彼の好きな人、親友の好きな人
出会いは中学生。私は彼のことを『何でこの人みんなのこと仕切ってるんだろう?』と思いながら彼のことを見ていた。でも、だんだん気になっていた。
「おはよう。吉井」
「うん。おはよう」
「昨日の番組見たか?」
「うん。見た」
「あれウケたよな」
「うんww」
たわいもない話。少しずつ仲良くなった。朝の会が始まる時間ギリギリまで話すのがもう習慣になっていた。
「佐田。」
「なに?吉井?」
「お前さ・・・山本さんと仲良かったよな?」
「う・・・うん」
その時すごく嫌な予感がした。私は昔から変なところで勘が鋭くなる。自分の好きな人とかの・・・
そして、その間は当たった。
山本は私の自慢の親友の山本香澄のことだ。可愛くて、勉強ができて、器量がよくて・・・数えだしたらきりがないくらい。吉井が好きになるのも仕方ないくらいの才色兼備・・・。それに対して私は・・・
私の中に黒いモヤモヤが出てきた。でも、吉井の目は真剣。私の勝手な理由で断っていいのかな?
「いいよ」
「まじで!?」
「うん。あ!もしかして・・・・香澄のこと好きなの?吉井」
平静を装って私は聞いた。これで「うん」と言ったら私の恋は約2週間で終わる。
「う・・・ん」
あ、私の恋オワタ
「何で分かったんだ?」
「もう、そう聞いてくることで分かるでしょww」
私は無理矢理笑うとどうしようと心の中で叫んでいた。
~放課後~
うーん。どうやって香澄に言おうかなー?
って!香澄が居るじゃん。うっわわわっわわわわ。もう自分が自分の死刑宣告しなきゃいけないの?
「香澄ー」
「あっ!美子ちゃん」
「香澄、あのさ」
「あのね!」
私と香澄が話すタイミングは同時だった。
「「あはははは」」
2人揃って笑った。
「香澄、どうしたの?」
「あのね・・・耳貸して?」
ぼそぼそ
「ええええええええええ!!!!」
「声!大きいよ。美子ちゃん」
「ごめん。でも、それほんとに?」
「ほんとだよー」
「そっか」
「うん」
なんと、香澄には好きな人が居た。吉井のことはどうしよう?
「香澄。その人なんて言うの?それにその人の告白とかしないの?」
「無理無理!絶対告白は無理!ええとねえ名前は香月苑っていうの」
「そっか」
「うん」
「まあ、ゆっくりでいいんじゃない?」
「うん!」
私は自分にも吉井にも死刑宣告をしないといけないのか・・・・気が重いな
朝。鳥のさえずりが聞こえる。携帯が鳴った。
「はい。もしもし」
「あ、美子ちゃん?」
「うん」
「あのね!」
「うん」
香澄の声は震えていた。
「どうしたの?」
「私・・・告白しようと思う。」
「え・・・誰に?」
「誰にって!もしもして美子ちゃん寝起き?」
「うん」
「じゃあ、今日学校に一緒行こう?」
「うん」
「じやあ、インターホン押すね?」
「はいはい」
「じゃあね」
プッツ
電話が切れた。私はやっと頭が冴えた。ああ、香澄は今日その香月苑って人に告白するんだ。って、やばくない?吉井のこと言ってないし・・・。
ああああああああ
やっばい。どうしよう。
まあ、なるようになるか。ひとまず着替えて学校に行く準備をしよう。