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昨日宰相今日JK明日悪役令嬢 恋愛陰謀増々版  作者: 北部九州在住
英雄に成る瞬間

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79 秘密の華園のお茶会

 アリオス王子の華姫であるフリエ女男爵から王宮でのお茶会の招待状が届いたのは、王都に来てから数日後の事だった。

 その招待状を手で弄びながら、ため息をついていると暇をかこっていたアマラが声をかけてくる。


「行きたくないお茶会ならば断ればいいのに」


「いや、気乗りはしないのは事実なんだけどね。

 このお茶会、多分華姫の集まりなのよ」


 華姫にあこがれるアマラがとたんに食いつく。

 アマラは己の立ち居地がどれほど幸せなものか分かっていないが、それを口にするのも躊躇われるわけで。


「そうよね!

 王都社交界の飾りとして、この都にはたくさんの華姫がいるのよね

 あこがれるわぁ……」


 うん。

 否定はしないし、実際に最盛期の王都の華姫を知らない私がとやかく言う事もできない。

 気乗りしないのはそれ以外の理由もあった訳で。


「私のお師匠様がどうも、花姫みたいでね。

 そのあたりの情報も仕入れられるから行かないといけないんだけどね」


「え!?

 絵梨、お師匠様の情報入手したの!

 どうして私に言わないのよ!!!」


 お師匠様がらみと聞いてぽちをかわいがりしていた姉弟子様まで出てくる。

 そういえば、言ってなかったな。この話。


「ヘインワーズ侯の娘であるエレナお姉さまがどうもお師匠様の娘みたいなんですよ。

 まだ未確定ですが、お師匠様が花姫としてヘインワーズ侯に囲われていたみたいで」


「じゃあ、何で絵梨は浮かない顔をしているのよ?」


 探していたお師匠様の情報の手がかりである。

 嬉しい事は嬉しいのだが、それ以上に気になる事があった。


「水樹姉様。

 お師匠様、『どこまで見えていた』と思います?」


 アマラは首を傾げるが、姉弟子様は私の懸念を的確に見抜いて顔を青ざめさせる。

 優れた占い師は未来を紡ぎ、現実を未来に近づける。

 それは未来予知というよりも未来確定という魔法に近い。


「私が飛ばされた時、薬学や自己制御等魔術師の基礎が完成していて、逃げ込んだパトリには魔術の勉強ができる魔術書が置かれていた。

 そしてこいつ」


 私は姉弟子様から逃れてきたぽちを抱きかかえる。

 ぽちとの出会いも考えてみれば不思議でいっぱいだ。

 何で懐いたのか?

 そもそもどうしてあそこに居たのか?

 未来が見えていた人が居たのかもしれない。


「『未来は決まっていない。だからこそ占いは現在を望む未来に近づける作業だ』。

 お師匠様の言葉よね。

 貴方の事を思っていたのならば、悪いようにはしてないのでしょう」


 姉弟子様の慰めに少しだけ心が軽くなるが、実は懸念はそこではない。

 実は、実の娘であるエレナが受ける苦難を見越して別の生贄を探したなんて邪推もあったりするが、それを含めてもお師匠様には感謝しているのだ。

 あの時、一人ぼっちだった私に声をかけてくれたお師匠様に、私は運命を与えられたのだから。

 私のこの思いまで見越している事もありそうだが、お師匠様ならばそこまで見えているかも知れないと今はもう笑うしかない。

 無理やり笑顔を作って、私はその懸念を口にした。


「私もそこは疑っていませんよ。

 未確定の未来の為に、師匠は精一杯手を差し出してくれたのでしょう。

 その善意は疑っていませんし、感謝もしています。

 ですが、ここまでするほど私を強化しないといけない事って何だと思います?」


「……」

「……」


 私の懸念に姉弟子様とアマラが黙り込む。

 ゲームの場合、レベルを上げることでクリアする事ができる。

 裏返せば、クリアする為にはレベルを上げなければならない。

 つまり、ぽちという聖竜を守護獣に持ち、占い師でもなく、華姫でもなく、宰相兼魔術師という極まった果てにいきついた私が相手にしないといけないものとは?

