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オリジナル・バトルロワイアル  作者: 八緒藤凛
一日目
10/54

10 爆塵奏者と貫通少年

1


 この世にも残酷な殺戮遊戯の会場にたった一つ存在する山。森や墓場を見下ろす様にそびえているその山は、標高300m程の小さなものだった。


 その山頂で二人の男が向かい合う。


「死ねっ!」

「やなこった」


 片方の、金髪の少年の右手には針の様な物が付いていた。制服を着ているところを見ると、高校生なのかもしれない。よくよく見ればその針は、少年の手と同化している。右手が変形していると言ったほうが、正しい表現かもしれない。

 その手を突き出し、相手の命を刈り取ろうとしていた。


「危なっかしいもん抱えてんなあ、オイ! それじゃあ日常生活も不便だろ?」

「元からこうだった訳ねェだろうが! 馬鹿が!」


 もう片方の中折れ帽を被った男は、一見すると丸腰。だが、その顔に焦りはなく、それどころか余裕の笑みを浮かべている。


「オラ、そろそろ貯まるぜ?」

「ちいッ……」


 突如、針の少年は大きく飛び退いて距離を取った。額の汗を左手で拭って、足を小刻みにステップさせる。これは、次に取るべき回避行動への準備。


「うざってェ……」


 思わず口から溢れる暴言。針の少年は、この状況に苛立ちを隠せない。そのせいか、半笑いの男のほうが相対的に優位に見えた。


 右手の中指と親指を合わせ、顔の前で揺らす半笑いの男。何かの合図を、いつでも出来るぞと言わんばかりに。中折れ帽の下から覗く笑みが、少年の苛立ちを加速させていく。


「さっさとしろや、クソが!」

「さーあ、どうしようかなー?」


 ニタニタとした笑いを崩さずに、相手を挑発にかかる。少年はそれに耐え切れなかったらしい、声を荒げた。


2


「ああ! 苛立ってしょうがねえ。お前との勝負はお預けだ」

「お?」

「けど誰にも殺されんなよ。お前は絶対俺が殺す、寝首を掻いてでもその顔をぐちゃぐちゃにしてやる」

「ハッ、やってみな」


 少年は置いてあった青色のリュックサックを左手で乱暴に掴み、そのまま向きを変えずに後退、茂みに身体が隠れると同時に斜面を走り去っていった。


「あー……」


 残された男は手の構えを解くと、その場にしゃがみ込んで、帽子を抑える。


「怖かった……」


 先程までの余裕はどこへやら。滝の様に流れだす汗。ポケットに入れておいたハンカチを取り出す。この薄いハンカチは男の支給品の一つだった。必死に隠していた手の震えを見て、自嘲気味に笑う。


「能力試したかっただけなのにな……、まさか人がいるとは思わねえわ。最近の若い子、怖すぎんだろ、マジで」


 そのまま両手を後ろに付いて、大きく一つため息を吐いた。



No.2 漁火奏汰(いさりび・かなた) 23歳

【能力名】イクスプロジア

【能力】 右手を鳴らす事で、任意の場所に任意の威力の爆発を起こすことが出来る能力。クールタイム300秒。

【タイプ】アクティブ

【系列】 爆発系



3


「ああ、クソが! イライラするぜ全くよォ……!」


 斜面を駆け下りて、少年一つ息を吐く。右手の形状は既に普通の手に戻していた。解除と変形の回数や時間に制限が無いのは、実は当たり部類の能力であるが、これは本人が知る由もない。


 金色に染め、パーマを当てた髪を軽く整えて、周囲を見渡す。人影がないのを確認して、近くの木へともたれかかった。木々の間から遠目に小屋が見えるが、今はそこまで行く体力はない。日常的な喫煙が、明らかに彼の体力最大値を下げていた。


「殺す、殺すっ!」


 初めは、殺し合いとやらに乗るつもりはなかった。同じ状況に立たされた40人よりも、体育館での女の方が何倍も気に食わなかったから。あんな舐めた態度で自分達を思うがままにしようなどと、無理を通すにも限度がある。


 だが山頂に「飛ばし」を受けた直後に、すぐ近くで起きた爆発。そして恐らくその行使者であろう男がこちらを見ていたので、戦闘態勢へと切り替えた。殴るつもりで右手に力を入れると変形したので、後はそれで刺し貫くだけだったのだが。それが出来なかったから、現在非常に苛立っている。


「ちょこまか動きやがって、あのクソ野郎……!」


 敵の力量を見計らって、退避するだけの冷静さ。それはあった。

 だがそれ以外の殆どを占めるのは憤怒。今後も襲われたら相手を殺すだけ。そう決めて、彼はしばらくそこで休息を取ることにした。


 胸中は、怒りと苛立ちで不安定なまま。



No.22 仁科神(にしな・しん)17歳

【能力名】ペネトレーター

【能力】 右手の形状を任意に変化させる事が出来る能力。ただし「相手を貫通する事を目的とした武器にしかなり得ない」

【タイプ】アクティブ

【系列】 身体変化系


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