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昨日宰相今日JK明日悪役令嬢 恋愛陰謀増々版  作者: 北部九州在住
恋愛は華やかに陰謀は密やかに
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68 深夜のお茶会という名の襲撃イベント その3

 ミティアをお茶会に誘ったのは良いが、もはや穏便に済ませることができないぐらい事態が進展している。

 何しろ魔術学園内で世界樹の花嫁候補が襲われたのだ。

 庶民寮に警備の兵が集まっている。

 なお、壁に吹き飛ばされたアサシンは事切れていた。


「きゅ?」


「ぽち。いいわよ。

 元に戻りなさい」


「きゅ」


 ぽちがトカゲの姿に戻る。

 いろいろ手札晒しすぎだと思うが、向こうが動いてきた以上出し惜しみはするつもりはない。

 というか、ぽちに露骨に敵意向けてるし。警備陣。


「何があった!

 ……失礼しました!」


 騎士と共に駆けてきたのはグラモール卿。

 この大騒ぎでまずアリオス王子のいる貴族寮を固めてからこっちにやってきたか。

 セリアから渡された魔力回復ポーションに、向こうの世界の栄養ドリンクを一気飲みして空き瓶を返す。


「見ての通り、世界樹の花嫁候補が襲われたわ。

 私とミティア両方。

 私達はそのまま貴族寮に避難するわよ」


 この後転移ゲートを開けて、王都から法院衛視隊を呼ばないといけないのだ。

 我を忘れて最大治癒魔法をかけたのは失敗だった。

 反省。

 戻るまでポーション漬け確定である。


「護衛します。

 前方に前衛を走らせろ!

 潜んでいるかもしれないから警戒を怠るな!

 メリアス騎士団に連絡を入れろ!」


「はっ!」 


 ミティアとキルディス卿を連れて、周囲を兵と騎士に囲まれての貴族寮へ帰還。

 戻ると、行きとは違ってスムーズに私の部屋に戻れた。

 アリオス王子が掌握したらしい。

 兵に担がれたアルフレッドを寝室に寝かせると、私は更にポーションを一気飲み。

 既に五本目。

 さっきの騒動で血がついたドレスを着替え、動きやすいジャージ姿に。

 悪役令嬢の威厳もあったものじゃないが、今は時間が惜しい。

 ミティアも返り血がついているから風呂に入れて着替えさせておこう。


「ゲートを開いて王都から法院衛視隊を連れてくるわ。

 サイモンは私と一緒についてきて。

 この部屋とメイドはセリアに預けるけど、キルディス卿の指示に従って頂戴」


「あ、あのっ!

 エリー様!

 わたしにできる事はありませんか?」


 言うと思ったよ。

 ミティア。

 そんなに決意した瞳をこっちに向けられても困る。

 貴方の政治センスの致命的な足りなさで動かれても、火に油を注ぐだけだなんて言える訳も無く。

 にっこりと笑顔を作って私はミティアにできる事を伝えた。


「ミティア。

 貴方にとっっっっっっっっっても大事な用事を言いつけるからちゃんと守ってね」


「はい!」


 いい返事が返ってきたが、その返事が疑問系に変わるのは、彼女が私の言葉を聞いてからだった。


「着替えてお風呂入って、おとなしく座って、ここでケーキを食べて頂戴」


「は、はい?」




 王都に転移ゲートを開けて、王室法院の法院衛視隊詰め所に急ぐが、皆の視線が痛い。 

 うん。

 時間が無かったからといってジャージはちょっと恥ずかしい。


「さっき、私とミティアの世界樹の花嫁候補二人がメリアスの魔術学園内で襲撃されました。

 犯行を行った盗賊ギルド及び、メリアス騎士団に内通者がいる可能性があります。

 法院衛視隊に属し王国の盾にして剣サイモン・カーシー騎士の名において、法院衛視隊の出動を要請します」


 悪巧みは最初に堂々と言うのがコツである。

 さらに政治的に言えない事もサイモンクラスだと察してくれるから助かる。

 案の定、私が言えない事を平然と口に出した。


「黒幕が諸侯の誰かだったら、近衛騎士団とて信用できませんか。

 今の要請で完全武装の手の者が十人。

 メリアスにも手の者が十人ほど居ますので、お使いください」


 ちょっとメリアスの件は聞いていないと言おうとして、思いあたるケースを一つ思いつく。

 口調きつめに私はそれを口にした。


「法院からの命があったら、メリアスでも私を捕縛するつもりだったわね……!」


「何のことでしょう?

