王
私の名はアルト。この国の王でカイルの父親だ。
私にとってカイルは愛した亡き妻との一人息子で溺愛していた。亡き妻に似ていた息子は顔だけは良かった。だからか息子は何時も誰かの中心にいた。
幼い頃は純情だった息子は何時しか人の波に飲まれ、変わってしまった。市政を学ばず、貴族の言いなりになっていた。何度か矯正しようとしたが、息子に甘い私には無理だった。
そんな息子に何時しか私は呆れてしまい、放置するようになった。煩く小言を言われなくなり、息子は更に酷くなった。
息子がある日を境に昔の様に戻って行った。ある少女に出会った事によって息子は市政に興味を持ち、誰にでも誇れる存在になった。
私はその少女を内密に調べた。少女の名はアリサ。なんと暗殺者だった。少女は息子にとって心の拠り所になっていた為、私は殺さず生かし追跡する様に指示を出した。
ある日の事だ。息子の臣下であるハウルから内密の話があった。内容はアリサから暗殺者であり、近々息子の命が狙われると聞いたとの事だった。そして、アリサは全てが終わったら自分と息子の記憶を消して欲しいと訴えて来た。
私は暫く考えた後、其れを許可し内密に護衛を付けた。
そして運命の日、私は運ばれて来た息子と少女の記憶の消去を内密に手配していた国一番の魔導師メビウスに頼み行った。
少女は魔力の才能があった為、メビウスが引き取り育てる事になった。
世間では、王子を庇ってある少女が亡くなったと噂された。王子自身はその少女の事を覚えておらず、誰も生きているとは思わなかった。
この秘密を知るのは王である私と王子の臣下であるハウル、魔導師メビウスのみ。皆が墓場まで持っていく秘密だ。
私はこの選択に悔いはない。この事により王子も落ち着き、国の毒素を取り除く事が出来たのだから。悔いる事は絶対にしてはダメなのだ。