 そういう事なのだ。

 最強の矛であり盾であるぽち、魔術を極めた私、そしてある意味孤独な隠者でないと大成しない魔術師では防げない組織や政治的攻撃を防ぐ銀時計をはじめとした勲章の数々。

 これらが無いとクリアできない敵の存在を暗に言っているようなものである。

 で、それに私は嫌でも心当たりがある。


「ヘインワーズ侯は『宮廷魔術師を嘱望されながら花姫に落ちざるを得なかった』と言っていました。

 そして、その落ちざるを得なかった理由ってのが、現王の絡む王位継承のごたごた」


 その言葉を聞いてアマラの顔色が変わる。

 近衛騎士団や秘密警察こと法院衛視隊が今の話を聞いたら、不敬罪がらみでお話を聞きに来るレベルである。


「つまり、そういう所からのお誘いな訳です。

 私が気乗りしないのも分かるでしょう?」


 この状況で何かを仕掛けてくる。

 それが王室なのか、諸侯なのか、またサイモンやカルロス王子なのかわからないが、それだけは確信があった。

 ついでとばかりに聞いている二人に絡む話をしておこう。


「せっかくなので、ちょっとぶっちゃけますね。

 ここに居る三人が実質的な世界樹の花嫁候補な訳ですが、誰がなります?」


 私の言い方に疑問を持った姉弟子様が首をかしげて、ぽんと手を叩いた。

 私の言っている世界樹の花嫁が本来の世界樹の巫女の方を指していると気づいたからだ。

 つまり、ビッチでないとなれない聖娼……まてよ。


「どうしたの?絵梨。

 そんなに必死に設定資料集を見つめて?」


「何か、エリーの目が血走ってて怖い……」


 二人にドン引きされながら、私は設定資料集の探していたページを見つける。

 世界樹の花嫁の儀式の部分だ。

 世界樹に認められる場合、前提としてビッチになっていないといけない。

 儀式そのものは神殿ぽい一枚絵で、文章が流れるだけ。


『まず裸になって世界樹の雫によって身を清め、世界樹の巫女となる。

 巫女はその後奥にある世界樹の蕾と呼ばれる部屋に行き、七日七晩世界樹に加護を求め、世界樹の種を『産む』』


 産む。

 そうだ。

 世界樹の巫女は、加護のアイテムである世界樹の種を『産む』のだ。

 つまり、巫女が雌しべで、雄しべは?


「最低だ。ここの開発陣。

 たった一言にここまでの悪意を込めていやがったとは……」


 最初誤植だと思っていたが、これが正しいならばここはファンタジーである。

 あきれ果てて天井を眺めて嘆いた私の頭からぽちが落ちるが気にしない。

 私の嘆きがわからない姉弟子様とアマラの為に、私はその悪意を教えることにした。


「豊穣の加護のアイテムである『世界樹の種』。

 これを巫女は『産む』。

 何処で?」


 私は自虐的な笑みを浮かべて、自分の下腹部--つまり子宮--を指さす。

 ファンタジー出身のアマラの方がその意味に気づいて顔をしかめる。


「え?

 苗床にされるの?

 面倒だなぁ」


 軽い口調でアマラが口にするが、それはこの世界の娼婦のある意味登竜門でもある証。

 ここはファンタジーでそんなものも需要があったりする訳で。

 また、この手のモンスターとの行為は見世物の一つとしてこっちの世界では定番で、男を喜ばせる芸の無い女達が蔑まれながらも金を安定的に稼げる職でもあったりする。

 更に、穀倉地帯だった南部は不作続きで人身売買で南方魔族との交易に依存しきっている。

 で、輸出された人間--若い娘達--は、輸入される食料の代償に魔族を孕む家畜として一生を終える。


「いいじゃない。

 やってない訳じゃないでしょうに。

 どうせモンスターとするのは華姫修行でも徹底的に…………」


 何かが繋がる。

 華姫……花姫……世界樹の花嫁……苗床……調教……世界樹の種……

  

「最低だ」


 つながった結論に思わず罵倒がこぼれる。

 たしかにこれならば筋は通るだろうが、それを乙女ゲーの背景にぶちこむか?