 先ほどお嬢様がおっしゃった、『命令』の『拡大解釈』を『前もって』やっていたにすぎませんが?」


 大事な所を淡々とわざとらしく言葉を区切って言ってのけるサイモン。

 肩に乗ったぽちがふいに私の頬を舐める。


「ちょっと!ぽち!

 くすぐったいわよ……」


 それでも心がほぐれるのが分かる。

 さっきの一戦で血の気が多かった私も我に返る。

 いかん。

 色々ありすぎて平常心を失いかけていた。反省。


「そうね。

 あくまで貴方の主は一応法院だったわね。

 じゃあ、この騒動における働きは期待して良いのね?」


 私の語彙を抑えた口調にサイモンは淡々とその質問に答えた。

 ちょうど舐めるのを止めたぽちに聞こえるように、まるでタイミングを計ったかのように。


「もちろん。

 諸侯の監視及び利害争いの仲裁こそ、我々法院衛視隊本来の仕事ですから」




 転移ゲートを再度開いてメリアスに戻る。

 さすがに魔力は既にゼロに近く、ぽちの魔力を借りてのゲート転移である。


「それでは、状況を把握してまいります。

 しばしお待ちを」


 サイモンはそれだけ言って手勢を連れてさっさと出てゆく。

 頼もしいと思う反面、敵に回すと恐ろしい。

 秘密警察と陰口を叩かれているのは伊達ではないと思い知る。

 とりあえずは、状況把握まで時間を……見ると接客室にケーキがちょこんと。


「おかえりなさい。

 エリー様が来るまで待っていたんですよ。

 ケーキ。一緒に食べましょう!」


 ミティアよ。

 君はどこの忠犬ですか?

