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クソゲーでも幸はある  作者: 庚京次
9/16

これは笑いではない真剣だ──面接編

 桜形高校風紀委員会の入会試験が幕を開けた。


「名前と学年、組、番号は?」


 知っているだろうというのに、わざわざ聞いてくる堅苦しい面接だなと尾張はすぐ悟った。


「尾張近、2年4組の5番です」


 ただこれだけだというのに、手元の紙になにか書き込んでいるような動作が見て取れる。


「次の質問に移る──先に言っておこう、これから6つの質問をする。そこで君が3つ不適切な回答をすれば文句なく落とす」


 いやいや、なにテストみたいな言い方しちゃってるの? 


 一風変わった面接にすこし見が震える尾張。次の質問に備えて呼吸を整え集中させる。


では質問だが──」

 尾張は唾をごくりの飲み込む。


「君はカレーパンをこの学校で食べたいか?」


「は?」と思わずでそうになるが、ギリギリこらえる尾張。


 いきなりカレーパンを食べたいだなんて馬鹿げた質問をしてくる面接官など聞いたことがない。


 だが、冷静に考えれば上記の通り、ありえない。

 しかし、それを面接官もわかっているとするならばこの質問は本気だろう。

 

 委員長の真剣な目を見てもそれはしっかりと伝わってくる。

 食べたいか──つまりYesかNoかの2択。

 尾張が出した答えは──


「いいえ、食べたくありません」

 委員長が眉をしかめて目が曇らせた。


「一応理由を聞いておこうか」

「なんとなくです。それに購買で売っていないので、わざわざ学校外で用意するのが面倒です」

 

 委員長はまた手元の紙にチェックをいれた。


「一問ごとに適切だったを言い渡そう、それは──適切だ」

 

 なんでだよと今すぐ理由を聞きたかったが、いちいち聞いていたらキリが無いのでそこは後でまとめて聞くようにす思いとどまる。


「よし次の質問だ」

「どーんこい」

 

 さっきの質問で緊張がほぐれた尾張はちょっと調子に乗り始める。


「君は、普段何をしている──」

「なにもしません」

 と即答する尾張。


「よし適切だ」

 いや絶対、就職試験だと今この時点で退室命令だろ……。

 

 すこしふざけたとは言え、本当に面接する気があるのか再び疑問を抱く。


「3問目だ。君はこの中で誰が好みだ?」


(なぜそれを聞くんだ……しかもさっき言ったことをまた言わなきゃいけないのかよ)

 

 尾張はダルいという気持ちもあるが、またその人の名前を呼ぶというのが正直恥ずかしい。

 

 だが言うしかない、それも堂々と。


左右田そうだ爽華さやか

 

 左右田がちょっと照れくさそうに尾張から視線をそらした。


「4問目だ、その理由は?」

(ほんとにやめてくれ……)

 

 流石に意識して理由を言うのは抵抗があるので、また適当に済まそうとする。


「なんとなく──」

「4問目が不適切なので、3問目も不適切とする」

「おいそれはいくら何でも理不尽だろ! 4問目だけで──」

「口を慎め尾張」

 

 委員長の目は一切笑っていない。

 こんなギャグマンガみたいな面接を真剣にやっている。

 確かに、俺がふざけた。故に不適切ということに間違いはない。

 それにしても1問間違えたら、自動的に2問落とすというシステムはただのクソゲーにしか思えないが……。


「5問目にいくぞ」

 ここで間違えたら尾張は即終了。

 流石にふざけることはできない尾張は集中して質問に望む。


「──私の下着を見たいか?」

 

 ……へ? またもや集中した自分が馬鹿じゃねぇのと言いたくなるような質問だ。

 しかしここは堪える。

 これは笑いではない真剣なのだ。 

 

 まずはこの質問の意味を理解するべき──

 まずこれもYesかNoの二択。

 どっちかを選べば良いだけ。

 

 しかし二択というのはどちらかが落とされるということ、故に運任せにしてはけない。


(わざわざ、自分を指名してくるあたり、なにか意図があるような気がするな)

 

 尾張は委員長という人はどういう人なのかを今一度改め、考える。

 その考えた末──


「見たくない、ましてや自分から見せてくるなど俺の趣味じゃない」

 

 ここで初めて委員長が笑い声をふっと漏らした。


「よし、適切だ」

 

 残るはあと一問、ここでミスってしまえば全て水の泡。最後はきっととんでもない質問に違いない、あるいは── 

「最後の質問だ」

 

 委員長が一瞬、左右田そうだに目を向けた。それを見逃さなかった尾張、もはや次の質問がなにか読めた。


爽華さやかのし──」

「見たい」

 

 思わず左右田は「ふぇっ!?」と赤面して立ち上がる。


「なぜだ?」

「好きな女の子の下着を見たくない男子などいる訳がない。もっとも、さっき言った通り、俺は自分から見せる奴は論外。それくらいなら俺が脱がす……え? ちょ、今の──」

 

 集中のあまり飛び出してしまった言葉、後から思い返せば強姦魔ごうかんまの台詞を言っていたことに気付き慌てて訂正しそうとするが──


「合格だ! 君は今日から風紀委員会の仲間入りだ」

 

 委員長が真剣な表情から一転していつもの清々しい顔でそう言った。


「え? マジ?」

 とぼけている尾張に、後ろで見ていた万田先生が肩を組んできた。


「上出来だオワリ。お前ならやれると思っていたぞ」

「は、はぁ……」

 未だどうなっているのか理解できない尾張は素直に喜べない。


 ふと左右田そうだに目を向けると、こっちをチラッと見ていて、目があった瞬間。子猫のようにサッと委員長の後ろに逃げた。


「いや爽華さやか! あれは誤解だって!」

 

 俺はまた、やってしまった……

 





後編は明日に投稿しますのでお待ちくださいね。


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