 そうか。

 元々はシミュレーションゲームだったな。これ。

 ならばsenkaは隠し味か。

 私は二人に向けて、つながった真実らしきものを告げる。

 最初から花というモチーフで繋がっていて、それを暗示していたというのに気付かなかったというか気づけという方が酷いと思う。

 とりあえず、向こうに戻ったら開発陣を探しだして、シナリオライターはぶん殴る。


「世界樹の花嫁は、その豊穣の加護である世界樹の種を産むために世界樹か世界樹の守護獣か知りませんがそんな化け物に犯されなければならない。

 触手苗床か異種姦か知りませんが、七日七晩犯されてなお豊穣の加護を認めるためには、その身と精神が壊れないように巫女自身がそれに慣れていないといけない。

 その巫女の調教プログラムが多分花姫です」


 そこで一旦区切る。

 己の運命と世界の現状を呪いながら、己の身につきつけられた華姫と花姫の呪いに必死に耐えながら、私はその続きを口にした。


「それが失伝し、子が産めぬ体にされた出来損ないである華姫がこの王都で咲き誇っている」


 しばらくの沈黙の後、空気を変えようと姉弟子様が話を変えに来る。

 さすがにこの空気のままは私も嫌だったので、私はそれに乗ることにした。


「そういえば、お師匠様はこっちの名前って何?

 私達の所では瀬羅って名乗っていたけど」


 神奈瀬羅。

 それがお師匠様の名前だった。

 こっちではセラだったのかと思ったが、漢字を使ったことで濁音が消えてしまったらしい。


「ある意味同じ名前でしたよ。

 セラじゃなくて、ゼラが正しかったんでしょうね。

 華姫は源氏名に花の名前が与えられます」


 なお、廃れてしまったが私にもアニスって源氏名があったり。

 薬師もできるから、薬草系の源氏名がつけられたのは内緒。


「ゼラニウム。

 ゼラニウム・シボラ。

 それがお師匠様の名前です」




 王都オークラムの中心にある王宮『花宮殿』。

 四季の花が咲き乱れる庭園がその由来たどいうが、私はそれにすら悪意を感じずには居られない。

 花宮殿の庭園にテーブルと椅子が並べられ、華姫という美しいだけの造花が私達に笑顔を見せる。


「ようこそいらっしゃいました。エリー様。

 ささ。

 お連れの方共々お掛けになって」


「お招きありがとうございます。

 これはささやかなものですが、今回の茶席の為に用意したもの。

 皆様の舌になじむものだと良いのですが」


 さて、笑顔を作って挨拶をする私は華姫なのだろうか?

 それとも、姉弟子様やアマラと同じく花姫なのだろうか?