 さすがにお茶は冷めるから飲んでいるけど、ケーキにまったく手を出していないとは。


「その前に着替えさせて。

 さすがにこれだとちょっと……ね」


 十分後。

 ドレスに着替えてやっと椅子に座ったと思ったら、セリアがアリオス王子の来訪を告げてきた。

 嫌な予感しかしない。


「追い返すって選択肢出ないかしら?」

「後で色々言われると思いますが?」


 疲れた私の皮肉を真顔で返さないで頂戴。セリアよ。

 まだケーキも食べていないというのに。


「お通しして頂戴」


 グラモール卿を連れて部屋に入ってきたアリオス王子は、私達二人に対して当然のように頭を下げた。


「すまなかった。

 裏で何かしている連中に嫌がらせついでに手を出した結果、君たちを危険にさらしてしまった。

 申し訳ない」


 内々とはいえ、非があれば我々にすら頭を下げるか。

 さすがアリオス王子。

 で、謝罪だけでこっちにやってくる訳もなく、間違いなくこっちに厄介事を振るために来たのだろう。


「で、エリー嬢に頼みがある」


「お断りするって選択肢は?」


「あるけど、代わりにミティア嬢が苦労すると思うよ」


 こうやって、周囲を囲んでから詰み手を打ってくるからこの王子は嫌いだ。

 で、何の厄介事が来るのかと無言で促したら、ある意味当然でこっちが綺麗に忘れていた事だった。


「この一件でメリアス太守が更迭されるのは間違いがない。

 その後任を貴方にお願いしたい」


「ちょっと待って。

 私、殿下のお願いでエルスフィア太守代行をしていて、その報告書を昼間に出したばかりじゃないですか!」


 メリアスはオークラム統合王国有数の大都市でもある。

 その太守代行なんて、厄介事以外の何物でもない。

 だが、アリオス王子は淡々とその厄介事の理由を述べる。


「事態の沈静化に法院衛視隊を入れた以上、メリアス太守の監督不行き届きは問わないといけない。

 で、事態を把握していて私が一番信頼できる銀時計持ちが今ここに居る」


 太守の死亡などで代行を置く場合、ある程度の融通がきくが同時に好き勝手を防ぐために法院が介入する。

 私の太守代行に法院衛視隊が出張るのもそれだ。

 とはいえ、ある種根回しが済んでいただろうエルスフィアに比べて、このメリアス太守代行は火中の栗を拾うに等しい。


「エルスフィア太守代行は?」


「フリエ君に再度任せる。

 で、その下にミティア嬢を入れさせる」


「私ですか!?」


 そうきたか。

 ミティアにも政治経験を積ませる腹で、エルスフィアは私が最低限の立て直しをしている。

 問題は少なく、補佐がつくならばミティアも経験が積めるだろう。

 だが、それは悪手だ。


「問題が二つ。

 メリアスは統合王国有数の大都市。

 降伏したヘインワーズの娘が代行とはいえ太守につくのは目立ち過ぎます。

 更に、エルスフィアは太守就任前の離任になって民が動揺します」


 とはいえ、アリオス王子の理由も理解できる。

 だから、妥協案を提示しよう。


「で、殿下自らメリアス太守代行におつきになられたらと。

 諸侯も殿下が代行ならば文句を言うとは思えません。

 太守代行で私達花嫁候補に陳情していただければ、諸侯もそれ以上は文句は言ってこないでしょう」


「つまり、私を隠れ蓑に裏で働くと?」


 アリオス王子と私の視線がカチ当たる。

 おろおろしながら見ているミティアを他所に、


(後始末お願い)

(あんたも泥かぶれや。こら)


 という言下の闘争に勝ったのは私の一言だった。


「メリアス騎士団にはかなり近衛から人を送り込まないといけませんよ。

 盗賊ギルドの内部抗争が絡んでいるので」


「その理由は?

