ群と通信施設を基幹とした、人間の居住可能な人工の惑星を建造し、その惑星を本社とした。EOWの完成である。
結果として、この世に存在する電子情報の殆どは、この惑星の中核に管理・保存されることとなった。
内部には膨大な傘下企業の支社を配置し、一社会を完結させた企業都市国家を形成している。
特に技術者、研究者には優遇措置が施され、現在、この観測宇宙で最も技術的発展を遂げているのもこの惑星と言われている。
有名な言葉を借りるのなら、人類がネットワークと共に生きる現在においてこの惑星は――人類の、人類による、人類のための星である。と、言えるのだろう。
そんな惑星にも、必然的に『善/悪』は存在する。人間が人間である限り、心を、魂を持っている限り、争いは絶えることがない。
理想郷には未だ、人類は到達していない。
故に。
その常識外れの組織――『民間防衛機構Aegis』は存在する。