 今回のお茶会の参加メンバーは、私とその付き添いに志願してくれたアマラと姉弟子様。

 で、歓迎側がフリエ女男爵ことベルガモットをはじめとした十人ほど。

 後ろでメイド達が同じような笑顔を浮かべているが、多分あれも華姫調教済と見た。


「規則により毒見をしないといけないのですが、よろしいですか?」


 襲撃による暗殺より恐れないといけないのは毒殺で、その為にメイドによる毒見が必然的についてくる。

 こっちもそれを知っていたので、持ってきた箱を開けて取り出したケーキを皆に見せながら、メイドに告げる。


「切り分けはそっちでして頂戴。

 毒見作法で私も一緒に食べてあげるわ」


 このあたりもルールがあって、相手に切り分けてもらい、その相手と同じ切り分けたものを食べる事で毒見とするのだ。

 まあ、こっちで作った手作りケーキだから毒なんぞ入れていないのだが。

 入れても毒無効化できるし。私は。

 さておき、切り取ったケーキを私が先に食べ、メイドが続いて口に入れる。

 まずまずの出来でほっとする。

 向こうからケーキの材料を持ってきて正解だった。

 見るとメイドの顔がおいしさと甘さに蕩けている。

 こっちの世界では食べられない役得だろう。


「問題なさそうですね。

 では、皆様で頂きましょう」 


 わいわいがやがやと他愛の無い話を肴に、ケーキとお茶が消費される。

 このお茶はなつかしいなと思ったら、案の定西方植民地産の高級茶葉だった。

 昔、私が愛飲していた一品だ。


「ずいぶん懐かしそうにそのお茶をお飲みになるのですね」


 華姫の一人が懐かしそうな顔をした私にあどけない声で質問をなげかける。

 女達の他愛ない話はあくまでカモフラージュ。

 その裏で、言葉や仕草を読み、手札を確認し、相手に叩きつけるための機会を待つ神経戦が繰り広げられている。

 しまった。

 お茶の懐かしさに、表情を顔に出してしまっていたか。反省。


「好みの味なので。

 お気に入りにしようかなと」


「それはよろしいですわね。

 新大陸で作られた新しい茶葉ですのよ。

 エリー様もごひいきにしていただいたら、きっと広がりますわ」


 危なかった。

 これで『昔愛飲していた』なんて言っていたら、突っ込まれる所だった。

 こんな感じで、神経戦は繰り広げられている。


「エリー様の先生をやっているとか」

「ええ。

 占術学を教えております。

 彼女を私の後継になんて思っていたのですが、ここまで来るとは思っていませんでしたわ」


 姉弟子様はこの手の空気は私以上になじんでいるから心配は無かろう。

 さて、アマラの方は、


「イベリス鐘の家門に連なる者で華園の花の一輪をさせて頂いております。

 いつか皆様みたいな華姫になれたらと」

「まぁ、野花でしたか!