 貴方は随分確信がある物言いだが?」


 アリオス王子が私の確信を尋ねる。

 まさかシナリオ知っていますからなんて言えないので、私は理由をでっちあげる。


「私達を襲ったのは訓練を積んだアサシンでした。

 警備の厳しいメリアスの魔術学園に彼らを忍び込ませる。

 それをこの街の盗賊ギルドに知られずに動かせるとは思えません。

 ならば、この街の盗賊ギルドが絡んでいると見るのが当然でしょう」


 情報を逆算して理由をでっちあげる。

 即興でするのは結構難しいが、正解なだけに王子も口を挟めない。


「私の護衛騎士で法院警護隊のサイモン・カーシー騎士が状況把握のために動いています。

 彼ならば、ギルド側の黒幕が誰か突き止めると思いますよ」


 しばらくしてサイモンが部屋に戻ってくる。

 アリオス王子がこちらに居る事はセリアから聞かされれていたらしく、サイモンは私が伏せていた黒幕の名前をあっさりと告げた。


「こちらの調査の結果、盗賊ギルドは黒と言わざるを得ません。

 アサシンの死体を調べた所、腕利きで四人居たことから正規のアサシン編成。

 となると、正規命令を受けたと見るべきでしょう。

 現状では、現盗賊ギルドマスター、ベルディナッドの関与を考えざるを得ません」


 私とアリオス王子の顔色は良くない。

 サイモンは表情を消していて、ミティアはおろおろしているばかり。

 わかってはいたが、ここで盗賊ギルドを捜査すると、色々厄介事が芋づる式に出てくるのが一番いやだったりする。

 とはいえ、早急に事態を収拾させないと何処に飛び火するかわからない。


「殿下。

 提案があります」


 今は黄昏れている時間すら惜しい。

 朝、人々の口にこの話がのぼる前に何だかの手を打たねばいけないからだ。


「赦免状を殿下の名前で書いていただきたい。二通」


「アマラとシドかい?」


 こっちの狙いが分かっているだけに、アリオス王子も反応が早い。

 なお、ゲームだとこの嘆願は主人公の口から出ているのだが、おろおろするミティアはそこまで気が回っていないらしい。


「ええ。

 まずは二人の確保が大事です」


 そのままアリオス王子に近寄って耳元で囁く。

 グラモール卿が私を制しようとしたがアリオス王子がそれを抑えさせた。


「アマラは、私が用意した『世界樹の花嫁』ですわ」


「!!」


 アリオス王子がその意味とやばさを理解しているからこそ驚愕の顔を隠せない。

 まずは二人を助ける理由がいるが、アマラの世界樹の花嫁候補という私の隠し札は今のアリオス王子には容赦なく効くだろう。

 さて、サイモンは私の言葉を聞けただろうか?

