まりるちゃん
俺の名前は葛城 正弥、ピチピチの18歳。
学力普通、運動神経普通、ルックス普通(個人差あり)の、どこにでも居る一般的な学生だったんだ。
あの時までは――
夏休みで一日中、家の中にこもってゲームをしていたんだが。
その日は新作ゲームの発売日で、外に出ていた。
いつになく暑く……って家の中にこもっていたんだから、分かるはずがないよな。
だが冗談抜きでヤバかったね。42℃あったんじゃないかな? 信じてない顔してるな、本当だからな!
あー違う。
暑いとか、そういう事を言いたい訳じゃなくて――、どこまで話したっけ?
そうそう、暑い日に外出してたんだ。
いつもならネットでゲームを買っていたんだけど、限定版『まじかる☆まりるちゃん~ドキッ! 女の子だらけの夏休み~』は店頭のみの販売なんだよね。
限定版には、まりるちゃん抱き枕、まりるちゃん1/8フィギュアが付いてくるのですよ!
あーごめんなさい、また脱線した。ごめんって、引かないでよ。泣いちゃうよ?
ごほん! 話を戻そう。『まりるちゃん』を手に入れて暑さも気にせず、ルンルン気分で帰り道をスキップしていたんだ。
早く家に帰って『まりるちゃん』をプレイしたい、と思ってた矢先に、目の前が暗転して……
「あなたは死にました」
いきなり現れた美女に、そんな事言われてさ。
俺は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をして、呆然としたね。
突然、「君は死にました」なんて言われれば、誰でもこうなるって。
しばらく放心状態が続いてさ、気が付いたんだよ。
俺、『まりるちゃん』プレイしてないじゃん!
そこからは早かったね。
俺の死因が隕石の直撃によるもので、神達が喧嘩した事により落下位置からズレた、だとか。
隕石って……どんな死因だよ!
美女は女神で、俺を生き返らせたいだとか。
女神良い子、惚れちゃいそう。
他の神が良しとしないだとか。
俺のまりるちゃん……
地球に似た世界になら転生させられるだとか。
マジ? まりるちゃんに会える可能性がある?
女神のミスで転生した世界は、剣と魔法の世界だとか。
めえええがあああみいいいい!!
その世界は、魔王が支配してるだとか。
ドラ○エかよ。
その世界の勇者達は魔王に敗北してるだとか。
魔王強すぎじゃね。
勇者達はこの世界に生まれ変わりたくないだとか。
勇 者 の 心 は 折 れ た 。
この際、あなたが勇者になりましょう、だとか。
転生のやり直しを要求したい。
勇者になるにあたり、勇者の技能を全て受け継ぎ、女神がサポートに付くだとか。
あっ、これは拒否権無いやつか。
かなり省くけど、俺は転生して、勇者になって、魔王を倒した。
そう、魔王を倒したんだ。そこまでは良かったんだけどね。
女神が「あたしに任せて下さい! 王都に帰る魔法陣を使います!」とか言ってな?
魔法陣を発動させたんだけど、何をどう間違えたのか……
俺は未来のエンゲルに来てしまった。