 ここまで健やかにお育ちになって!!」


 問題はなさそうだ。

 娼婦というのまずは素材の良さが求められ、そこから先は技量などになるのだが、アマラは素材も良く仕込んだ華姫も手を抜かなかったみたいだ。

 きっと、近くない将来にこの花園の一輪として咲き誇ることになるのだろう。

 それが幸せかどうかまではあえて語らないし、私が花姫として留める事になりそうなのでその未来は来ない可能性も高いのだが。

 他愛無い話でお菓子とお茶が消費され、三杯目のお茶が差し出されたあたりから、互いに本格的な戦闘に入る。


「そういえば、エリー様はタリルカンドの華姫とか。

 王都にはタリルカンド産の華は多く咲いているのですのよ」


 まずは私の華姫設定を探りに来たか。

 世界樹の花嫁と華姫が繋がった今、この質問には重大な意味がある。

 とはいえ、私は華姫なのか花姫なのか自分の中で結論づけられていないのだが。


「ええ。

 『窓星の歌』を先達から教えて頂きました」


 私は立ち上がってその『窓星の歌』を歌う。

 この歌は華姫の身分証明の証。


「♪窓の外に星がひとつ。

 手を伸ばしても届きはしない。

 どうか私を見ないでください。

 私はまだ何も持っていない」


 売られた最初一月の調教を歌った一番。

 外への未練と人でない何かに変えられてゆく恐怖と己の体に刻まれた陵辱に対する羞恥が歌われる。

 まだこの歌を聞けるのならば、彼女たちは人である。

 私の歌声に、数人の華姫が立ち上がる。

 彼女たちもタリルカンド産の華姫という訳だ。


「♪窓の外に星二つ。

 眺めても手を伸ばさない。

 どうか私を照らしてください。

 白き泉に華は咲くでしょうから」


 売られた次の月の調教を歌った二番。

 もうこの頃だと快楽調教に徹底的に壊された者しか残っていない。

 白き泉はあれで、諦めと快楽と歪んだ誇りが垣間見える。

 そして、華姫達は静かに口を閉じる。

 この三番が歌えるかで華姫かどうかが決まる。


「♪窓の外に星三つ。

 白き泉に咲く華は星を見もしない。

 どうか私を買ってください。

 実をつけぬ華を貴方の飾りに」


 最後売られるまで、この歌を華姫は知らない。

 調教の段階によって華姫達の部屋が違うからだ。

 そして、口伝が出来る程度に華姫は大量生産され、華姫になれず家畜として売られた者は更に多くいる事を意味している。

 ただ裸で陵辱され続ける華姫達が唯一持つことができ、それゆえに口伝となったこの歌。

 もちろん騙りも出るが、それも華姫そのもののブランドを考えれば、化けの皮が剥がれた時にその制裁は執拗で執念深いものになる。

 まぁ、私がやられた戦乱期、それで騙りの華姫が大量に出たのだが。


「♪窓の外に星はなし。

 華は夜、貴方の上で咲き誇る」


 華姫達から一斉に拍手がおくられる。

 最後まで歌えた華姫は最高級の華姫と認められる。

 この最後の小節は奴隷市場の合言葉でもある。

 華姫は飾り物である為に、基本的には自らの意思はない。

 そんな華姫が自らの意思を出せる唯一の権利が自己売却の権利で、自らを売ることで買主に金銭的保証を払い関係を精算することができる。

 もちろん、金銭保証を払いきれずに自ら借金を背負って堕ちていった華姫は後を絶たない。


「疑ってごめんなさい。

 エリー様の事は調べておけと言われてね」


「アニスと名乗っていました。

 今はこの身なのでこの名乗りはしないのですけどね」


 一同を代表してベルガモットが私に詫びる。

 だとしたら、調査を命じたのはアリオス王子か。

 私が一時的とはいえ、ヘインワーズ家門を率いる事になるからそのあたりの裏とりに走ったという事なのだろうな。

 そして、それは師匠であるゼラニウムとの関連付けがされるという事で、否応なく王都の暗部に触れる。


「ベルガモットよ。

 改めてそう呼んで頂戴。

 アニス」


 互いを同種と認めたからこそ、華姫はその源氏名で呼び合うことを礼儀とする。

 ベルガモットの花言葉は『安らぎ』に『火のような恋』。

 アリオス王子の筆おろしにぴったりの当代一の華姫という事なのだろう。

 なお、私の華姫名であるアニスの花言葉は『活力』や『自愛』という他に『人を騙す』というのがある。

 実に私にぴったりだと知った時苦笑したのは内緒。

  

「いろいろ物騒ですからね。

 調べることについては気にしないでください。

 法院もいろいろあるので、どうか皆様は飾りとして買主の目と体を癒して頂けたらと」


「あら、アニスさんは王子に買われないのですか?」


 ベルガモットの予期していた言葉に、わざとらしく苦笑してそれを否定する。

 今の私は花姫のはずだ。華姫ではない。

 けど、ベルガモット達を羨ましい、懐かしいと思う自分がいるのを否定できない。


「どうでしょう?

 飾られるよりも、働く方が今の私には性に合っているみたいで。

 今回の法院定例会は大変なのですよ。

 世界樹の花嫁候補襲撃事件や神殿喜捨課税問題、我が父ヘインワーズ侯の引退と、大賢者モーフィアスが管理する遺跡への襲撃で責任を問われるとかで」


「まぁ、世間は大変ですのね」


 そう。

 彼女たちに意思はないしあってはならない。

 だからこそ華姫として権力者の寝室で咲き誇れる。

 そして、権力者の言葉を意識無しに垂れ流す。


「けど、大賢者様が責任を問われるなんてありえませんわ」 


 え?

 今、なんて言った??

 完全部外者で、こちらを監視していた姉弟子様に視線を走らせるが、姉弟子様の目は私の聞き間違いではない事を肯定していた。

 こちらの狼狽など知らぬ華姫達は、その続きを平然と口にした。

 ある意味当然で、ある意味見落としていた大賢者の過去を。


「だって、陛下の即位に尽力した一人がモーフィアス様で、その功績によって陛下より大賢者の地位を賜ったのですよ」


と。

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