 出てきてもらったお礼だ。王子のコネと出世の引き換えに厄介事を振られやがれ。

 水樹姉様が本命だが、そこは伏せさせてもらおう。

 離れて、今度は皆にも分かる理由を堂々と口にする。


「シドは信頼ができる盗賊です。

 何よりもアマラを抑えているならば、おかしな動きはしないでしょう。

 世界樹下の迷宮を攻略するのならば、彼の手助けは絶対に必要になります」


「分かった。

 グラモール。赦免状を用意してくれ。

 君が証人だ」


「かしこまりました。

 殿下」


 グラモール卿が赦免状を用意して、アリオス王子が署名する。

 これで、二人は今回の騒動で罪に問われなくなった。

 その赦免状を受け取って、私はセリアにそれを手渡す。


「セリア。

 メイドを走らせて、シドとアマラをここに連れてきて頂戴。

 ギルド内部にいると二人の身が危ないわ。

 こっちで保護します」


 その言葉にサイモンとグラモール卿が反応する。

 やっぱり近衛騎士団と法院衛視隊の仲は良くないらしい。


「だったら、こちらからも一人つけましょう」

「私の方からも手の者を出しましょう」


「ありがとうございます。

 それぞれ一人ずつお願いします」


 即座に話を終わらせる。

 こんな所で揉めてもらっても時間の無駄だからだ。

 で、再度王子に向き直る。


「次に、殿下によるメリアス掌握です。

 太守更迭は確定ですが、早急にする事で盗賊ギルドと繋がっている人間の排除が可能になります。

 今日中に、交替してしまいましょう」


 冷静に考えるとクーデター示唆になりかねないんだなぁ。これ。

 グラモール卿はそのあたり気づいて険しい顔しているし。


「世界樹の花嫁候補襲撃事件の責任を取る事が更迭理由ですが、今日中ならば辞任を認めましょう。

 こちらの正当性の担保のため、私とサイモンの連名で法院への告発状を書きます。

 告発の受理は朝で、法院の開くのを待たないといけません。

 それを持って、殿下が太守館にて太守とお話すれば、辞任について文句は言わないでしょう。

 使い終わった告発状はちゃんと太守の見ている前で火をつけてくださいね」


 更迭だと色々後ろ指を刺され退職金も減額されるが、辞任だとそれが幾分緩和される。

 少なくとも、自ら責任をとったという建前ができるのが大きい。


「わかった。

 用意してくれ」


「かしこまりました。殿下」


 手慣れた権力簒奪手段にある意味呆れているアリオス王子が口を開き、ギリギリセーフラインでの裏技に苦笑するサイモンが告発状を用意する。

 私の署名とサイモンの署名が入った告発状をアリオス王子に手渡す。


「これでメリアス騎士団に介入できる権限ができました。

 サイモンは太守代行についた殿下の命令という事で、メリアス騎士団で盗賊ギルドと繋がっている人間の摘発を。

 グラモール卿は、殿下の太守代行についた後で近衛騎士団とメリアス騎士団を統括して盗賊ギルドへの捜査を」


「で、私達が居ないくなったここの警備は君が担当するという事でいいのかな?」


 告発状でテーブルを軽く叩きながら、アリオス王子が皮肉る。

 それに私は肩をすくめながら白々しく答えてみせた。


「もちろんです。

 ぽちを元の姿で立たせておきますから、まずちょっかいを出す馬鹿はいないでしょう。

 キルディス卿も居るので私達の警備も大丈夫。

 ついでに、シドとアマラを切り離してこっちに連れてくるのはこの為でもあります。

 向こうの手を知っている人間が警護につく。

 襲撃は更に難しくなるでしょうね」


 混乱する状況に対して、何を優先するかというのはものすごく大事である。

 特に法律や建前が必要になる国側の人間はそれがあるのと無いのでは動きがまったく違ってくる。

 この悪巧みは、表の権限が集まっているメリアス太守にアリオス王子がつかないとはじまらないのだ。


「背景の諸侯についてはひとまず忘れましょう。

 探っても出てこないならいいですが、藪をつついた結果が今回の騒動です。

 最悪追求されるようならば、ヘインワーズ候の引退にかこつけてごまかしてしまっても構いません」


 グラモール卿の顔が更に厳しくなる。

 事件の棚上げ的解決だから彼の立場からすれば厳しく見てしまうのも仕方がない。

 だが、既にミティアが襲われており、そのうやむやにヘインワーズ候引退を使ったアリオス王子は私の提案にくすりと笑ったのだった。


「君も泥をかぶるのが好きだね」


「あいにくかぶりたくてかぶる泥ではありませんが。

 この一件をうやむやにしても法院は荒れるでしょうからね。

 余計な火種はさっさと消すに限ります」


 なるほど。

 このあたりでグラモール卿とアリオス王子の情報の齟齬があるのか。

 覚えておこう。

 何かに使えるかもしれない。


「最後に一つだけ。

 狙われたのはどっちだと思う?」


 太守館に向かおうとしたアリオス王子は、最後の最後で一番真剣な顔で私にそれを訪ねてくる。

 そうだろう。

 この質問如何によっては、間違いなくシナリオだけでなくゲームが変る分水嶺になりかねないからだ。

 私は襲撃時の光景を思い出して、その結論を出さざるを得ない。


「ミティアでしょう。

 私を狙ったのは囮の可能性が高い」


 その言葉でアリオス王子は察してくれたらしい。

 私とアリオス王子が接触したのが引き金で、ミティアが狙われた。

 降伏寸前のヘインワーズが一発逆転を狙った。

 そう事件はでっちあげられる。


「グラモール。

 赦免状をもう一枚用意してくれ。

 また証人を頼むよ」


 アリオス王子はグラモールが用意した赦免状にサインをして、それを私に押し付けた。

 つまり、でっちあげの完全否定に他ならない。


「タリルカンドで言った言葉は覚えているかい?

 劇場での告白の返事。

 期待しているよ」


 そう言って、アリオス王子はグラモール卿を連れて部屋から出て行った。

 本当はもう一つ可能性があったのだ。

 ミティアを消す事で、エリオスの存在が表に出てくる。

 そうなるとやったのは東部諸侯の可能性が……。

 やめよう。

 今のあの人はタリルカンド一門の人間で、ちっぱい妹とイチャコラしているのがお似合いの人間だ。

 万人の希望と怨嗟を背負って国を立て直すなんてあの人には似合わない。

 軽くため息をついて、そういえばこの集まりはお茶会で置きっぱなしをケーキをやっと食べようと思ったら、なんか顔真っ赤のミティアが目の前にいるのですが。

 そういえば居たの忘れていたなんて言える訳もなく。


「あ、あ、アリオス王子に告白されたんですかっ!!!

 私、応援しますから!!」


 ああ。勘違い。

 その勘違いを訂正するのに、更に時間が消費され、目の前のケーキを食べる時間は更に遅れるのだった。

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