プロローグ
人は誰しも誰かに憧れを抱くものだと思う。
まぁ、他の人は分からないが俺はいつも誰かに憧れを抱いていた。思えば、幼稚園の頃はいつも一緒に遊んでいたケンちゃんに憧れていた。
ケンちゃんはヒーローごっこではいつもヒーロー役で皆もそれに納得していた。俺は逆にいつも怪人役だった。不満がある訳でも無かった。何故ならヒーローの次に輝くのは怪人役だったからだ。皆はやりたがらないけど、俺は怪人役をやりたがった。
だってヒーロー役のケンちゃんと対等に戦えるのは怪人役の俺だけだったから。
小学校の時はトモ君に憧れていた。ん?ケンちゃんはって?ケンちゃんはお父さんの転勤で一緒の小学校には行けなかったんだ。
幼稚園の頃とは違って俺の憧れは対等の存在から同じに成りたがった。だから俺はトモ君の服を真似た。でもそれじゃあ満足出来なかったからトモ君の入っていた少年サッカーチームに入った。
トモ君はサッカーがとても上手かったからだ。サッカーは初めてだったけど、とにかくトモ君の動きを真似た。トモ君が出来る事は直ぐに出来る様になるまで練習した。そんな事を続けていたらその内、二人目のトモ君なんて言われる様になった。
俺はその時凄く嬉しかった。やっとトモ君に追いついた、やっとトモ君に近づけたって。チームは天才が二人居るチーム何て言われる位になった。そしてトモ君とは親友になっていた。いつも一緒にサッカーをして、休みの日には一緒にゲームで遊んだりしてたからだ。でも中学に上がる時にトモ君とは離れ離れになった。田舎で一人暮らしをしているお爺ちゃんの体調が悪くなり、家族で一緒に田舎で住む事になったからって言ってた。
中学校ではタカトを真似た。タカトは女子に人気があり、その上男子にも人気があったからだ。
タカトを真似ているとその内、よくタカトっぽいってクラスの女子や男子から言われる様になった。俺はそれで十分だと思った。だってどうやってもタカトには成れないと思っていたからだ。
何故ならタカトは勉強もスポーツも出来たけどトモ君と同じくらいサッカーが出来る訳では無かったからだ。勉強をしてタカトと同じ位のテスト順位になってたし、スポーツテストでも同じ位だった。でもサッカーは俺の方が上手かった。真似ている人より優れている部分がある時点でその人には成れない気がした。
高校では横峰 和也を真似た。格好、話し方、成績。でも横峰 和也には成れなかった。確かにそこそこ近くはなったと思うでも決定的に横峰 和也と違う所があった。
いや、家族とかも決定的に違う所だけどそれとは違う意味で違っていた。横峰 和也は正に物語の主人公だった。品行方正、文武両道、眉目秀麗、俺が今まで会った人の中で一番完璧な存在だった。
完璧な存在は周りから浮くと言うがそれも無かった。女子、男子の両方に人気があった。そんな時、何かで聞いた事があるような言葉を思い出した。
フェイクではオリジナルに勝てないと。そんな事を思い出した時、俺は死んだ。通り魔だった。突然、鋭い痛みが来たと思ったら俺の体からドクドクと赤い液体が流れていた。
あぁ、死ぬなら横峰 和也みたいになって死にたかったな・・・
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